稲敷資料館日々抄

稲敷市立歴史民俗資料館の活動を広く周知し、文化財保護や資料館活動への理解を深めてもらうことを目的にしています。

市内の文化財めぐりをしました

2012年12月28日 | 日記

12月15日土曜日、
午後からちょっと雨に降られてしまいましたが、
市内の文化財巡りをしました。

最初の見学は、平成12年5月に国の重要文化財に
指定されている横利根閘門です。



かつて利根川増水時には、横利根川筋や
霞ヶ浦沿岸が氾濫し、そのために海から
利根川をさかのぼって来た塩水が、横利根川や
霞ヶ浦沿岸地域に塩害をもたらしていました。

このため利根川と霞ヶ浦を分断し、なお且つ
増水時にも舟運に支障をきたさないようにと、
この閘門が建設されました。

大正3年(1914)に着工し、大正10年(1921)に完成した
横利根閘門は、当時霞ヶ浦や北浦から利根川を経由して、
江戸へ向かう舟運の重要なルートでした。

見学の出席者の中からは…
「横利根閘門を通って日本橋まで行こう!」
そんな声もありました。楽しそうですね。

桜の季節も良いですが、冬枯れの横利根閘門も味がありましたよ。




次に向かったのは、鳩崎の関口家です。
本家関口家は宝暦9年(1759)頃、豪農の関口八兵衛が醤油醸造
を始めました。
その後、明治24年(1891)上菱醤油醸造会社なり、12代関口
八兵衛の時代(明治期)には、醤油の外にソース(鳩ソース)、
ビール(上菱ビール)、茶園経営、レンガ製造など事業拡大を図ります。



その頃のレンガでしょうか、
レンガ造りの長屋門と蔵が新宅に残っています。



昨年の震災で一部崩壊しましたが、今は修復されて
見事な長屋門と蔵を見せていただくことができました。

霞ヶ浦の永代施餓鬼を行い、地域の人々に尽くした
智豊尼 はこの関口家、関口八兵衛東岑の妻だったんです。
智豊尼は古渡の堂崎鼻と大山新田(美浦村)に供養塔を造立しています。

ランチは江戸崎の吉田家さんです。
外が寒かったので、あったかいお座敷がとってもうれしかったです。

午後からは、まず大日苑に向かいます。
その昔、榎ヶ浦と呼ばれた江戸崎入りを干拓した植竹庄兵衛さんが、
昭和14年(1939)に自らの居宅を目的として建てた、洋風建築と和風建築
を折衷した木造2階建ての住宅です。
平屋の欄間に嵌められていた、鳳凰を模ったステンドグラスが
とてもきれいで印象的でした。
平成19年(2007)10月に、国の登録有形文化財になっています。



最後の見学は、柴崎の平井家住宅です。
江戸時代の寛文年間(1661~1672)に建てられたと考えられています。
茅葺の平井家は、平成13~15年に解体修復工事が行われ、その時
小野の逢善寺の茅場で採れるしま茅が一部使われているそうです。
昭和51年(1976)に国の重要文化財に指定されています。



参加された皆さんのおかげで、何事もなく予定通り午後4時に資料館に
戻ってくることができました。
ご協力ありがとうございました。

参加された方からアンケートを書いていただきましたので、
いくつかご紹介させていただきます。
 
 ・市内に文化財があることがわかり、うれしく思います。  
 
 ・近くなのに行けなかった場所で、今回はありがたいと思っています。
  次回も楽しみです。
 
 ・名前(建物)は知っていたが、歴史的なことは恥ずかしながら知りませんでした。
  くわしく説明していただき、驚いています。勉強になりました。
  この様な機会をまた計画して下さい。

 ・大変興味深いお話で、稲敷が大好きになりました。
  舟で横利根閘門から旅ができたら最高です。 
等々ありがとうございました。

次回は、暖かくなった頃にお寺や神社巡りを予定しています。
今回参加できなかった方も、ぜひ次回はご参加ください。

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学芸員専門研修と上野恩賜公園

2012年12月10日 | 日記

12月5日(水)。

この日は、博物館学芸員専門研修へ出席するため
東京都台東区は上野恩賜公園へ行きました。
午前中からの研修でしたので、早めに家を出発…。

すると、予定より早く着いてしまったので、
博物館・美術館好きの目線から上野公園を散策しつつ
今更ではありますが、ちょっとご案内してみたいと思います。


まずは、JR上野駅を公園口で降りまして、横断歩道を渡りましょう。
12月だというのに東京では、まだアオイ銀杏が…。
稲敷市との気温差は3℃くらいありましたので…ちょっと納得です。



駅から2、3分歩くと右手に「国立西洋美術館」が見えてきます。
庭にロダンの「考える人」や「地獄の門」などの彫刻が展示されていますね。
ここは、松方正義の三男の幸次郎氏が築いた「松方コレクション」が母体に
なっている館で、今は台東区の人たちが「西美を世界遺産に!」と
頑張っているところですね。



上野と言えば、「美術館、博物館」ですから、催事案内看板もこのとおり!



公園を東から西に横断するように歩くと、突き当りには皆さんご存知
「上野動物園」があります。動物園には遊園地もありますね!



