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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

裁判員裁判ってなにかいいことあったんだろうか 長期間の事件は裁判官だけで判断とは

2013年06月22日 | 刑事司法のありかた

裁判員制度

 刑事裁判への市民感覚反映を目的に、有権者から無作為に選ばれた裁判員と裁判官が共同で審理する制度。2009年5月に始まった。最高刑が死刑または無 期懲役か、故意に被害者を死亡させた事件が対象で、有罪か無罪かだけでなく量刑も判断する。構成は裁判員6人と裁判官3人が原則。法令解釈などを除き、裁 判員は裁判官と同じ権限を持ち、被告や証人に質問できる。裁判員法の付則は「施行から3年経過後に必要な措置を講じる」と規定している。

 

裁判員制度の在り方を議論してきた法務省の検討会は、審理が1年を超えるような極めて長期間となる事件については裁判員の負担が重くなりすぎるなどとして、裁判官だけで審理できる制度を新たに設けることなどを提案する報告書をまとめました。

それによりますと、審理が1年を超えるような極めて長期間となる事件については、「裁判員の負担が重すぎることから対象から外すべきだという意見が大勢を占めた」として、裁判官だけで審理できる制度を新たに設けることを提案しています。

裁判員制度がスタートしてこれまでにもっとも長い審理となったのは、去年、さいたま地裁で行われた男性3人を殺害した罪などに問われている被告の裁判で、裁判員を選ぶ手続きから判決まで100日間に及びました。
このほか、鳥取県内の男性2人を殺害した罪などに問われている被告の裁判が75日間、大阪のパチンコ店が放火され5人が死亡した事件の裁判が60日間などとなっています。
こうしたケースでは参加できる人が限られるため、裁判所に呼び出された候補者は鳥取地裁のケースが700人、さいたま地裁のケースが330人など、通常より大幅に増えましたがそれでも辞退が相次ぎました。

しかし、被告人の有罪・無罪、場合によっては死刑まで宣告するのが刑事裁判です。裁判する側の便宜ばかりに重きを置くべきではないでしょう。

そもそも、1年以上もかかる重大事件なら裁判官だけで裁判できるなら、裁判員なんていらないではないですか。

 


この報告書では一方で、心理的な負担の大きい死刑の可能性のある事件や、被害者のプライバシーの保護が必要な性犯罪については、「社会の一員として向き合うべきだ」などという理由から、裁判員裁判の対象から外すべきではないという意見が多かったとしています。

時間がかかる点に比べて、「社会の一員として向き合うべきだ」とは、いかにも一般市民である裁判員のご心痛に配慮のない意見です。

また、死刑判決を下す際には多数決から全員一致に改めるべきだという指摘もありましたが、「全員一致を要件にすると1人の裁判員が拒否権を持つことになり、公平性が損なわれる恐れがある」などとして、多数決の維持を求める意見が多かったとしています。

有名な格言、疑わしきは被告人の利益に。1人の無罪主張者が他の11人を説得する「12人の怒れる男」を見たことがないのでしょうか。せめて、人の命を奪う死刑制度を残すなら、無罪になった時の検事控訴を許さないとか、1人でも反対があったら死刑判決をしないという配慮が必要でしょう。1人は疑問を持ったのですから。とりかえしのつかないことになります。

ところで、刑事事件では、裁判員がひきこもり・発達障害に無理解だったために、求刑より重い判決を下したことがありました。せめて、量刑判断は職業裁判官がするようにすべきでしょう。

 

発達障害でひきこもり30年の殺人事件 一審判決を破棄して減刑 障害に無理解な裁判員の問題点も

一般市民が裁判員として裁判にかかわる裁判員制度の理念は、日本の司法の民主化でした。しかし、原発訴訟や労働事件を見ていると、本当に市民の良識が求められているのは、行政訴訟や労働裁判ではないでしょうか。

