稲敷資料館日々抄

稲敷市立歴史民俗資料館の活動を広く周知し、文化財保護や資料館活動への理解を深めてもらうことを目的にしています。

企画展の撤去と資料返却をしてきました

2012年09月26日 | 日記

9月25日に企画展の展示作品の撤去ならびに梱包を
おこないました。


150号を超える大作も壁から外して梱包します。


今回、お借りした小林巣居人の屏風は、専用の桐箱に収納します。


当館の企画展示室は2階にあるのですが、資料搬送用のエレベーターが無いため
職員が作品を持って階段を歩いて運びます。

お借りしている作品を傷つけることは絶対に許されませんので、慎重に、注意をしながらの
作業となります。


明日の返却に向けて、1階の荷捌き室に集められた作品たち。

9月26日(水)。


朝8時前に集荷のトラックが来館し、作品の積み込みを行いました。


移動中、荷崩れをおこさないか、積み込み状況を詳しく確認します。
これなら大丈夫!というのを確認しないうちは走り出しません。

走行も安全第一!
ゆっくり走ります!!

最初に到着したのは、小林恒岳先生のところです。



小林恒岳先生に作品の返却にあたり検品していただいているところです。
小林先生は、県展への出品作を完成させたばかりで、
少しお痩せになられたように思われました。

無事、先生の検品が済みまして作品の返却が完了いたしました。

この後、龍ヶ崎市歴史民俗資料館、取手市を廻りまして、今回借用しました
作品の返却が完了しました。

作品をお貸し頂いた関係者のみな様ありがとうございました。

これにて、本企画展、総ての活動が終了です。
大事な作品をお預かりしていましたので、担当者の肩の荷も下りて一安心、
といった心持です。





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企画展「水郷、描かれた稲敷の原風景」展を終えて

2012年09月25日 | 日記

7月27日より開催してまいりました企画展「水郷、描かれた稲敷の原風景」も
9月21日で千秋楽を迎えました。

これはご好評につき、当初の千秋楽の9月9日から会期を延長したものです。

来館者数は、48日間で1,507人のご来館がありました。
1日当たり31.4人の方が見えられた計算になります。







ご来館くださった皆様におかれましては、誠にありがとうございました。


来館者受付簿やアンケートを参考に来館者がどちらから見えられたのか、
概観してみますと…

県内では、河内町、阿見町、龍ケ崎市、牛久市、土浦市、つくば市、石岡市、
かすみがうら市、利根町、取手市、潮来市、鹿嶋市、神栖市、行方市、鉾田市、
古河市、坂東市、水戸市、常陸大宮市などがみえます。

県外ですと、香取市、柏市、松戸市、船橋市、鴨川市、横浜市などがみられました。

変わったところですと…「うちゅうから」みえられた方もおられたようです。
稲敷の資料館にも「うちゅうから」お客様が来られるなんて、凄いですね!

さて、市内の方はといいますと…
江戸崎、佐倉、鳩崎、高田、椎塚、羽賀、蒲ヶ山、沼田、南ヶ丘、
柴崎、中山、上根本、下根本、伊佐津、下太田、
古渡、柏木古渡、岡飯出、阿波、四箇、須賀津、浮島、
清久島、結佐、四ツ谷、六角、手賀組新田、西代、上須田、下須田、阿波崎、
幸田、福田、東大沼、光葉…

といった所からおいでくださったようです。

今回、展示いたしました画家の一人、根本正さんは稲敷市四箇の出身、
また鈴木草牛さんが浮島に深いゆかりがあった画家であるということから、
特に桜川地区の方の来館が多かったように感じられました。

ただ、受付簿やアンケートに「稲敷市」や「市内」とのみ記入されている方、
未記入のの方も多いので、市内でももっと多くの地区からご来館なさっている
かと思われます。

資料館におりますと来館された方々が思い思いに画家の方たちとの思い出話や、
描かれた稲敷の風景について感想を語って聞かせてくださることがございます。

企画者の思いも寄らないところから、新たなエピソードが伝えられたりもします。
ですから、一つ展示を行いますと、そこから新たな企画のアイディアが生まれる
ことも少なくありません。

