注目を集めた大阪府・市議選は、いずれも大阪維新の会が第1党の座を守ったが、過半数に及ばなかった。大阪市を特別区に再編する大阪都構想を巡る民意は二分しており、維新は今後、その是非を問う5月の住民投票に力を注ぐ。憲法改正に前向きな維新が勢いを増せば、参院選後の改憲を念頭に置く自民党と連携する可能性もあり、今後の国政にも影響しそうだ。

 「中身を理解していただいたら、都構想で一般の皆さん方のデメリットはないと思う。中身が理解されれば必ず支持は広がると思っている」

 大阪維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事は12日夜のNHK番組で、神妙な顔つきで述べた。府議会(定数88)で42議席、大阪市議会(同86)で36議席を獲得。いずれも第1党を守ったものの、都構想賛成へ雪崩を打つ世論をつくれなかったためだ。

 大阪では、国政の与野党対立の構図と異なり、府議、大阪市議選とも、第1党の維新に、自民、民主、公明、共産などが挑む構図だった。

 都構想を掲げた橋下氏が2010年に立ち上げた大阪維新の会は、前回の府議選で過半数を獲得。都構想推進の原動力となってきたが、維新の政治手法への反発などから党を離れる議員が相次ぎ、13年末に過半数を割った。その「奪還」が今回の目標だった。

 橋下氏が府議会の議席にこだわったのは「力の源泉」だからだ。大阪市の住民投票で賛成多数を得た場合、都構想の実現に向けた主舞台は府議会になる。今は市が管轄する市営地下鉄の民営化のほか、府と特別区の財源配分の決定権も府議会が握ることになる。

 来年の参院選への立候補を期待する党内の声も根強いなか、維新幹部は「府議会が安定すれば橋下氏の仕事は『残務処理』になる。出る、出ないで国政を揺さぶれる」と解説する。

 橋下氏は住民投票で賛成多数を得られれば、今冬の市長選に立候補して移行を見届けると表明している。選挙戦の最終盤ではこう強調していた。

 「僕は住民投票で負けたら、政治家を辞める」

■都構想、賛否競る

 朝日新聞社は12日、大阪市内の60投票所で大阪府・市議選の投票を終えた有権者に出口調査を実施し、2082人から回答を得た。

 調査結果によると、大阪都構想への賛成は48%、反対は47%と、ほぼ並んだ。

 支持政党別に都構想の賛否をみると、維新の党の支持層は賛成が92%。都構想に反対している自民党の支持層は反対が67%の一方、賛成も28%だった。党の姿勢にかかわらず、一定の自民党支持層が都構想に理解を示しているとみられる。

 都構想に反対しながら住民投票の実施に協力した公明党の支持層は賛成が21%で反対は71%。無党派層は反対が58%に上り、賛成の33%を大きく上回った。

 住民投票については、「必ず行く」と答えた人が79%に上り、「できれば行きたい」が16%、「行かない」が3%。「必ず行く」と答えた層では賛成が51%、反対が46%だった。

■安倍首相側、改憲への「援軍」期待

 安倍晋三首相は統一地方選を控え、政府関係者に「大阪で維新がどうなるか見極めてほしい」と語るなど、とりわけ大阪府・市議選を注視してきた。憲法改正に積極的な橋下氏が率いる大阪維新の会が勢いを保つかどうかが、来夏の参院選の行方や政権の改憲戦略に直結するとみているからだ。

 橋下氏は「改憲は絶対に必要だ。できることがあれば何でもやる」と明言している。しかし、大阪都構想の是非を問う5月の住民投票を前に、市長としての対応を優先し、国政とは距離を置く姿勢を示していた。首相側には、都構想の問題にめどがつけば、橋下氏が国政政党である維新の党内で再び発言力を強め、改憲に向けた「援軍」になるとの期待感がある。

