ブロック塀の灰色に 白い四角形がペンキで描かれた
四辺の細い線はほぼ正方形に引かれ 一辺が7~80㎝の長さだった
その四角形めがけ ボールを投げる少年など視たことはなく
何のため 誰が描いたのだろう
小さなぼくは探偵となり 学校から帰ると
窓から見える四角に変化がないか観察を続けた
だが雨の季節が訪れ ぼくの窓から白い四角が視られなくなると
探偵はぼくの身体を捨て 消えてしまった
あの四角形が ぼくと同じように少々疲れた姿を現したのは
それから20年も経ったある日のことだ
喧しい鳥たちの鳴く樹の向こうに 白い四角はくすんだ青空を
ぼんやりと眺めていた
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