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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

ハマスによるイスラエル市民に対する無差別攻撃は絶対に許されない。しかし、イスラエルによる「報復」名目の攻撃がパレスチナ市民に対する無差別殺戮になることも絶対に許されない。

2023年10月09日 | イスラエル・パレスチナ戦争

イスラエルは2023年10月8日、パレスチナ自治区ガザを「実効支配」するイスラム組織ハマスから7日に受けた大規模攻撃の報復として、ガザを攻撃した。空爆により団地やトンネル、モスク、ハマス幹部の住居などが被害を受け、子ども20人を含む400人以上が死亡した。ガザで7日撮影(2023年 ロイター/Ashraf Amra)

 

 

 2023年10月7日から、パレスチナ「自治区」ガザを「実効支配」するイスラム主義組織ハマスがイスラエルに数千発のロケット弾を撃ち込み始めました。

 さらに、境界を越えて侵入したハマス戦闘員とイスラエル軍による銃撃戦が続いています。

 イスラエルの地元紙タイムズ・オブ・イスラエルなどによると、イスラエル側で兵士や民間人700人以上の死者が確認されたということです。

 これに対して、イスラエル軍は報復としてガザを空爆し、ガザ保健当局によると、子ども78人を含む413人が死亡したいうことで、この数日間の戦闘だけで双方の死者は1100人を超えたことになります。

 ハマスによるイスラエルに対する攻撃はガザ地域に侵攻してきたイスラエル軍に対してのものではなく、「いきなり」イスラエルの市街地に何千発もロケット弾を撃ち込んで一般市民に対して無差別殺戮をしたわけですから、これは全く弁護の余地がありません。

 

 

 ところで、10日前に書いた

イスラエル軍に蹂躙されているパレスチナ市民にも、ロシア軍に侵略されているウクライナ市民にも、武器を取って戦う抵抗権が固有の権利=自然権として認められている。

という記事に右翼の人が

『昨日のイスラエルへの攻撃(虐殺)は、自衛の範囲と呼べるのか、それともやはり侵略となるのか、どちらの「側」から見るかによって評価が分かれそうですが、主さんはいかがでしょうか?』

と悪意のある質問をしてきたので
 
《ちゃんと本文を読んでからコメントしてください。

『パレスチナ市民の抵抗運動が批判されるのは、イスラエルの市街地にロケット弾を撃ち込んで無辜のイスラエル市民を無差別に殺戮したり、自爆テロで自分も死に相手の市民も死ぬような闘争をした場合だけであって、それはどこの国の人間がやっても無差別攻撃として国際法違反の行為です。

 それはテロとして非難されるべきですが、イスラエル軍がパレスチナ市民を攻撃し、蹂躙してきたのに対してパレスチナ市民が武器を持って抵抗することが正当化されるのは、刑法の正当防衛を想起しても容易に理解できるはずです。』

 ロケット弾を市街地に撃ち込んで何百人も無差別殺戮する行為が自衛権や抵抗権の範囲内のわけがありません。》

と回答しておきました。

 ハマスの行為について一片の擁護の余地もないことは、これで説明十分だと思います。

 

 

 さて、ロシア・ウクライナ問題とイスラエル・パレスチナ問題をパラレルに取り上げて、ウクライナには軍事支援がされるのにパレスチナにはそれがないのは不公平だという論者がいるのですが、ハマスの今回の蛮行を見ればわかるように、ウクライナ政府は良く自制していることがわかります。

 そもそも、ロシアがウクライナを侵略してきているのですから、ウクライナは自国に侵略してきているロシア軍に対してだけではなく、ロシア軍を撤退させるのに必要な範囲でロシア本土に対しても反撃することができます。

 たとえば、ロシア本国からウクライナにいるロシア軍への兵站を断つために、その輸送路や輸送基地を攻撃することは自衛の範囲内です。 

 しかし、相手の兵站を叩くことは戦略の基本ですが、ウクライナ政府は市民への攻撃はもちろんのこと、2、3の例外を除いてロシア本土への兵站攻撃もほとんどしていません。

 ウクライナ軍がロシア本土に攻撃した例は、せいぜいクレムリンに対してドローン兵器を飛ばして象徴的な攻撃をするくらいです。

 もし、ウクライナ軍がロシア市民にハマスのような無差別攻撃や戦闘員を送り込んでの市街戦をして市民を殺しまくっていたら、国連総会がロシアだけを非難した決議を圧倒的多数で可決することもないし、国際社会がウクライナを支援するわけがないのです。

