稲敷資料館日々抄

稲敷市立歴史民俗資料館の活動を広く周知し、文化財保護や資料館活動への理解を深めてもらうことを目的にしています。

近代化遺産全国一斉公開

2013年10月19日 | 日記

10月20日。

もう過ぎてしまいましたが、皆さん何の日かご存知だったでしょうか?
『リサイクルの日』であったり、『頭髪の日』でもあるようですが、
文化財的には『近代化遺産の日』だそうです。

近代化遺産とは、幕末以降から第二次世界大戦期までの間に建てられた日本の近代化に貢献した産業などに係る建造物、だそうです。
全体的に和洋折衷でモダンな雰囲気の建物が多いです。
普段は非公開となっていることの多い近代化遺産ですが、『近代化遺産全国一斉公開』と銘打ち、
11月末まで全国で一斉に公開しようというイベント行われています。
全国100箇所以上の自治体で、300以上の近代化遺産が公開されます。

稲敷市でも『大日苑』(旧植竹庄兵衛家住宅洋館・和館・土蔵)が期間中(~11月24日まで)、公開されています。


大日苑は、稲敷地域の干拓事業を手掛けた植竹庄兵衛氏が昭和12年に建設した建物です。
アール・デコの影響がみられる洋館、内部の意匠を凝らした和館ともに細部まで見応えのある建物となっており、
ドラマなどのロケも何度も行われているそうです。

秋の行楽シーズン、日本の近代化をささえた建造物たちをご覧になってみてはいかがでしょうか?

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沼田・吉祥院の調査をしました!

2013年10月13日 | 日記
10月12日(土)。

この日は沼田の吉祥院の寺院調査を行いました。

吉祥院は、天台宗のお寺です。

江戸時代には、天台宗の学問所の一つだった不動院の
末寺筆頭でした。

不動院との関係性を示す遺構として、
「天海の隠れ井戸」と呼ばれるものがあります。


上の写真の一番左がそれですが、今は往時とは
だいぶ変わってしまったようです。

今回も現在お寺に残る仏像やお経、古文書などの調査を
おこない、そして、「新発見」が二つほどありました。

何れも吉祥院が所蔵する古文書からです。


まず、一つ目は、
慶長7年(1602)の検地帳を確認したことです。


上の写真がそれですが、
「慶長七年壬寅十一月廿日/
 常陸国信太郡沼田村御縄打水帳/
 畑方三冊/
 沼田村吉祥院」
 と書かれているのが分かるかと思います。

 この帳面の最後には、
 「小林守右衛門/鵜沢伊右衛門」といった
 検地役人と、
 「案内者 弥右衛門/省 新六」という名が
 見られ、弥右衛門と新六という地元の者が案内
 をし、慶長7年11月23日に調査を終えた
 ことがうかがえます。



 「御縄打水帳」というのは、「検地」という
 田畑などの耕作地に縄を打ち、広さを測り、
 上・中・下などの等級をつけて、耕作地から
 獲れる収穫量を調査した際に、それを記録した
 書き付けのことで、「検地帳」や単に「水帳」
 などと言ったりもします。

「検地」で有名なのは、豊臣秀吉がおこなった
「太閤検地」ですが、稲敷市域では佐竹氏の
 秋田移封後の慶長7年(1602)7月頃から
 徳川幕府の役人によっておこなわれたものが
 多いようです。
 
 余談ですが、稲敷市でこれまで確認されている
 もっとも古い検地は…
 慶長4年(1599)8月におこなわれた、
 下総国矢作藩の領内検地だそうで、橋向、
 押砂、曲淵、飯島、石納、野間谷原、上須田の
 7ヶ村のものだそうです。

 「検地帳」は、農村の基本台帳ともいえる
 史料ですので、これが新たに見つかった意義は
 大きいといえるでしょう。


二つ目は、

「月出里(すだち)」の地名に関することですが、
これまでは江戸時代頃までは「月出」と書いて
(すだち)と呼び、
明治時代頃から「月出里」と表記するようになったのでは、
とされていたのですが、

天明8年(1783)と寛政12年(1800)の古文書に、
「月出里」
と明記されているのが確認され、江戸時代の中頃には、
「月出」と「月出里」の両方の表記を使用していた
ことが分かりました。


「天明八年申三月 荒田改反別書出帳 常州信太郡月出里村」


「寛政十二年庚申霜月日 御水帳写田中組 月出里村」


ただし、「月出」と「月出里」の標記の違いや使い分けに
ついては、まだ詳しいことは分かりません。


もう一つ、「月出里」の地名に関して、
聞かれることがあるのは、
「月出里」の「里」が、古代における
「国・郡・里」制と関係性があるのではないか?
ということです。

つまりは、古代の「里」の遺称地でないのか?
ということですが…

「里」という単位は、後に「郷」という行政単位に
置き換わるので、遺称地として残りにくいだろうとは思います…
が、これもハッキリしたことは分かりません。

今回見つかったのは江戸時代の文書ですから、
古代のことまでは分かりませんが、
「月出里(スダチ)」の地名がいつ頃までさかのぼれるのか、
興味はつきませんね。


今回の発見もそうですが、江戸崎町史や新利根村史、
桜川村史考、東町史など…
旧町村の町村史で分からなかった、見つからなかった
「新発見」を
稲敷市の資料館は、合併以後いくつも見出しています!!!

