稲敷資料館日々抄

稲敷市立歴史民俗資料館の活動を広く周知し、文化財保護や資料館活動への理解を深めてもらうことを目的にしています。

文化財の防犯研修に行ってきました!

2012年10月12日 | 日記
10月11日(木)。

この日は、東京は赤坂プリンス・ホテルのお隣、都道府県会館に行ってきました。
国会議事堂も、ここから400m位先にあります。


都道府県会館の外観はこんな感じです。立派ですねぇ。



外観には、特に看板らしい看板は無いのですが…、
一応、プレートがあり、それと分かります。

これでは建物を探すのが大変!と思いきや…
実は地下鉄の東京メトロ・永田町駅の9b出口と言う所へ出ますと、
都道府県会館の地下1階と直結していますので安心です。



101大会議室と言うところが、この日の会場です。
受付には文化庁の係の方々が、出席のチェックをされていました。



この日の研修会のタイトルです。
「国宝・重要文化財(美術工芸品)防犯対策研修会」
と言うのがそれです。



会場には、都道府県の担当者を主に、市町村の担当者、
公私立博物館・美術館の担当者が一同に会しています。



この日の研修会は、「文化庁文化財部美術学芸課」の主催でした。
美術学芸課長の冒頭のごあいさつです。

大変残念な事柄ではありますが、みなさんもご存じのように、
近年、国の重要文化財となっている仏像などの盗難事件が相次いでいます。

国の文化財だけでなく、都道府県や市町村指定の文化財、
或いは未指定文化財などを含めると盗難や破壊の被害を受けている
文化財は多く、しかも一度被害にあった文化財は決して元通りには
戻らない、ということも悲しい事実です。

そこで研修では…
①文化財の防犯意識の向上
②文化財の盗難等被害の現状とそれらに対する対策案
③国、都道府県、市町村、所有者、地域の連携と取り組み方法

といった3点を主に、5県の担当者の方による事例発表がありました。



滋賀県の担当者の発表です。

「古都」といいますと、誰でも奈良や京都を思い浮かべるかと思いますが、
実は滋賀県にも古代には「都」がありました。

大化の改新をおこなった中大兄皇子、後の天智天王の築いた
「近江大津宮」がそれですね。

そしてもう一つ、滋賀県には天台宗の総本山、比叡山延暦寺があります。

このようなことから、滋賀県は古い歴史と文化財を持ち、文化財防犯の
最前線にあるということでした。



福岡県の担当者の発表です。



鳥取県の担当者の発表です。

このほか、長崎県の担当者の発表やセキュリティ会社の発表、
文化庁担当者の発表など研修は3時間40分余りにおよびました。

特に各県担当者の発表は、実際の盗難事件の経過と対応策、
事件の背景の整理や被害を受けた文化財の周辺状況の分析、
その後の対策等々、身の引き締まるような内容が多く含まれていました。

その中でも複数の担当者が発言しており特に気になったのは、
所有者である寺院や檀信徒、地域の「力(チカラ)」、組織する人数や活動力といった
総合的な力(チカラ)が減退している、ということでした。

実は、この点に関しまして、私たちの稲敷市においても同様の
ケースで資料館へご相談に見えられる地区の方々が増えて来ています。

ご相談の内容は、公民館などとして利用していた古い寺院等の建物を
取り壊したいということで、それまで中に安置されていた仏像などの
未指定文化財に関する「処遇」をどうしたらよいか、ということです。

大変残念なことではあるのですが、類似するケースのご相談は、
地域や個人の方々など稲敷市内で増加傾向にあります。

地域の歴史と文化財を守るのが使命の歴史民俗資料館ではございますが、
それらの文化財を収蔵する物理的スペースやご相談へのケアなど、
物理的、人員的、予算的な制約があるのも現実でございます。

100年、200年、時には1,000年近くも稲敷市域の人々によって守り続けて
こられた文化財が、ここ近年、今日、明日といったところで
存亡の危機に立たされているのが現実なのです…。

今回の文化庁の研修は、主に国宝・重要文化財といったものを中心に
話されていましたが、都道府県の事例発表の中でも、都道府県指定、市町村指定
であっても防犯対策の基本は変わらず、地域ぐるみでの取り組みが望ましい
ということが語られていました。

また、所有者や地域に対して最も効果的に働きかけることが出来るのは、
地元「市町村」である!という各県担当者の意見もほぼ一致していました。

文化財の存亡の危機と地域が抱える課題というのは、実は根っこが
同じだったりもします。

そのような中で何が出来るのか?現代社会の課題と真摯に向き合って来られた
各県の担当者の発表には考えさせられること、共感すること、
得ることが幾つかありました。

しかし、私たちが忘れてはならないのは、近現代の人口増加以前、
今よりももっと地域に居る人々の人口が少ない時代、村々の人々が飢えに
苦しむことが度々あった時代、そんな時代においても、むしろそんな時代
だったからこそ信仰の対象物であった仏像などは、人々の心を支える、
また地域の人々の心を結び付ける存在として、大切に守られてきた
のだということです。

「豊かさ」とは一体何なのか?
人は心の充足を何に求めるのか?
地域の人々の心を結び付けてきたのは何なのか?

文化財行政に関わる者として、国の対策最前線で抱える課題が、
日本中の小さな地域が抱いている課題より発している、
そして我が稲敷市が抱えている課題でもある、との認識を深めた研修会でした。



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