本当に多数の方々が裁判員をしてくださいましたが、裁判前に必ず訓辞されるはずの「疑わしきは被告人の利益に」=無罪推定、の格言でさえ、日本人に定着し始めたとは思えません。

日本の司法の民主化は、まわりくどいようでも学校教育から始めるのが正当なやり方だと思います。

 

弁護士界では少数派の意見だと思います。

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長期間裁判は裁判官の審理に

6月22日 7時19分
長期間裁判は裁判官の審理に
 

裁判員制度の在り方を議論してきた法務省の検討会は、審理が1年を超えるような極めて長期間となる事件については裁判員の負担が重くなりすぎるなどとして、裁判官だけで審理できる制度を新たに設けることなどを提案する報告書をまとめました。

それによりますと、審理が1年を超えるような極めて長期間となる事件については、「裁判員の負担が重すぎることから対象から外すべきだという意見が大勢を占めた」として、裁判官だけで審理できる制度を新たに設けることを提案しています。
一方で、心理的な負担の大きい死刑の可能性のある事件や、被害者のプライバシーの保護が必要な性犯罪については、「社会の一員として向き合うべきだ」などという理由から、裁判員裁判の対象から外すべきではないという意見が多かったとしています。
また、死刑判決を下す際には多数決から全員一致に改めるべきだという指摘もありましたが、「全員一致を要件にすると1人の裁判員が拒否権を持つことになり、公平性が損なわれる恐れがある」などとして、多数決の維持を求める意見が多かったとしています。
このほか、報告書では裁判員を選任する際に被害者のプライバシーに配慮するよう義務づけることや、裁判員が精神的なダメージを受けることを考慮し、メンタルサポートを充実することなどを提案しています。
法務省はこの報告書をもとに今後、制度の改善や法改正を検討することにしています。

長期間で納得できたの声も

長期間の審理を経験した裁判員の中には「長い時間をかけたことで納得する結論を出すことができた」と評価する声もあります。
裁判員制度がスタートしてこれまでにもっとも長い審理となったのは、去年、さいたま地裁で行われた男性3人を殺害した罪などに問われている被告の裁判で、裁判員を選ぶ手続きから判決まで100日間に及びました。
このほか、鳥取県内の男性2人を殺害した罪などに問われている被告の裁判が75日間、大阪のパチンコ店が放火され5人が死亡した事件の裁判が60日間などとなっています。
こうしたケースでは参加できる人が限られるため、裁判所に呼び出された候補者は鳥取地裁のケースが700人、さいたま地裁のケースが330人など、通常より大幅に増えましたがそれでも辞退が相次ぎました。
また、長期間に及ぶ審理を経験した裁判員からは「負担が重すぎる」という声もある一方で、評価する意見もあります。
さ いたま地裁で裁判員として100日間の裁判に参加した林太一さん(28)は「長い時間がかかったことで裁判員たちがまとまり、納得のいく審理ができた。長 期間だからといって最初から対象外とするよりも、まずは辞退を広く認めたうえで、参加できる人がどのくらいいるかを確かめてから決めるなど、柔軟な運用を してもよいのではないか」と話しています。

専門家負担軽減の取り組みを

専門家は審理が長期間に及ぶケースでもできるだけ裁判員裁判の対象から外さず、裁判員の負担を軽くする取り組みを充実すべきだと指摘しています。
裁判員裁判の審理が長期間に及ぶケースでは、検察が死刑を求刑したり、被告が無罪を主張したりするなど、より重大で複雑な事件が多くなります。
全国の裁判所では電話での相談に応じる窓口や、カウンセリングを無料で受けられる仕組みを作っていますが、長期間審理する裁判員の精神的な負担を軽くするため、さらに取り組みを充実すべきだと指摘する専門家もいます。
元 最高裁判事で裁判員経験者で作る団体の呼びかけ人の1人でもある濱田邦夫弁護士は「国民の考え方を反映させるという制度の趣旨を考えると、長期間の審理で もなるべく裁判員が加わることができるシステムを整えたほうが良い。裁判所はむしろ裁判員に対して時間や精神的な負担をかけていることを十分に理解して、 対策をさらに充実させ、社会の理解も得られるよういっそう働きかけてほしい」と話しています。