 維新側にも、関西中心に根強い人気がある橋下氏については「参院選で比例で出てもらいたい」(橋下氏に近い維新議員)と、国政転身を望む声がある。

 仮に参院選で維新と自民が一定の議席を獲得し、公明党を巻き込めば、3党を中心に憲法改正の発議に必要な3分の2の勢力が衆参にできる可能性もある。安倍首相と橋下氏の関係は今後も、憲法改正の動きと絡む焦点となりそうだ。

 

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 〈大阪都構想〉 大阪市をなくし、東京23区のような特別区に再編する制度改革。橋下徹市長が大阪府知事時代の2010年から提唱している。

 都構想案は、市を五つの特別区に分け、広い地域に及ぶインフラ整備など広域行政の権限を府に集める一方、福祉や教育など身近な住民サービスは特別区が担う。橋下氏は最終的に「大阪府」を「大阪都」とすることをめざしており、「都構想」としている。

 都構想への賛否を問う住民投票は、4月27日告示、5月17日に投開票される。大阪市内の20歳以上の約214万8千人が有権者になる。

 

「大阪都構想」 賛成52% 反対48%

4月12日 20時09分 NHK
 
 
今の大阪市を廃止して5つの特別区を設ける、いわゆる「大阪都構想」に対する有権者の意識を探るためNHKが12日、行った調査では、「大阪都構想」に「賛成」と答えた人が52%、「反対」と答えた人が48%でした。
NHKは、今の大阪市を廃止して5つの特別区を設ける、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票を来月に控えるなか、大阪府議会議員選挙と大阪市議会 議員選挙の投票を終えた、大阪市内、40か所の投票所で有権者3980人余りを対象に調査を行い、61%に当たるおよそ2450人から回答を得ました。
一方、11日までに大阪市内の有権者のおよそ11%が期日前投票を済ませていますが、これらの方々は調査の対象にはなっていません。
「大阪都構想」への賛否を尋ねたところ、「賛成」が52%、「反対」が48%でした。
「賛成」と答えた人に理由を尋ねたところ、「二重行政の解消」が66%、「大阪の経済成長」が25%、「支持する政党が賛成している」が4%でした。
「反対」の理由としては、「大阪市の存続」が42%、「議論が不十分」が39%、「支持する政党が反対している」が9%でした。
また来月に予定されている住民投票に行くかどうかを尋ねたところ、「行く」が86%、「行かない」が2%、「まだ決めていない」が12%でした。
大阪府と大阪市に取り組んでもらいたい課題について尋ねたところ、「大阪経済の活性化」が34%、「医療・福祉の充実」が32%、「教育問題」が12%、「行財政改革」が11%、「大都市制度の議論」が10%、「観光産業の振興」が1%でした。
大阪市の橋下市長を支持するかどうかを尋ねたところ、「支持する」が56%、「支持しない」が44%でした。
「大阪都構想」に「賛成」と答えた人は、男性で53%、女性で50%。「反対」と答えた人は、男性で47%、女性で50%でした。
また年代別に見てみますと、いずれも多い順に「賛成」と答えた人は、30代で61%、20代と40代で56%だったのに対し、「反対」と答えた人は、70代以上で56%、50代で49%、60代で47%でした。
さらに大阪市の橋下市長を「支持する」と答えた人のうち、90%が「賛成」だったのに対し、「支持しない」と答えた人の96%が「反対」でした。
来月に予定されている住民投票に「行く」と答えた人のうち53%が「賛成」だったのに対し47%が「反対」でした。
また、支持政党別に見てみますと、維新の党の支持層は97%が「賛成」、3%が「反対」でした。
自 民党の支持層は、68%が「反対」、32%が「賛成」、民主党の支持層は87%が「反対」、13%が「賛成」、公明党の支持層は75%が「反対」、25% が「賛成」、共産党の支持層は85%が「反対」15%が「賛成」でした。また、支持する政党がない、「無党派層」は55%が「反対」45%が「賛成」でし た。