今回、根本正さんや、鈴木草牛さんが、稲敷の地元の人たちに、
とても愛されていたんだなァ…、
ということを改めて感じることが出来ました。

そして、郷土の皆さんが大切に想う芸術家やその作品がある、ということが、
とても充実した幸福感を感じられる時間を作ってくれるのだなァ…、
そういう想いを今回、強く感じさせられました。

展示はもう終わってしまいましたが、展示図録の中に可能な限り今回の
展示のエッセンスを詰め込んだつもりです。

もし市民の方に愛された、郷土ゆかりの画家たちの作品に興味がございましたら、
是非、市立資料館にて「水郷、描かれた稲敷の原風景」展の図録を
お手に取ってご覧ください。

資料館では、みな様のご来館を心よりお待ちしております。

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ご好評につき企画展の会期を延長します

2012年09月14日 | 日記

当館で9月9日(日)までの日程で開催していました企画展、
「水郷、描かれた稲敷の原風景」ですが、
ご好評につき会期を9月21日(金)まで延期いたします。
この機会に、まだ展示をご覧になっていない方は是非足を運んでいただき、
在りし日の水郷稲敷の原風景に思いを馳せていただきたいと思います。

また、展示してある作品の写真・解説を収めた図録も販売しておりますので、
この機会に併せてお買い求めください。

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刀剣のお手入れと企画案発表

2012年09月08日 | 日記

博物館実習生のM子です。

ついに実習の最終日を迎えました。
2週間に渡る実習は、長いようで短く、少し寂しい気持ちになりました…。
が、しんみりしてはいられません。最後まで頑張っていきましょう!

9月7日

1、資料館所蔵刀剣等のお手入れ

午前中は、稲敷市の資料館に所蔵されている刀剣、
並びに常州東条庄高田郷の刀剣を収集されている
コレクターの方の刀剣のお手入れをさせて頂きました。

前日に谷津先生の工房にて、その方法やコツを教わっていたため、
そこで学んだことを活かしながら進めていきました。

綿布団を敷いた机の上に、手入れする刀剣を置きます。
長いものから短いものまで、様々な種類の御刀が並ぶ光景は圧巻でした。




〇作業工程

まずは、御刀を袋から取り出す所から作業が始まります。
「お手入れさせて頂きます」という気持ちを込めて、
御刀にお辞儀をしてから作業が始まりました。




取り出す方の口を下に向けないように気を配り、
鞘から刀身が滑り落ちるという事態を招かないように、
慎重に袋から取り出します。



そして、鞘から御刀を抜きます。
ポイントは「途中で止めず、切っ先まで一気に抜く」こと。
抜く途中で刀身を傾けると、鞘に当りヒケ傷が付く危険があるため、それを予防します。




次に、目釘抜き(めくぎぬき)で目釘(御刀と柄を結合している釘)を抜きます。
抜いた後に、御刀の柄を外します。

手で引き抜くのは危険なため、御刀を持った右手の手首を叩き、
刀身が浮き上がった所を見計らって取り外します。
この時に、所有者の了解があれば、御刀の中心(なかご)に付いている
鎺(ハバキ)も外しておきます。




柄を取り外すと、柄に隠れていた中心(なかご)部分が見えます。
ここには、御刀を作った職人の名前などが彫刻されており、
御刀を作った当時の様子などといった歴史的な背景が見えてきます。