動物園から北に向かって2、3分歩くと…赤レンガ風の建物が見えてきます。
こちらが「東京都美術館」です。長らくリニューアル工事をしていましたが、
今年の4月1日に完了し、こけら落としの展示といたしまして、
「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」展を開催した
ことは記憶に新しいですね。

そうです、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」がやって来たのです!

ちなみに、ほぼ同じ時期に、お隣の国立西洋美術館には、
同じフェルメールの「真珠の首飾りの少女」が来ていました。



実は上野公園の噴水広場もここ数年大規模な改修工事を行っていました。
完成した現在は、噴水前の竹の台広場も広くなった感じで、さらに公園内に
カフェが2軒新設されていました。実は上野公園、飲食できるところが
美術館や博物館の中だけだったので、ちょっと不便でした…。



竹の台広場から、こんもりした茂みのある東の方に歩いて行きますと
この銅像があります。そうです、上野の銅像と言えば…
「野口英世」ですよね!?
旧千円札の人ですよ。
西郷さんの銅像は、京成上野駅の方なので、常磐線を使うとあまり
お会いする機会が無いのです…



野口英世の銅像を過ぎて、さらに東に歩くと…
「国立科学博物館」が見えてきます。

野口英世の銅像は、科学博物館前の茂みの中にひっそりと立っていたんですね…。
この科学博物館、昨年の夏は恐竜の化石の展示をしたのですが、その際に
「ナイト・ミュージアム」を開催していました。
そうです、夜の博物館に懐中電灯1本で探検に入るのです!
…まァ、大勢の皆さんと一緒に入るので、そんなに怖くはありませんが…。



科学博物館と言えば…
そうです、実物大のクジラのオブジェですね!
これは大きい!!



科学博物館から北に向かって歩くと、大きな通りに出ます。
その通り沿いにちょっと西に歩くと…
御存じ「東京国立博物館」です。

上野恩賜公園の中でも、広い敷地を有し、法隆寺宝物館、東洋館(現在休館中)といった
特徴的な別館を持ち、モチロン本館の常設展では毎日、各種の国宝や重要文化財が
いくつも見られます!

平成館での特別展示だけを見て帰っちゃ、とてもモッタイナイ!!
東博へお越しの際は、是非「常設展」も見て行かれると良いと思いますよ!

最近、私が東博でお気に入りなのは、「ミュージアム・シアター」での3D映像です。
これもおススメなので、機会があれば是非に!



東博を過ぎて、さらに西へ歩きますと道路の反対側に「東京藝術大学」があり、門の近くに
「藝大美術館」のエントランスがあります。
藝大と言えば「日本美術院」との関係が深く、院展関係者や大学関係者の展示や
文化財の修復の展示など、特徴ある展示をしています。



藝大を過ぎて、北に向かって歩きますと…
今度は「国際子ども図書館」が見えてきます。

とても立派な建物ですね。
ここは、元々「帝国図書館」だったそうですから納得です。
今現在は、国立国会図書館の分館のようです。
「子どもにこそ、一流を…」といった熱意が伝わって来るようですね…。



子ども図書館を、さらに北に向かって歩いて行きますと…
「東京文化財研究所」です。

今は独立行政法人となりました。
こちらでは、「木質文化財の保存」という講座を、7、8年前に2,3度
受講したことがありますが、官民共にIPMの取り組みが本格化した頃でしたので、
とても参考になったと記憶しています。



東文研からちょっと南に戻り、T字路を西に曲がって進んでいくと…
「東叡山寛永寺」です。
写真は「根本中堂」です。

以前、江戸崎の不動院の調査の時に、天海さんのお話をしましたが、
彼が江戸、即ち関東天台宗の拠点として築いたお寺です。
江戸崎の不動院や、小野の逢善寺といった檀林寺で修業した優秀な
お坊さんがここ寛永寺の学寮に進んだのですね。



根本中堂前の灯篭…。
稲敷市のみなさん、どこかで見たことあるように思いませんか…?

さて、どこでしたでしょうか?



寛永寺の道を東へ引き返して、出張の目的地である…
「国立教育政策研究所 社会教育実践研究センター」へ到着です!

上野公園には、狭い範囲に沢山の文化施設がひしめいています。
これだけざっと歩いても30分程度でしょうか。

今回ご紹介したのは、公園の北半分だけですが、それでも見所たくさんです。
機会がありましたら、上野恩賜公園のお散歩をなさってみてはどうでしょうか?



そうです、肝心の出張ですが、この日から3日間、
「博物館学芸員専門講座」を受講してきました。

これは、本年度から新たに開講された講座で、日本全国の国立、県立、
市町村立、などの公立のほか大学や民間の博物館の学芸員、それも
美術館、博物館、資料館、文書館、科学館等々…さまざまなジャンルの
館で働く学芸員を集めての講座で、全く新しい取り組みとのことでした。

講座は撮影や録画録音が禁止なので、詳細はここでは語れませんが、
記念すべき第1回の講座に運良く参加ができ、国内の第一線でご活躍され
ている講師の方々や、一緒に参加した方々、また講座を開かれた
社会教育実践研究センターの方々から素晴らしい刺激を得ることができました。

この3日間の研修で得たものを稲敷市の資料館に持ち帰り、
より良い資料館へ…と役立ててゆきたいと思います。


しばらくブログが更新できませんでしたので、
今回はちょっと長めになりましたが、
頑張って書いてみました。

次からは、平常通りで行く予定です。

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