「核共有」は、米国の核兵器を非核保有国が自国領土内に配備して運用する協定。

安倍氏はドイツ、ベルギー、オランダ、イタリアを例に挙げ「世界はどのように安全が守られているかという現実の議論をタブー視してはならない。日本の国民の命、国をどうすれば守れるか、さまざまな選択肢を視野に入れて議論するべきだ」と述べました。同時に「日本は核拡散防止条約(NPT)締約国で非核三原則もある。被爆国として核廃絶の目標に向かって進んでいくことは大切」とも強調した。

番組レギュラーコメンテーターの橋下徹氏(元大阪府知事・元大阪市長・弁護士)は「核は絶対に使ってはいけないが、核共有の議論は絶対に必要だ」と同調した。非核三原則については「持ち込ませず」の部分を見直すよう求め、今夏の参議院選挙の争点にすべきだと主張した。

一方、安倍氏は、27回に及ぶ日露首脳会談の中で、プーチン氏がNATOの東方拡大に強い不満を漏らしていたことを明らかにした。安倍氏は「(NATOへの)不信感の中で、領土的野心ではなく、ロシアの防衛、安全の確保の観点から行動を起こしているのだろう」と、プーチン氏のウクライナ侵攻決断の背景を分析した。

安倍氏は、保有の議論が進む「敵基地攻撃能力」について、「『敵基地攻撃能力』という言葉にこだわらない方がいい。軍事中枢を狙っていく。軍事をつかさどるインフラを破壊していく。基地である必要は全然ない」と指摘した。弾道ミサイル発射基地に限らず、敵の指揮統制システムの施設などに精密誘導爆弾によるピンポイントで反撃する能力を念頭に置いているとみられる。

以下、番組での主なやりとり。

安倍晋三元首相:
いま命の危険にさらされているウクライナ国民、祖国を守るため、家族を守るため、また、私たちと共有する自由、民主主義、普遍的価値を守るために戦っているウクライナ国民に連帯を表明したい。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
プーチン大統領がこれまでの日露首脳会談でNATOの東方拡大への不満を漏らしたことはあったか。

安倍元首相:
(プーチン氏は)基本的な不信感を米国に対して持っている。「NATOを拡大しないはずだったのにどんどん拡大し、ポーランドにはTHAADミサイルまで配備をしているではないか」と。その基本的な不信感の中で、プーチンとしては領土的野心ということではなく、ロシアの防衛、安全の確保という観点から行動を起こしているということだろう。もちろんそれを正当化はしない。彼がどう考えているかを正確に把握する必要はあるだろう。

松山キャスター:
首脳会談の中でプーチン大統領から「NATOが約束を守っていない」というニュアンスの発言があったのか。

安倍元首相:
何度か二人だけの時にそういう発言があった。そういう思いは強いのだろう。彼はある意味『力の信奉者』だ。

松山キャスター:
バイデン米大統領はウクライナ侵攻前早々に米軍がウクライナで軍事行動を起こすことはないと言った。この発言はプーチン大統領にどう伝わったと考えるか。

安倍元首相:
バイデン大統領もさまざまなことを考えて発言したのだと思う。しかし、プーチン大統領のような指導者を相手にする場合、最初から手の内を示すよりも、「選択肢はすべてテーブルの上にある」という姿勢で交渉するのが普通ではないかと考える。

橋下徹氏(番組レギュラーコメンテーター・元大阪府知事・元大阪市長・弁護士):
ウクライナ情勢を見てつくづく思ったのは、自分たちの国を守る力が絶対に必要だということ。ウクライナは今それで本当に苦労している。    

安倍さんが言ったように、日本が打撃力・反撃力を持つこと。米国と共同して中距離ミサイルを日本に置くことも考えなければいけない。さらに言えば、日本がいきなり核を保有するのは現実的でないにせよ、非核三原則の「持ち込ませず」は、米国と共同で(見直す)という議論をしていく。自民党はちょっと腰が引けている。この話をすると、一部メディアから思いきりたたかれるから。でも、次の参議院選挙でしっかり争点にしてほしい。日本の防衛はどの方向で行くのかと。核というものを考えていこうという方向でいくのか、いかないのか。選挙で問うてもらいたい。

安倍元首相:
「敵基地攻撃」という言葉にこだわらないほうがいい。彼らの軍事中枢自体を狙っていく。軍事をつかさどるインフラを破壊していく。基地である必要は全然ない。むしろそういう反撃力だ。先制攻撃は国際法違反だからそもそもしない。核の問題は、NATOでも例えば、ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリアは核シェアリング(核共有)をしている。自国に米国の核を置き、それを(航空機で)落としに行くのはそれぞれの国だ。これは、恐らく多くの日本の国民の皆さんも御存じないだろう。日本はもちろんNPTの締約国で、非核三原則があるが、世界はどのように安全が守られているか、という現実について議論していくことをタブー視してはならない。

橋下氏:
日本でもこれから核シェアリングの議論をしていくべきだ。NATO加盟国(の一部)は現実に核シェアリングをしており、ロシアは簡単には手を出せない。核は絶対使ってはいけないが、議論は必要だ。