取り出した刀身には古い油や鞘の削れカスなどが付着しているため、
奉書紙を使って拭き取りを行います。

コツは、手元から刃先に向かって動かし、最後まで拭き切ること。
途中で止めたり戻したりすると、綺麗に拭き取ることが出来ないため、
一方向に動かしていきます。




拭き取りが済むと、次は刀身に打ち粉をかけていきます。
打ち粉は、紙での拭き取りで落とし切れなかった刀身の油を
細かな粉に吸わせて取り除きます。

こちらも手元から刃先に向かって、一方向に向かって動かします。
かけ終わり次第、打ち粉を別な奉書紙で拭っていきます。

愛刀家の中には打ち粉の使用を嫌う方がいるということなので、
借用品の場合、打ち粉の使用の可否を確認する必要があります。




ライトにかざして、その刃紋の特徴や、御刀表面の傷や錆などの有無を確認します。

☆本来なら一通りの点検が終わったところで油を引いて刀を鞘に納めますが、その前に…。

油を拭って打ち粉を打った御刀を並べ、「常州東条庄高田郷の御刀鑑賞会」を行いました。

この日の鑑賞刀は、稲敷市指定文化財の太刀、銘「常州東条之庄高田住人勝貞作」や
東条庄高田鍛冶の嫡流である英定や綱貞の脇差、珍しい所では、越後系の鍛冶といわれる
脇差、銘「常州住行信」や最後の東条庄高田の刀鍛冶と言われる来国綱の脇差などなど…
これだけまとまった稲敷の郷土刀の数々は他所では絶対に見られない、とのことでした。




さて御刀鑑賞会を終えて御刀を仕舞う準備をします。
まず錆止めの役割を果たす丁子油を、脱脂綿を使って刀表面に塗りつけます。



ここでのポイントは「油は薄く、ムラなく塗る」です。
御刀の表面をライトにかざし、きちんと塗れているかの確認をします。


最後に、御刀を鞘に納めます。
刃先を上に向け、御刀の棟(刃と反対の背の部分)を鞘の底に付け、
鞘の内側に御刀をぶつけないよう気を配りながら、慎重に納めていきます。
最後に袋に入れて、紐を締めて、完了です。





2、午後には、実習のまとめとして「資料館でやってみたい企画案」の発表を行いました。
実習を踏まえ、「自分がやるとしたら」と想定して、
自分なりの企画を職員の皆さんの前で発表しました。



それぞれがやりたい企画案を発表し、皆さんからアドバイスを頂きました。
自分だけで考えていた時点では見えていなかった、企画の問題点やその解決法、
取り入れるべき要素が目に見えてきました。
企画案の作り方など、自分なりに研究を深め、もっと良いものにする方法を
考えてみるのもいいのではないかと思いました。


〇まとめ
 今回の実習では、本当に様々な体験をする機会を頂き、
中身の詰まった実習をすることが出来ました。
今まで触れる機会の無かった刀剣を初めとして、歴史的に価値のある物を見て、
実際に触れて、学びを深められたこと、非常に嬉しく思います。
今後も、今回の実習で学んだ「探求心」を大切に、何事にも取り組んでいきたいと考えています。

 最後になりましたが、資料館の皆さん、本当にお世話になりました。
資料館の方々の助けがあったからこそ、無事に実習を終えることが出来たのだと思います。
2週間という長い期間の中、私達実習生を教え導いて頂き、本当にありがとうございました。


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鉾田新額堂さんと谷津隆夫先生の工房見学

2012年09月08日 | 日記

博物館実習生のM子です。

実習も後半に突入しました。
作業が多かった前半に比べ、後半は見学中心の内容でした。
様々な分野の職人さんの元に訪問し、その技や道具を見て学んできました。

9月6日

1、この日は、午前中に「鉾田新額堂」さんへ、
額縁制作の様子の見学に訪れました。

小村さんご夫妻は私達をにこやかに迎えて下さり、
和やかな雰囲気の中で額縁制作の過程を見学しました。

小村さんは、国内にいる数少ないヨーロッパの額の研究者から技術と知識を
学んだそうで、小村さんがそれ以前に培ってきた額職人としての技術や知識、
職人気質と併せて素敵な額を制作されます。



