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プロ野球 OB投手資料ブログ

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平井誠一

2014-12-28 11:11:03 | 日記
1962年

小倉中学にはいったばかりのころグラブを買ってもらった。野球の盛んな小倉のこと、平井少年もほしいほしいと思っていたグラブを手にするとさっそく野球部に籍を置いた。だがチビの悲しさ、一二年生のころはボール拾いばかり、三年生になってやっと三塁のポジションを与えられたぐらいで、中学時代は普通の野球好きな少年と少しも変りなかった。小倉高校に進学すると野球から縁が切れた。野球部員としてやっていける自信がなかったからだ。そして二年生のとき、家庭のつごうで中退した。本格的に野球に取り組んだのはノンプロ西部ガスへ入社してからのことだ。三番で三塁手。中軸選手として大いに期待されたものだ。しかしこの西部ガスは軟式、それもスポンジ・ボールのチームだった。国体出場四回で昨年は準優勝、ことしは四位という輝かしい成績を残しているが、まさかの軟式の野球のチームからプロ野球選手が生まれるとはだれひとり考えなかった。近鉄の瓜生スカウトと西部ガスの米田監督は顔見知りだった。「オレのとこの平井っていうやつ、おもしろくなりそうだぜ」「フン、いっぺん見てやるか」そんなていどの知識で平井を見た瓜生スカウトは、一目でこいつはモノになりそうだと見抜いた。七月はじめごろ平井は瓜生スカウトに「プロ野球を見にいこう」と誘われた。なんの気なしにいわれるままについて行った先が大阪球場。瓜生スカウトは約束どおり南海ー近鉄戦を見せてくれたが、もう一つおまけがあった。それは試合前の練習に平井を参加させたことだ。別当監督、岩本、木塚コーチら蒼々たる顔ぶれの前で、このルーキーはあがりっぱなし。生まれてはじめて握った硬球を投げてみるとシュートしてダメ。岩本コーチのノックを受けたら打球のスピードに押されてクタクタ。なにがなにやらわからぬうちにテストが終わっていた。自分がまさかテストを受けさせられるとは思っていなかったので、たった一日の練習で「できるだけ早く出てきてくれよ」といわれたときはキツネにつつまれた気持ちになったそうだ。まさかという気持が先に立ち、軟式しか経験のない自分が、硬式の、それも最高の技術が要求されるプロの選手になれるとは思っていなかったのだ。それがたった一度のテストでOK。平井は半信半疑のうちに大阪をあとにした。「いまから考えてみるともうすっかり話ができていたようです」と平井が話していたが、帰郷すると身の回り品を持って香椎球場で行われていたウエスタンの試合に参加、そのままチームに合流して藤井寺の合宿へはいってしまった。八月一日のことである。
テスト生だから契約金なし、そのうえ月給四万五千円という最低クラスのプロ生活がはじまった。ノンプロ時代の給料は月額一万五千円。それからみるとずいぶんましだったが、それでもプロ選手としてはボーダー・ラインの給料だ。安物のローリングのグラブとバットを買い、食費の不足分に充当すると四万五千円の初任給はアッという間に消えた。プロ生活四カ月で背広一着こしらえたのが精いっぱい。別当監督から「プロだからもう少しいいグラブを買え」といわれながら、いまだにそれができないのもムリはない。しかし平井にとって好きな野球を思い切ってやれるだけでじゅうぶん楽しかった。毎日毎日がおもしろくてしようがありません」と野球一途に打ち込んだ。むろん苦しいことも多かった。慣れない硬式のボールに一日も早くなじもうと人知れず苦労した。軟式と硬式で違うのはまずスローイング。木塚コーチの指導をかみしめながら合宿へ帰ってから鏡に向かい、シャドー・プレーをくり返した。バットスイングは一日も休んだことがなかった。他の選手が寝静まっても藤井寺球場のスタンドの下に設けられた練習場でバッティング・マシンを相手にただひとり打撃練習を続けた。赤々と照らし出された練習場。黙々とバットを振る平井の姿ープロ野球のきびしさがヒシヒシと感じられた。1㍍79、75㌔、肩幅のがっちりした選手だ。それが入団一か月後にはゴソッと体重が減った。たまたま九州の友人が訪れたとき、やせた平井をみて驚いた。ファームで練習、レギュラーの練習手伝い、かけ持ちと不慣れが重なってエネルギーを消耗、さしもタフな平井も当初はついていけなかったようだ。だが四か月たったいま、ようやくプロの水に慣れてきた。「硬球にだいぶ慣れてきたが、まだまだです。第一、ゴムのボールとではスピードが違います」目標はという質問に「なんていったらいいかなあ」と二度も三度もくり返し、最後はテレてことばにならなかった。

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