 ハマスが「実効支配」しているという今のパレスチナに国際社会が軍事支援するわけもできるわけもないでしょう。

ウクライナ東部ハルキウに2日連続で攻撃 死者52人に 国連は調査団を派遣 - 最新の国際ニュース【随時更新】 (ニュース) |  無料動画・見逃し配信を見るなら | ABEMA

逆にロシアによるウクライナ市民に対する無差別攻撃が続いている。ウクライナ東部のハルキウ州では2023年10月5日と6日、2日連続でロシア軍による攻撃があり、子ども2人を含む52人の死亡が確認された。これを受け、国連は現地に調査団を派遣した。 

ロシア軍がウクライナでクラスター弾を大量に使用し、2022年の世界のクラスター弾死傷者が前年の8倍に。しかしプーチン大統領は国定教科書を刊行して侵略戦争を正当化。ロシアはもはや戦前の大日本帝国だ。

 

 

 ただし、ここで銘記すべきは、イスラエル建国の経緯とこれまでのイスラエルによるパレスチナに対する違法占領や軍事支配の歴史です。

 また、ハマスとパレスチナ自治政府とパレスチナ市民はそれぞれ違うということです。

 イスラエルは75年前の1948年5月14日に独立を宣言しましたが、英仏列強の都合でいきなりパレスチナ地域にユダヤ民族の国イスラエルが建国されたため、パレスチナ人から見れば、イスラエルの独立によってパレスチナ社会は崩壊し、多くの人が難民となったのです。

 このためパレスチナ人はイスラエルが独立を宣言した翌日の5月15日を、アラビア語で「大破局」や「大惨事」を意味する「ナクバ」の日として記憶し、自分たちの苦しみを再確認しています。

 そして、中東諸国はイスラエルを押しつぶそうとしたので1948年から中東戦争が勃発、1973年の第4次中東戦争までアメリカなどの支援を受けたイスラエルが圧勝。

 パレスチナ解放機構とイスラエルによるオスロ合意により1994年にヨルダン川西岸とガザ地域を治めるパレスチナ自治政府が設立され、2012年には国連でオブザーバー国家とされるようになり、今では国連加盟国の4分の3に近い国々がパレスチナを国家として承認しています。

 承認していないのは主に欧米日で、イスラエル国を強引に作った英仏とイスラエルの最大の支援国家であるアメリカが国連安保理常任理事国にいて、パレスチナを国家承認しないために、国際法的にパレスチナ国を「国家」と言い切れないあいまいな状態なのです。

 そんな中、今回のイスラエル攻撃の主力であるハマスはパレスチナの中で最大勢力を誇る「武装組織」で、パレスチナを「実効支配」していると言われますが、パレスチナ自治政府ないしパレスチナ国政府ではないことに注意すべきです。

ヨルダン川西岸地区で2021年3月14日、抗議運動をするパレスチナ人たちの前に立つイスラエル兵=ロイター

 

 

 そして、イスラエルが違法占領を続けていることも忘れてはなりません。

 前述した1967年の第3次中東戦争でイスラエルが勝利し、ヨルダン川西岸地区などを占領し、パレスチナ自治区となった同地区などでの軍事占領を現在も続けています。

 これは国際社会から国際法違反の違法占領だと指摘され続けていますが、イスラエル政府はユダヤ人を移住させる入植活動を進めてきたので入植者は年々増え、ヨルダン川西岸地区には50万人近いイスラエル人が暮らす事態となっています。

 ヨルダン川西岸地区のうち、パレスチナ人の自治が行われているのは、島のように点在する40%の土地だけです。残る60%には、イスラエルの入植地が130以上もつくられ、イスラエル軍の占領が続いています。

 逆にガザ地区は、全域をハマスが支配し、暫定自治政府の統治が及びませんが、イスラエル軍がフェンスで囲い込み、封鎖しています。

 つまり、パレスチナ人はイスラエル建国で押し出され支配されるようになったうえに、この60年間以上、どんどん土地を奪われ続け、追い出され続け、もしくは閉じ込められているということなのです。

 また、占領地域に残っているパレスチナ人は、イスラエルの軍事支配で日常的に人権侵害をされ、命も奪われています。

 「過激派」とか「テロ組織」などと西側からは呼ばれるハマスがパレスチナで最大勢力であり、パレスチナを「実効支配」しているという状況はハマスが武力でパレスチナ人を支配しているというよりも、イスラエルによるロシアもびっくりの人権侵害と虐殺ゆえに、ハマスがパレスチナ人から支持されてのことなのです。

 

 

