我らが与太郎さんは、その日もボーっと、突っ立っておりました。
「おい、与太、与太ってんだよ」
「ん? なあに」
「何じゃねえよ。そんなところに大口開けて突っ立って、何やってるんだよ」
「えぇ。ほら、天気がいいだろ。こうしてると、ノドの奥までよく陽があたる」
「ノドの日干ししてんのか? くだらねえことしてやがんな相変わらず。ん? なんだおめえ、顔が赤いじゃねぇか。どうした」
「ああ、さっき角の酒屋さんの掃除手伝ったら、ご苦労さんってんで、番頭さんが酒の粕くれたん。それ食べたら、あたい、ぽーっとなっちまって」
「てっ。いいわけぇもんが、酒の粕なんぞ食って赤くなってるんじゃねえやな。そういう時はな、うそでもいいから、『酒を飲んだ』と、こう言ってみろい。粋ないいわけぇもん言うことに聞こえるじゃねえか」
「え、粋ないいわけぇもんに聞こえる? そうかな。うん、わかったどうもありがとう。・・・へへへ。いいこと聞いちゃったな。誰かにためしてみたいね。
あ、ゲンちゃんだ。ゲンちゃーん」
「ん? おお、与太じゃねえか。どしたい」
「あのさ、ゲンちゃん、今日のあたい、変じゃない?」
「変? ・・・いや、よかった。よくぞそこに気がついたな。いつか教えてやろうと思ってたんだ。おめえは変だよ。もうずっと変だ」
「違うよ、そうじゃなくて、あたい顔が赤いだろ?」
「うん? ああ、そう言われてみると赤いな。なんか悪いもんでも拾い食いしてあたったか?」
「ちがうよぉ。あたい、お酒飲んだんだよ」
「えぇ? おめえが? 酒飲んで赤くなってるぅ? でかした! そうでなきゃいけねえよ、わけえもんはな。で、どれだけ飲んだんだよ」
「え?」
「いやだから、どれだけ飲んだんだか、聞いてるんだよ」
「え、いや、どれだけって。。。大きいのがこれくらいで、小さいのがこれくらい・・・」
「ははぁ。おめえ、さては酒の粕食ったな」
「えぇ。ずるいなゲンちゃん、見てた?」
「見てやしねえよ。見てやしねえけど、これくらい、なんて言っちゃったらわかっちゃうじゃねえか。そういうときにはな、これくらいのお猪口でもって、5杯とか6杯、ぐっとやりましたって、そう言ってみろ。酒飲んだふうに聞こえるじゃねえか」
「ふーんそーかー。どうもありがと。・・・いいこと聞いちゃったな。また誰かに試してみよう。
あ、おばさんだ。おばさーん」
「あら与太ちゃん。どしたの?」
「おばさん、あたいの顔、赤いだろ」
「あらほんと。またなにか拾い食いしてあたったの?」
「ちがうよ。誰もわかってくれないんだな。あたいね、お酒飲んだんだよ」
「え! まぁやだよ、この子は。若いうちから酒なんぞおぼえて」
「おばさん、どれくらい飲んだか聞いてください」
「え、そうなの? じゃあ、どれくらい飲んだの?」
「へへへ。きたきた。いくよ? これくらいのお猪口でね。5杯と6杯、ぐっと飲んだんだよ」
「5杯と6杯って、11杯かい? やだよー、この子は、本当に! まあ飲んじまったもんはしょうがないけど。でもね、冷やは身体に毒だよ、ちゃんと燗をして飲んだのかい?」
「ううん。焼いて食った」
かき麿
「おい、与太、与太ってんだよ」
「ん? なあに」
「何じゃねえよ。そんなところに大口開けて突っ立って、何やってるんだよ」
「えぇ。ほら、天気がいいだろ。こうしてると、ノドの奥までよく陽があたる」
「ノドの日干ししてんのか? くだらねえことしてやがんな相変わらず。ん? なんだおめえ、顔が赤いじゃねぇか。どうした」