これらは、外部からの一時的な調査ではなく、
地域の資料館、地域の人々、協力者の方々による
地域に密着した丹念な調査の成果であるといえます。

さすがに、国宝や重要文化財、日本史を書き換えるような
「大発見」はありませんが、
今現在の私たちにつながりうる
「ふるさと」の移り変わりを示す貴重な史料です。

今後も可能な限り市内の調査を継続していきたいと
考えていますので、是非、市民の皆様のご理解と
ご協力、ご支援の程を宜しくお願い致します。




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市内文化財巡りをしませんか!

2013年10月11日 | 日記

市内文化財巡り
 をしませんか!                       


阿波:安穏寺

  稲敷市内にはたくさんの文化財があることをみなさんご
 存知ですか?
  昨年に引き続き今年は,茨城県と稲敷市の文化財として
 指定を受けている建造物や彫刻,史跡を見学に行きます。
 
  実際に訪れ,目で見て説明を聞いて地域の歴史や文化に
 触れてみませんか!
  通常では見ることのできない文化財も見ることができる
 貴重な機会ですので,ぜひご参加ください。
  
 ※定員15名ですのでお早めにお申込みを!

 
 開催日時  平成25年11月17日(日)
          午前9時45分出発~午後4時着予定
 集合場所  歴史民俗資料館
 内   容  大杉神社 → 安穏寺 → 神宮寺 → 十三塚 → 瑞祥院
 定   員  15名
 参 加 費  無 料 ※ 昼食代は各自負担でお願いします。
 対   象  稲敷市在住者または在勤者
 申 込 み  直接来館もしくは電話でお申し込みください。
         稲敷市立歴史民俗資料館
         電話 0299-79-3211
    
 ※詳細については,申込者に直接ご連絡いたします。














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資料館収蔵庫の燻蒸をおこないました。

2013年10月04日 | 日記
9月29日(日)~10月3日(木)、この間、当館では、

「燻蒸」(くんじょう)という作業をおこないました。

今回は、その作業について、ちょっと紹介いたします。

燻蒸というのは、当館の収蔵庫内に殺カビ・殺虫・
殺卵・殺蛹効果のある「アルプ」というガスを充填し、
これを資料に浸透させておこなう対病害虫管理の
一つの方法です。

もちろん、殺虫効果のあるガスですから、長時間・
大量に吸い込むと、人体にかなりの悪影響があります。

ですから、安全対策のため、一定期間、資料館と
図書館を閉館する必要があります。

以前は「エキボン」という、使用時間が短く、かつ効果の
高い薬剤を使用していました。
けれどもエキボンはオゾン層を破壊する恐れがある、
ということで、2004年12月末以降、使用が禁止されました。

やはり、地球環境への配慮は、大切ですね。


さて、当館の収蔵庫内は、ご覧の通り資料でいっぱいです!


燻蒸に使う機材が、館内に搬入されます。


下の写真は、燻蒸効果を確認するための、
「菌」や「虫」を封じ込めた「テストサンプル」です。

この時は、まだ虫もわしゃわしゃと元気に動いていました。

収蔵庫内を密閉するために、エアダクトなどを
目張りします。


安全確認のため、消防署の立入検査が入ります。


さぁ、準備ができました。
資料館や図書館が閉館した、午後6時頃から
48時間、アルプという燻蒸ガスを収蔵庫内に
圧送します。



48時間後、燻蒸ガスの圧送が終了すると、
今度はガスの排気をおこないます。

下の画像は、残留ガス濃度の検査器がオレンジ色に
変色したものです。
終了直後のガス濃度が高かったことが分かります。


燻蒸作業中は、圧力をかけてガスを資料に浸透
させるのですが、文書箱や衣装ケースなどは、
浸透させたガスが中々抜けにくく、ガス濃度が
下がるには時間がかかるのです。

安全確認がなされるまでは、たとえ職員でも
収蔵庫の中には入れません。


さて、引き渡し前の、残留ガス濃度の検査です。
アルプには、人為的に「甘い香り」が付けられている
そうですが、収蔵庫内には、それ以前にしてなかった、
「甘い香り」が、まだ漂っていました…。

検査器で収蔵庫内の空気を吸い込み、オレンジ色に
変色する部分が多ければ多いほど、残留濃度が
「高い!」ということです。


まだ「甘い香り」は残っていたものの、検査器は
全く変色せずに、燻蒸ガスの濃度が安全なレベル以下に
なったことを示しています。

テストサンプルの虫も今では全く動いていません。


この後、テストサンプルは、1カ月程度の監視を
おこないます。

と、いいますのも、ごく稀に、「死んだはずの」
虫や菌が「復活」し、元気に活動を再開することが
あるからです。


しかし、今まで当館においては、サンプル虫や菌の
「ヨミガエリ」はありませんでしたし、今回も
温度・湿度、共に既定の条件を満たした中で
燻蒸が実施出来ました。


今回は、資料を保存・管理していく、当館の活動の
一つをご紹介いたしました。




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