 今回のハマスなどによるイスラエル攻撃は過去最大のものとなりました。

 その動機はイスラエルとサウジアラビアの接近阻止というようなことが言われていますが、その動機と目的が何であれ、無辜のイスラエル市民を何百人も殺したことは絶対に許されません。

 しかし、これに対してイスラエルが報復として、ガザ地域などのやはり無辜の一般市民を攻撃して殺すことも絶対に許されないのは同様です。

 これまでのイスラエルによるパレスチナ侵攻の歴史を振り返れば、必ずイスラエルはパレスチナ市民に「倍返し」以上のことをしてきています。

 ロシアも執拗にウクライナのインフラを狙っていますが、イスラエルはガザ地域への送電を止め、これでガザの8割の電力が失われました。これから冬に向かうのにまさに市民に対する無差別殺戮の始まりです。

 今回のハマスによるイスラエル攻撃とそれに対するイスラエルの報復だけを切り取ったら、まるでイスラエルの自衛戦争のようですが、以上概観したように、実はイスラエルはウクライナ戦争で言えば侵略国家ロシア以上の存在で、戦争犯罪も違法占領も何十年間もし続けているということを忘れてはなりません。

 岸田政権はハマスだけを非難していますが、そもそもの原因を作ったイスラエルによるパレスチナ違法な軍事占領と人権侵害の実態に鑑みて、イスラエルに対して市民への無差別殺戮をやめるように求める緊急の声明を出すべきです。

イスラエル軍ガザ地区に報復空爆 死傷者は3600人超 - 最新の国際ニュース【随時更新】 (ニュース) | 無料動画・見逃し配信を見るなら |  ABEMA

イスラエル軍の空爆で倒壊した建物の下を捜索する人々=2023年10月8日、パレスチナ自治区ガザ(ロイター=共同)

 

 

参考記事 村野瀬玲奈の秘書課広報室さんより

「パレスチナではイスラエルからの日常的な封鎖と暴力を何十年も受け続けているという歴史的いきさつを無視してこの件は語れないのですが、世界はまさにそのことを無視しているということは書いておきたいです。」

ハマス(ハマース)のイスラエルへの大規模攻撃について

 

NPT条約再検討会議が決裂 最終合意文書を葬った核保有国イスラエルに武器を輸出する安倍政権。

 

ネタニヤフ首相「トランプ大統領はイスラエルにとって望みうる最良の友」。

 

これまで何度も政権を担ってきたイスラエルのネダニヤフ政権ですが、今の政府の構成はこれまでで最も右翼的と言われています。

イスラエルによる「報復」はまだ序の口で、これからどれだけパレスチナ人を殺すことか。

国連も日本も緊急に対処すべきです。

 

 

イスラエルがガザ空爆、ハマスの攻撃に報復 死者1100人超える

Maayan Lubell、Nidal Al-Mughrabi
2023年10月9日午前 8:59 

 イスラエルは8日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスから7日に受けた大規模攻撃の報復として、ガザを攻撃した。空爆により団地やトンネル、モスク、ハマス幹部の住居などが被害を受け、子ども20人を含む400人以上が死亡した。ガザで7日撮影(2023年 ロイター/Ashraf Amra)

[エルサレム/ガザ 8日 ロイター] - イスラエルは8日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスから7日に受けた大規模攻撃の報復として、ガザを攻撃した。空爆により団地やトンネル、モスク、ハマス幹部の住居などが被害を受け、子ども20人を含む400人以上が死亡した。

ハマスの前日の攻撃では700人のイスラエル人が死亡しており、双方の死者は1100人を超えた。ハマスはまた、数十人を人質にした。

イスラエルのガラント国防相は、死者が出たほか人質が拘束された町オファキムで、「ガザ地区が払う代償は何世代にもわたって現実を変える非常に重いものになるだろう」と語った。

世界中から自制を求める声が上がったが、西側諸国はおおむねイスラエル側を支持。一方、イランや同国などが支援するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどはハマスを称賛した。

イスラエル南部では8日もハマスの武装集団とイスラエル治安部隊の衝突が続いた。

イスラエルは犠牲者について公式な数を発表していないが、国内メディアによると少なくとも700人が死亡し、子どもも含まれているという。


CNNは米国の内部メモを引用して、少なくとも3人の米国人がハマスの武装集団に殺害されたと報じた。

 

 

 

「イスラエル建国70年とパレスチナ問題」(視点・論点)

 パレスチナをめぐるユダヤ人とパレスチナ・アラブ人の対立は、1世紀以上に及んでいます。このため双方のカレンダーは、沢山の記念日で埋まられています。多くの記念日は、一方にとって祝日ですが、他方にとっては苦しみや怒りを象徴する日です。
イスラエルの独立記念日はその最たるものでしょう。