 

 

「判例」か「市民感覚」か…戸惑いも

2013.6.20 21:17 (1/2ページ)

 尊重すべきは過去の判例か、裁判員の市民感覚か。裁判員が加わった死刑判断をプロの裁判官が初めて覆した20日の東京高裁判決は、死刑という「究 極の刑罰」を科す場合には先例との公平性を保つべきだ、との姿勢を鮮明にした。苦悩の末に導いた結論を「誤り」とされた裁判員の間に戸惑いの声も漏れる 中、専門家は「裁判員に対し、より適正な情報提供が求められる」と指摘する。

「納得いかない」

 「混乱している。ほっとしている半面、納得いかないところも…」。1審で補充裁判員を務めた都内の50代主婦は2審判決を受け、率直な心境を吐露した。

 無期懲役に減刑されたことを知った瞬間は、「救われた」と感じたという。「冷静に評議して出した結論だったが、死刑が確定し執行されたらどう気持ちを整理したらいいのか、不安だった」と明かした。

 それでも、被告が1審に続き被告人質問に応じず、新たな証拠が示されないまま判断が変更されたことには「納得いかない」というのが正直な気持ちだ。「服役を終え、すぐに殺人を繰り返した。その分の罪を背負わなければ、社会的に許されないのではないか」と首をひねる。

前科と「類似性なし」

 裁判員制度の施行後、量刑不当を理由に1審を破棄するケースは施行前の5・3%から0・6%に激減するなど、控訴審では裁判員の判断を尊重する流れにある。そうした中で高裁が死刑破棄を選択したポイントは、過去の死刑事件との比較だった。

 

 

裁判員制度見直しへ最終報告 守秘義務維持に経験者ら疑問

2013.6.22 10:03

「定義曖昧で分からない」

 「どこまで話していいのか」「秘密主義になる」。裁判員の守秘義務を現状維持とする方向性を示した法務省検討会議の最終報告書に、裁判員経験者からは疑問の声が上がった。

  裁判員法は「評議の経過や裁判官・裁判員の意見」を漏らした場合、6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処すると規定。鳥取地裁の連続不審死事件で裁 判員を務めた自営業の男性(53)=鳥取県米子市=は「定義が曖昧で、何をしゃべったらだめなのかよく分からない」と疑問を投げ掛ける。

 「経験者が発信していかないと、裁判員制度が秘密主義みたいになってしまう」と危機感を表明し、「本当に大事な部分だけを守るようにして、そのほかは自由にすればいいのではないか」と提案した。

 長野地裁の一家3人強盗殺人事件の審理に参加した長野県飯山市の会社員、我妻栄さん(50)も、規定が曖昧なために裁判員経験者が意見表明する機会が奪われているとみる。

 「はっきりしない義務を押し付けられるなら『口をつぐんでいたほうが安全』という考えになる」と指摘。「今のままでいいとは思わない。明確に線引きしてほしい」と訴える。

 裁判員制度を検証している市民団体「裁判員ネット」代表の大城聡弁護士は「市民参加をうたっている以上、経験者の話は社会全体で共有すべきだ」と強調。今後の検証作業に裁判員経験者を加えるなど広く国民の意見を参考にするよう求めた。

 

東京高裁、裁判員裁判の死刑破棄 出所後半年の強盗殺人2013年6月20日 

 妻子を殺した罪で服役を終えた半年後、強盗目的で男性を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われた無職伊能和夫被告(62)の控訴審判決で東京高裁(村瀬均裁判長)は20日、裁判員裁判だった一審東京地裁の死刑判決を破棄、無期懲役を言い渡した。
 裁判員裁判の死刑判決が破棄されたのは初めて。2011年3月の一審判決は極刑を選択した理由を「2人を殺害した前科を重視すべきだ」としていた。
 弁護側は控訴審で「被告以外の誰かによる犯行だ」と無罪を主張。検察側は控訴棄却を求めていた。
(共同通信)

