海老床
昔は、床屋さんの事を、髪結床、床、なんて言ったんですが、入り口の障子のところに、 達磨の絵が書いてあって、達磨床、海老の絵が書いてあって、海老床なんてんで、また、 この海老の絵が上手く書いてあったんだそうですね、だから通りすがりのやつが。
町人壱「おおい、源ちゃん源ちゃん、ええこの海老床の海老、上手く書いてあるなぁ。」
町人弐「本当だ、上手く書いてあるなぁ。」
町人壱「まるで生きてる様だな。」
町人弐「死んでるな。」
町人壱「お、この野郎、まともに逆らうなよ、俺が生きてるって言ったら、おめぇも生き
てるって言え。」
町人弐「お前はねそれがいけない、これは絵なんだから、生きてる訳ない、死んでるよ。」
町人壱「生きてる。」
町人弐「死んでる。」
町人壱「生きてる。」
町人弐「死んでる。」
町人壱「生きてる、しょうがねぇな、あ、隠居さんが来た、隠居さんに聞いてみよう、ね
ぇ隠居さん。」
隠居「なんだい。」
町人壱「この海老床の海老、上手く書いてありますねぇ。」
隠居「おお、本当だ、上手く書いてあるなぁ。」
町人壱「生きてる様ですよね。」
隠居「いや、生きちゃいないな。」
町人弐「やっぱり死んでますよね。」
隠居「いや、死んでもいないな。」
町人壱「じゃ、この海老、どうなってます。」
隠居「患ってるよ。」
町人弐「患ってる。」
隠居「よーく見てご覧、ちゃんと、床についてる。」