かたむく暗箱

空想の暗室

ブロック塀の灰色に

2006-01-26 22:52:44 | 写真と虚言
ブロック塀の灰色に 白い四角形がペンキで描かれた 
四辺の細い線はほぼ正方形に引かれ 一辺が7~80㎝の長さだった 
その四角形めがけ ボールを投げる少年など視たことはなく 
何のため 誰が描いたのだろう 

小さなぼくは探偵となり 学校から帰ると 
窓から見える四角に変化がないか観察を続けた 
だが雨の季節が訪れ ぼくの窓から白い四角が視られなくなると 
探偵はぼくの身体を捨て 消えてしまった 

あの四角形が ぼくと同じように少々疲れた姿を現したのは 
それから20年も経ったある日のことだ 
喧しい鳥たちの鳴く樹の向こうに 白い四角はくすんだ青空を 
ぼんやりと眺めていた 

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