安倍元首相:
かつてウクライナは世界第3位の核保有国だった。「ブダペスト覚書」で核を放棄する代わりにロシア、米国、英国が安全を保障することになっていた。国境や独立が守られるはずだったが、残念ながらそれは反故にされてしまった。もしあのとき一部戦術核を残して、彼らが活用できるようになっていれば、どうだったかという議論が今行われている。そういう意味で冷静な議論を行う。ただ、核被爆国として核を廃絶する目標は掲げなければいけないし、その目標に向かって進んでいくことは大切だ。この(ウクライナの)現実に、日本国民の命、日本国をどうすれば守れるかについては、さまざまな選択肢をしっかりと視野に入れて議論するべきだ。

橋下氏:
日本も核シェアリングの議論は絶対に必要だ。

 

 

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で市民を含め多くの死傷者が出る中、東京 渋谷では日本に住むウクライナやロシアの人たちなどが参加する抗議集会が開かれ、「戦争反対」などと声をあげました。

27日東京のJR渋谷駅前で行われた抗議集会には、SNSでの呼びかけなどに応じた日本に住むウクライナやロシアの人たちなどが参加しました。

主催者によりますと、およそ1000人が参加したということで、集まった人たちは「プーチンを止めろ」と日本語や英語で書かれたプラカードや「ウクライナに平和を」と書かれた横断幕を掲げたりしながら「戦争反対」などと声をあげていました。

参加したウクライナ人の女性は「3日前までは想像もしていなかった状況で、ウクライナにいる家族や友人はみんな不安に感じています。日本の人たちも、戦争を止めるためにできることをしてほしいです」と訴えていました。

また、ロシアで生まれ育ち日本国籍を取得した男性は「自分の生まれた国が起こした痛みや苦しみを許すことはできません」と話していました。

集会には多くの日本人も参加し、夫や子どもと参加した42歳の女性は「小さな子どもがいる現地の人たちは、どれだけ不安な思いをしているのだろうと考えてしまいます。一刻も早く平和になることを世界中の人たちが願っていると発信し続けることが大事だと思います」と話していました。

 

 

ロシア・サンクトペテルブルグで戦争反対を訴えるデモに参加し、警官に拘束される市民(AP)

ロシア・サンクトペテルブルグで戦争反対を訴えるデモに参加し、警官に拘束される市民(AP)

 ロシアのウクライナ侵攻に抗議するデモが24日から、ロシア国内をはじめ米欧や中東、アジアに広がり「戦争反対!」「ウクライナから手を引け」などの声が世界各地で上がった。(モスクワ・小柳悠志、ニューヨーク・杉藤貴浩)
 ロシア国内では24日、抗議デモが全土58都市であり、人権団体によると、1800人以上が拘束された。参加者は「戦争はダメ」「プーチン大統領は犯罪者」と訴えた。
 会員制交流サイト(SNS)などを通じて呼び掛けられた。首都モスクワ中心部では同日夜、数千人が集まり、プラカードなどを掲げ、抗議の声を上げた。当局は「違法な集会」として治安部隊を出動させ、1000人近くを拘束した。
 メディア関連企業に勤めるアレクサンドルさん(50)は「戦争は死と恐怖そのもの。軍事作戦を決めたプーチンは精神を病んでいる」と批判。大学生のニキータさん(18)は「戦争は無教養な人を熱狂させる。武力を信奉するロシアの風潮を変えたい」と話した。
 ノーベル平和賞を昨年受賞した独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ」 のムラトフ編集長は同日、プーチン氏が核兵器使用もちらつかせているとして「地球上の命を救えるかは反戦運動にかかっている」とのメッセージを発した。
米国・ニューヨークで「第三次世界大戦を止めろ」とのカードを掲げるデモ参加者(AP)

米国・ニューヨークで「第三次世界大戦を止めろ」とのカードを掲げるデモ参加者(AP)

 米国では首都ワシントンや東部ニューヨークなどで24日デモがあり、参加者はウクライナ国旗を掲げ「プーチンを止めろ」などと声を上げた。大規模なウクライナ系住民地区のあるニューヨークのロシア国連代表部付近には約300人が集合。「ウクライナはロシアではない」「第3次世界大戦を防げ」などと書かれたプラカードを手に、ウクライナへの支持を訴えた。                        
 6年前にウクライナから渡米したエリナ・ジョコワさん(35)は「母国の家族が心配で眠れない。国際社会は(ロシアがクリミア半島を併合した)2014年を繰り返さないで」と話した。

 

ロシアで広がる反戦、署名に90万人賛同 えん戦気分増大の可能性も

ネムツォフ第1副首相の暗殺現場にウクライナ国旗と同じ水色と黄色の花を供える女性=モスクワで27日、前谷宏撮影

 軍がウクライナに侵攻するロシアでは各地で「戦争反対」を訴える抗議活動が続いている。当局による強硬な取り締まりによりデモは大規模化していないが、インターネット上で反戦を求める呼びかけには90万人以上が賛同。米欧などによる経済制裁の動きは市民生活にも影響を及ぼしており、戦争が長期化すれば、えん戦気分も広がりかねない。

 2015年に暗殺されたプーチン大統領の政敵ネムツォフ元第1副首相の命日を迎えた27日、殺害現場となったモスクワ中心部の橋の上は冥福を祈る人々で埋め尽くされた。ウクライナへの連帯を示すため、同国の国旗と同じ水色と黄色の花束やリボンを持った人が目立つ。中には「戦争反対」のプラカードを掲げ、周辺で警戒する警官隊に拘束される参加者もいた。