イスラエルは70年前の1948年5月14日に独立を宣言しました。イスラエルはユダヤ歴で独立記念日を祝うため、今年は4月18日から19日にかけて、記念の行事が行われました。
 しかしパレスチナ人から見れば、イスラエルの独立によって、パレスチナ社会は崩壊し、多くの人が難民となりました。このためパレスチナ人はイスラエルが独立を宣言した翌日の5月15日を、アラビア語で「大破局」や「大惨事」を意味する「ナクバ」の日として記憶し、自分たちの苦しみを再確認しています。

 さらに今年は、新しい問題が加わりました。イスラエル独立70周年に合わせて、アメリカが5月に、イスラエルにあるアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転することを計画しているからです。トランプ大統領は4月18日、イスラエルの独立記念日を祝福するメッセージとともに、「大使館のエルサレム移転を楽しみにしている」とツイッターに書き込みました。
イスラエルはこの移転計画を大歓迎していますが、パレスチナ側は「国際法違反」と強く反発しています。

 パレスチナ側の怒りを反映し、ガザ地区では3月30日に住民の大規模な抗議集会が開かれました。この時、イスラエル軍の発砲により、少なくともパレスチナ人16人が死亡し、1400人以上が負傷しました。
ガザ地区は2007年以来、すでに10年以上もイスラエルによって封鎖されています。集会は封鎖に抗議するとともに、パレスチナ難民の帰還実現を求めたもので、主催者は「ナクバ」の日、つまり5月15日まで集会を続けると宣言しています。
 実際、最初の集会があった日がイスラム教の礼拝日に当たる金曜日だったため、それ以降、金曜日ごとに抗議行動が行われ、すでに合計で30人以上の死者が出ています。
 
 このように今年はパレスチナ問題にとって大きな節目の年です。しかし、和平プロセスをめぐる状況は、ここ数年で大きく変わりました。
かつてアラブ諸国は、パレスチナの解放を「アラブの大義」と位置づけ、イスラエルと対決してきました。しかし今や、主要なアラブ諸国は、むしろイスラエルとの関係拡大に熱心です。

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サウジアラビアのムハンマド皇太子は、4月初めのインタビューで、「サウジアラビアとイスラエルは共通の利益を持っている」と述べ、さらにイスラエル国民はパレスチナ人と同様に、土地に対する権利を有している、とイスラエルにきわめて好意的な姿勢を示しました。
 サウジアラビアなどがイスラエルに急接近している要因は、中東情勢の変化です。オバマ政権時代から、アメリカは中東への関与を弱めています。トランプ政権は最近、化学兵器の使用を理由にシリアを軍事攻撃しましたが、限定的な作戦で、中東からむしろ撤退しつつあります。
その結果、中東地域には力の空白が生じ、その空白を利用して、イランが影響力を強めているという懸念が、アラブ諸国とイスラエルの両方で強まっています。つまりサウジアラビアなどとイスラエルは、イランという共通の脅威に対抗するため、水面下で安全保障上の協力を拡大しています。

 和平プロセスをめぐるもう一つの変化は、イスラエルのユダヤ人も、占領下に住むパレスチナ人も、いずれも和平への期待を失ってしまったことです。現在の和平プロセスは1993年に結ばれたパレスチナ暫定自治合意、通称、オスロ合意に基づいています。しかし25年を経て、和平プロセスはすでに破たんしたと見られています。

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昨年12月に、イスラエルのユダヤ人と、占領地のパレスチナ人の両方を対象に実施された世論調査結果によれば、イスラエルとパレスチナ国家との共存を目指す二国家解決案に関し、パレスチナ人、ユダヤ人ともに賛成と反対がほぼ同数で、大差はありません。さらに二国家解決案の実現可能性については、両方の社会で「もはや不可能」という回答が多く、しかもパレスチナ人の場合、60%が悲観的な見方をしています。
オスロ合意以降の和平プロセスが破たんした背景には、暴力の応酬や相互不信、入植活動の継続、パレスチナ側の分裂など、さまざまな理由が指摘できます。トランプ大統領のエルサレム政策が象徴しているように、アメリカがずっとイスラエル寄りの姿勢をとってきたことも、破たんの一因です。

ではパレスチナ問題の将来はどうなるのでしょうか。最近、改めて問われているのが、ヨルダン川西岸とガザ地区を含む、イスラエルのすべての支配地域における、ユダヤ人とパレスチナ人の人口バランスです。