まず作業道具について、様々な種類がある中で
特に印象的だったのが「カンナ」です。
大小様々な種類が揃えられた手作業用のものがこちら。



機械に付けて使用するカンナは、作る額の形に木材を彫刻できるよう、
小村さん自ら刃の形を加工するそうです。




○制作工程
まずは木材の製材から。電動のカンナで木材を額縁の形に加工します。



次に、額として組み合わせられるよう、1本の木材を4本に切り分けます。
切り口の角度が丁度45°になるように工夫されたカッターを用いて切っていました。



切ったものを組み合わせて額にしていきます。
ここで気を付けなければならないのは、後で接合面が離れないように固定することだそうです。
これにはちょっとしたコツがあるようで、それは職人の秘密のテクニックなのだとか。
本来であれば、他の職人さんには教えてくれないそんなコツも、ちゃんとお話ししてくれました。



最後に、額に装飾を施します。額につける飾りは、型の中に石膏を流して作ります。
これは一度に作るのではなく、パーツごとに作ったものを組み合わせながら形にしていきます。
金箔を押すなど、装飾は額によって様々で、個性的です。



額の色々…



「額は絵に対する着物」という小村さんの言葉が印象的でした。
オーダーメイドで「その絵に一番似合う額を作る」ことを大切にしている小村さんの、
職人としての誇りが伝わってきました。



2、午後は、刀剣研ぎ師の谷津隆夫先生の工房を訪問させて頂き、
刀剣の研ぎ方やお手入れの方法、刀の歴史などについて教えて頂きました。

この日は先生の普段の作業場でなく、居合の稽古場に研ぎの船が設置されていたのですが、
お邪魔してまず目に入ったのが、居合道教士八段である谷津先生の賞状の数々でした。
研ぎ師として仕事をするだけでなく、武道の面でも刀を極めているという先生の姿を
垣間見ることが出来ました。

また、谷津先生は、刀剣鑑定においても著名な刀剣鑑定家である本間薫山氏の内弟子だった
とのことや日本美術刀剣保存協会の茨城県支部長を務めてらっしゃることなどを
後で資料館の方から伺いました。

まず初めに見せて頂いたのが「船」です。この上で刀を研ぐそうです。
船の傍には、道具箱も置かれていました。



まず刀を布で拭って表面の油を落し、
砥石を置き、踏まえ木という道具を足で踏んでしっかりと砥石を固定し、研ぎ始めます。


  
この姿勢が難しく、研ぎの世界では「構え3年」と表現されているそうです。
私達も実際に刀剣の研ぎを体験させて頂きましたが、姿勢を作るのが非常に難しく、
上手く構えられませんでした。

砥石にも様々な種類があり、工程によって使い分けていきます。



長い時間をかけ、少しずつ研いでいきます。
非常に強い忍耐力が必要な作業であることが分かりました。

当初は錆が多く付いていた刀が、徐々に輝きを取り戻していく様子が印象的でした。


研ぐ作業の合間に、平安中末期から鎌倉、南北朝、室町と刀の歴史の概要に
ついて先生がお話して下さいました。

特に日本刀の刃紋について、直刃、丁子刃、互の目、のたれ、小乱れなどの種類があり、
これらが変化したり組み合わさったりと、とても多くの種類があることを知りました。
これまで刀を見る機会があっても、意識したことの無かった部分であり、
非常に興味深く感じました。

また、刀剣鑑賞のポイントの一つである「沸え(にえ)」と「匂い(におい)」について、
とても丁寧に教えてくださいました。



最後に、刀剣のお手入れ方法を教えて頂きました。
刀を拭い古い油を落とし、打ち粉を打って拭い、最後に新しい油を塗って仕上がりです。



手順を簡略化して書きました。
詳細は7日に行われた「刀剣のお手入れ」の記事に書きます。

谷津先生の工房訪問を通し、これまで見る機会はあっても、実際に触れる機会のなかった刀剣について、
非常に多くのことを学ぶ機会を与えて頂いたこと、非常に嬉しく思います。
刀を持ったことの無い私達に対して分かりやすく説明をして下さり、初心者にとっても理解しやすかったです。
とても貴重な体験となりました。

小村さんご夫妻、谷津先生、
見学をさせて頂き、本当にありがとうございました。


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