 

 

みんなが裁判員になるのを嫌がってるのに民主化は遠い。

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2 コメント

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鹿鳴館時代と裁判員制度 (某臨床心理士)
2013-06-23 01:52:18
裁判員制度、最初から大反対でした。
小泉純一郎さんの時代にできたのだと覚えますが、ともかく彼のやることには裏がありそうでもあり。国民が互いに監視しあう隣組制度のようでもあり。「司法について国民が考える機会になる」、たしかそういう動機を言っていましたが、それなら、ネットや学校教育で司法の情報を伝えればすむことです。「市民感覚の反映の為」とも言っていましたが、それだと同じ金を裁判官、弁護士、検察官の教育につかえばよいことで、さらに市民に頼らねばならないとは、何のために税金がかれらの生活を支えるために使われているのか、とさえ思われます。本当に反映させたいなら、今、続行中の裁判について可能な範囲での情報をネットなどで流して、市民からコメントをもらう、というようなことでもいいのではないか、とも思います。結局、この制度を作った動機としては、誰かが言っていた、鹿鳴館時代と同様に欧米をまねたかっただけで陪審員制度をまねて裁判員制度を作ったのだろう、というのが、あたっているのかなという感じです。他に何の理由もありそうに見えませんし。国に金が無い、と言って消費税さえあげるくらいなら、裁判員制度を廃止すべきでしょう(裁判員にも報酬を払わねばならないのだから)。それに田舎にすめばわかりますが、毎日出会う人は大体顔がわかるし、被告とも顔を合わせてしまえば、こちらもすぐ覚えられてしまいうらみをかってしまう、という可能性は強いと思います。守秘義務も、たとえばバーでここまでは話してもいいとかいう基準聞いたことがありますが(具体的には忘れましたが)あれでは田舎では話は広まってしまうな、と思った記憶があります。性犯罪の被害者のプライバシーも同様で、都会感覚で決められた守秘義務だなと思われます。いろいろ面倒なのだからこんな制度さっさとやめるに越したことはありません。

>被害者のプライバシーの保護が必要な性犯罪については、「社会の一員として向き合うべきだ」などという理由から、裁判員裁判の対象から外すべきではないという意見が多かったとしています。

本末転倒ですね。「社会の一員として~」、こんなくだらない道徳理念より、被害者のプライバシーのほうがよほど大切でこの意見自体が、市民感覚からはずれているのではないでしょうか。「司法について国民が考える機会になる」って、最近の憲法改正も「憲法について国民が考える機会になる」という言葉を思い出させますが、よくもまあこんな本末転倒な詭弁がまかりとおるものだなと思います。
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裁判員裁判“批判”にも危惧を (杉山真大)
2016-07-20 09:42:25
裁判員裁判に多くの問題があることについては最早明らかなんでしょうけど、その裁判員裁判“批判”とか廃止の少なからざる部分にも危惧を抱いています。

何というのか裁判員制度を批判するあまり、裁判官や検察官の“良心”に乗っかった主張が目立ち陪審制度も参審制度も全否定、過去の(ごく僅かの!)冤罪が覆された例を引き合いに出しては過去の裁判制度でも充分・外野からの裁判批判で事足れりってのが目につくんですよね。

昨今の取り調べの“一部可視化”をめぐる問題ってのも、こうした裁判官や検察官の“良心”に乗っかった主張が背景にあるって気もしますし、(一緒にするな!と反論が来そうですけどw)裁判員裁判“批判”が反って裁判官や検察官に巧く利用されてしまってる面もあるのでは?って気もします。
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