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このグラフはパレスチナ中央統計局が2015年に発表した、二つの民族の人口推移の予測を示しています。これによれば、2016年まではユダヤ人がパレスチナ人を上回っていました。しかし、2017年にはほとんど同数となり、2018年以降はパレスチナ人の人口がユダヤ人を上回り、しかもその差が次第に広がると予想されています。
今年3月、占領地行政を担当しているイスラエル軍当局がこのデータをもとに、人口数ではすでにパレスチナ人がユダヤ人を上回っていると報告し、議論となりました。特に右派政党は、パレスチナ中央統計局の数字は、信用できないとして、軍の報告を批判しました。
しかしパレスチナ社会の方が、人口増加率が高いことはよく知られた事実です。伝統的に子供が多いことに加え、「いずれユダヤ人人口を上回ろう」という意識がパレスチナ社会全体にかなり広く行きわたっています。
「産めよ、増やせよ、地に満ちよ」という言葉はもともと、ユダヤ教の聖典である旧約聖書の言葉ですが、パレスチナ人がこの戦略を実践してきたわけです。

宗教上、あるいは民族主義的なイデオロギーに基づき、占領地からの撤退に反対し、入植活動を推進してきた右派政党は、イスラエルの支配地域で、ユダヤ人が少数派に転落するという予測を、決して認めたくないようです。この予測の正否は別にしても、約470万人のパレスチナ人がすでに50年以上にわたって占領下に置かれていることは事実です。
特にガザ地区では、200万人近いパレスチナ人が10年以上も封鎖状態に置かれています。今年3月に行われた調査では、ガザ地区住民の回答者の45%が、もし機会があれば外国に移住したいと答えています。

イスラエルはこの70年間で素晴らしい発展を遂げてきました。ハイテク技術は世界をリードし、多くの日本企業がイスラエル企業と提携しています。その一方で、パレスチナ人の苦しみの象徴である「ナクバ」もまた、70周年を迎えています。二国家解決案に基づく和平実現の可能性が遠のく中、パレスチナ問題は今後、人口問題を焦点に新しい展開をしていくように思われます。

 

 

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5 コメント

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Unknown (12434)
2023-10-09 13:15:54
管理人様

この記事は、全ての日本人が読むべき必読の素晴らしい内容だと思います。
返信する
おひさしぶりです (raymiyatake)
2023-10-09 15:57:51
過分のお褒めの言葉、痛み入りますm(__)m
返信する
Unknown (ロハスな人)
2023-10-09 19:58:07
イスラエル軍の侵略や虐殺に抵抗する権利はあっても、『イスラエルの一般市民を攻撃』するのはやはり『明白な国際法違反』で、日常茶飯事にパレスチナ(ガザ)市民を虐殺しているイスラエル軍と同列の忌避すべき行為なのは間違いありません。

そして、(宮武さんもご危惧しておられるように)イスラエル軍は“反撃”でハマスはもちろん、パレスチナ市民の虐殺も行うだろうと予測されますので、『双方の戦闘行為を厳しく非難』すると同時に、本来は国連が『停戦を斡旋』した後、和平交渉に動くのが筋でしょう。
(※現場に“国連査察部隊”を派遣して、『現場検証』と『停戦維持』を保つことも忘れてはいけないですね。)

※※停戦斡旋ではなく、世界で唯一“国際法違反の原発攻撃”を行った『テロ国家』イスラエルを何がなんでも支援するアメリカ・バイデン政権の『“アメリカの敵”には厳しく、“アメリカの友達”には激甘な姿勢』も相変わらず酷いものです。

(※アメリカの“利権友達”の筋が通らない岸田政権の“汚染水排出”も徹底的に擁護していますからね。)

※宮武さんの常に“冷静かつ公平に”記事を書こうとされるご姿勢には本当に頭が下がります。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28407040R20C18A3EAF000/
☆イスラエル、07年のシリア原子炉空爆認める
イランけん制の狙いか
2018年3月21日 日経

【カイロ=佐野彰洋】イスラエル軍は21日、2007年9月にシリア東部で原子炉とみられる施設を空爆、破壊したことを初めて公式に認めた。機密指定を解除し、当時の情報や攻撃対象の写真などを公開した。リーベルマン国防相はイスラエルを脅かす「敵の意欲は近年拡大しているが、軍の力も増強している」と述べ、シリア内戦で存在感を増すイランのけん制という狙いを示唆した。
返信する
Unknown (津木野宇佐儀)
2023-10-10 03:44:15
それでも「武器をもって闘う」のをよしとされますか?
返信する
申し訳ありません (津木野宇佐儀)
2023-10-13 01:36:33

の書き込み、あさはかでした。
謝罪します。
返信する

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