1988年
プロの選手だったら、賞と名のつくものならどんなものでも欲しい。その賞の価値が高ければ高いほど、選手の評価も高くなる。最優秀選手賞(MVP)は、その名の通り賞の中で最高の勲章。それを手にした選手が光り輝くのは当然のことだ。落ち着きが違う。よくタイトルが選手を大きくする、と言われるが、山倉を見ていると、ちょっとした仕草にも貫禄のようなものがついてまわっている。もともとどっしりと構えているタイプだが、今年はことのほか頼もしく映る。若手選手にかけるなにげない言葉にも説得力が伴う。チームのレギュラーとしては中畑、篠塚らとともにもうベテランの域に達したのだから、立場から考えれば当然かも知れない。捕手は女房役と言われ、受け身の立場に考えられがちだが、江川が抜けた今年はむしろ亭主のように投手たちを操縦していく立場に立たなければならないだろう。桑田、水野、槙原ら投手陣の中心がすっかり若返り、それに実力は折り紙つきとはいえ、日本の事情について白紙の状態のガリクソンと、いわばあなたまかせの投手たちがつぎつぎにマウンドに登る。桑田にしろ、水野にしろ昨年までは大黒柱の江川を手本にし、困ったときはなんでも頼り形でピッチングを覚えてきたが、今年からはそれが出来ない。同じ投手仲間に頼れる船外がいないとなれば、目は自然とリード役の山倉に向く。このあたりのカジ取りをどうこなしていくかが、今年の山倉に課せられた重要な役目だ。「巨人の正妻」の座に長く座っている山倉は、試合中によく冷たい顔を見せる。例えばサイン違いの球がきた時など、もうやってられないといった態度を見せる。だが他人の家の事情は中にいた人にでも聞いてみないとよく分からないもので、現役としてもコーチとしてもよく接してきた巨人OBで解説者の堀内恒夫氏によるとまったく話は逆だ。山倉は、投手がミスを犯した時でも自分の責任だとし、常にピッチャーたちをかばっているのだと言う。よくホームランなど打たれた後、ベンチに帰ると、監督やコーチから「どんな球を打たれたんだ」と詰問される。巨人の歴代の捕手の中には、こんな時「外角へ投げろと指示したのに真ん中に投げてきて」などと投手の責任を強調する人がいたが、山倉は違う。たとえそれが失投の結果だったとしても「いいコースにきたのにバッターに読まれていたのかな。リードがまずかった」と常に責任をかぶっている。試合中に冷たい顔が出るのは、これだけかばってやっているのにまた同じミスをしたので、オレの気持ちも少しは知れ、という態度が出てしまうということだ。無理もないことだがなお一層の冷静さと我慢ー唯一の注文だ。
昨年MVPを獲得して、今年はキャンプから練習に取り組む姿勢が違う。若手のシリをたたき、自らも大声を張り上げて中畑がもうひとり現れたよう。「全員を引っぱるつもりでやりたい。声を出していると自分の気持ちも積極的になるんです」より攻撃的な捕手へ変身か。
プロの選手だったら、賞と名のつくものならどんなものでも欲しい。その賞の価値が高ければ高いほど、選手の評価も高くなる。最優秀選手賞(MVP)は、その名の通り賞の中で最高の勲章。それを手にした選手が光り輝くのは当然のことだ。落ち着きが違う。よくタイトルが選手を大きくする、と言われるが、山倉を見ていると、ちょっとした仕草にも貫禄のようなものがついてまわっている。もともとどっしりと構えているタイプだが、今年はことのほか頼もしく映る。若手選手にかけるなにげない言葉にも説得力が伴う。チームのレギュラーとしては中畑、篠塚らとともにもうベテランの域に達したのだから、立場から考えれば当然かも知れない。捕手は女房役と言われ、受け身の立場に考えられがちだが、江川が抜けた今年はむしろ亭主のように投手たちを操縦していく立場に立たなければならないだろう。桑田、水野、槙原ら投手陣の中心がすっかり若返り、それに実力は折り紙つきとはいえ、日本の事情について白紙の状態のガリクソンと、いわばあなたまかせの投手たちがつぎつぎにマウンドに登る。桑田にしろ、水野にしろ昨年までは大黒柱の江川を手本にし、困ったときはなんでも頼り形でピッチングを覚えてきたが、今年からはそれが出来ない。同じ投手仲間に頼れる船外がいないとなれば、目は自然とリード役の山倉に向く。このあたりのカジ取りをどうこなしていくかが、今年の山倉に課せられた重要な役目だ。「巨人の正妻」の座に長く座っている山倉は、試合中によく冷たい顔を見せる。例えばサイン違いの球がきた時など、もうやってられないといった態度を見せる。だが他人の家の事情は中にいた人にでも聞いてみないとよく分からないもので、現役としてもコーチとしてもよく接してきた巨人OBで解説者の堀内恒夫氏によるとまったく話は逆だ。山倉は、投手がミスを犯した時でも自分の責任だとし、常にピッチャーたちをかばっているのだと言う。よくホームランなど打たれた後、ベンチに帰ると、監督やコーチから「どんな球を打たれたんだ」と詰問される。巨人の歴代の捕手の中には、こんな時「外角へ投げろと指示したのに真ん中に投げてきて」などと投手の責任を強調する人がいたが、山倉は違う。たとえそれが失投の結果だったとしても「いいコースにきたのにバッターに読まれていたのかな。リードがまずかった」と常に責任をかぶっている。試合中に冷たい顔が出るのは、これだけかばってやっているのにまた同じミスをしたので、オレの気持ちも少しは知れ、という態度が出てしまうということだ。無理もないことだがなお一層の冷静さと我慢ー唯一の注文だ。
昨年MVPを獲得して、今年はキャンプから練習に取り組む姿勢が違う。若手のシリをたたき、自らも大声を張り上げて中畑がもうひとり現れたよう。「全員を引っぱるつもりでやりたい。声を出していると自分の気持ちも積極的になるんです」より攻撃的な捕手へ変身か。
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