「ああ、さっき角の酒屋さんの掃除手伝ったら、ご苦労さんってんで、番頭さんが酒の粕くれたん。それ食べたら、あたい、ぽーっとなっちまって」
「てっ。いいわけぇもんが、酒の粕なんぞ食って赤くなってるんじゃねえやな。そういう時はな、うそでもいいから、『酒を飲んだ』と、こう言ってみろい。粋ないいわけぇもん言うことに聞こえるじゃねえか」
「え、粋ないいわけぇもんに聞こえる? そうかな。うん、わかったどうもありがとう。・・・へへへ。いいこと聞いちゃったな。誰かにためしてみたいね。
あ、ゲンちゃんだ。ゲンちゃーん」
「ん? おお、与太じゃねえか。どしたい」
「あのさ、ゲンちゃん、今日のあたい、変じゃない?」
「変? ・・・いや、よかった。よくぞそこに気がついたな。いつか教えてやろうと思ってたんだ。おめえは変だよ。もうずっと変だ」
「違うよ、そうじゃなくて、あたい顔が赤いだろ?」
「うん? ああ、そう言われてみると赤いな。なんか悪いもんでも拾い食いしてあたったか?」
「ちがうよぉ。あたい、お酒飲んだんだよ」
「えぇ? おめえが? 酒飲んで赤くなってるぅ? でかした! そうでなきゃいけねえよ、わけえもんはな。で、どれだけ飲んだんだよ」
「え?」
「いやだから、どれだけ飲んだんだか、聞いてるんだよ」
「え、いや、どれだけって。。。大きいのがこれくらいで、小さいのがこれくらい・・・」
「ははぁ。おめえ、さては酒の粕食ったな」
「えぇ。ずるいなゲンちゃん、見てた?」
「見てやしねえよ。見てやしねえけど、これくらい、なんて言っちゃったらわかっちゃうじゃねえか。そういうときにはな、これくらいのお猪口でもって、5杯とか6杯、ぐっとやりましたって、そう言ってみろ。酒飲んだふうに聞こえるじゃねえか」
「ふーんそーかー。どうもありがと。・・・いいこと聞いちゃったな。また誰かに試してみよう。
あ、おばさんだ。おばさーん」
「あら与太ちゃん。どしたの?」
「おばさん、あたいの顔、赤いだろ」
「あらほんと。またなにか拾い食いしてあたったの?」
「ちがうよ。誰もわかってくれないんだな。あたいね、お酒飲んだんだよ」
「え! まぁやだよ、この子は。若いうちから酒なんぞおぼえて」
「おばさん、どれくらい飲んだか聞いてください」
「え、そうなの? じゃあ、どれくらい飲んだの?」
「へへへ。きたきた。いくよ? これくらいのお猪口でね。5杯と6杯、ぐっと飲んだんだよ」
「5杯と6杯って、11杯かい? やだよー、この子は、本当に! まあ飲んじまったもんはしょうがないけど。でもね、冷やは身体に毒だよ、ちゃんと燗をして飲んだのかい?」
「ううん。焼いて食った」
かき麿
砂糖をチョッと付けると更に旨い。
子供のころの記憶が蘇えります。
最近はやってないなー。
噛まなくていい方にいっちゃってるからかな。
前に誰かやってましたよね?
覚えようっと!
関係ないけど、私は日本酒がダメです。他のお酒は大丈夫ですが、日本酒は酔っぱらってしまい、今「日本酒禁止令」が出ています。
だれです?「おめーは何飲んでも一緒だ」てえ人は!
>てあとろさん
実際憶える際には、太助先生に相談してくださいね。ここで書いているのは参考書ですので、読み物用に少しずつ内容を変えてあります。
>安呑さん
酒粕を焼いたのって食べたことないんですよね。
それにしても、お二人ともあれだけ飲んで酔っ払ったのを日本酒のせいにしては、日本酒が気の毒だと・・・(笑)
たしかにアル添してある日本酒は、悪酔いしやすいみたいですけどね。