goo blog サービス終了のお知らせ 

プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

山中巽

2025-03-13 22:10:05 | 日記
1963年
試合前の決まった山中に調子はどうとたずねると「はあ、どうやらいけるような気もしますが、まだ不安な気もします」と語っていたが、どうしてどうして完ぺきなピッチング。プロ入り二年目、通算39試合目で初の完封勝利投手となった。ピッチング内容は、投球数78、安打は散発の3安打だけ。最後まで二塁を踏ませず、しかも無四球とみごとなもの。最後の打者丸山を三ゴロに打ち取ると、ベンチから杉浦監督、加藤コーチが真っ先にマウンドを降りる山中のところにかけより、がっちりと握手。肩をたたいて好投をほめた。山中は帽子をとり、大きなからだを二つに折り曲げるようにして頭を下げた。いかにも新顔らしいしぐさだ。ベンチにとび込むなり、茶ワンについだ氷水をさもうまそうに二、三杯たてつづけに飲みほした。みごとなピッチングだったね報道陣の質問に「ええ、外角低めにうまく決まったのがよかった。ちょっと苦しかったのは七回一死で徳武さんに打たれたときですが、つづく豊田さんの左翼ライナーを江藤さんがうまくさばいてくれたので助かりました」二日おいての登板だったが、自信はあったー。「国鉄には前からあまり打たれていないので自信はありました」山中はさる一日の対大洋戦でプロ入り初完投で興奮したときとは、別人のように落ち着いていた。山中をリードした捕手の小川は「きょうはよくタマが走っていた。最高のピッチングですよ。もっとも国鉄がポンポンと初めから打ってくれたのでらくだった」と、後輩のピッチングをほめる。


追い風という好条件があったにせよ、この夜の山中のストレートは快速球という形容がぴったり、国鉄打者のバットをぐいぐい押しまくった。29打球のうち、内、外野に16の凡飛が打ちあげられているのをみても、その球力のほどがうかがえよう。外角低め一辺倒に走らず、しばしば高めをついて成功したのも、スピードに自信があったからだ。変化球もよく低めに切れた。従来のシャープなカーブに加えて、少しスピードを殺したゆるいカーブを使っていたのも注目したい。タイミングをはずすのに、効果的であった。青年山中がおとなのピッチングを覚え出した。


山中はもともと球威はあったが制球力に難があったため、その球威が生きなかった。ところがこの日はリキまずノビノビと投げつづけた。ストレートのスピードは現在の整調ペースからいえば、まず申しぶんない。課題の制球力も外角低めによく決まっていた。それにもう一つ注目させられたのは、右打者のインサイドを大胆に攻めていた点だ。こういった投法からいって、スリークォーターの山中が高低を主体とした投球でサグリを入れたのはいい着眼である。江藤の好リードもあるがかりにこんごのオープン戦で少々打たれても、ぜひ高低攻めの呼吸をのみ込んでほしいものだ。たった一度の成功で楽観は禁物だがきょうを跳躍台にみがきをかけてほしい。


1966年


首脳陣がエースにと期待している山中が阪神を7安打散発の一点に押え二度目の完投勝利を飾った。報道陣の質問に蚊のなくような小さな声で答えるロッカー、マウンドで快調なピッチングを示した山中とは別人のようだ。「調子はよくなかった。きょうはだいぶ冷えたのでオープン戦で痛めた右モモの肉離れが痛み出し、ブルペンでかばって投げていると腰まで痛くなり力がはいらなかった」聞きとれないほどの小さな声でボソボソ話す。「でも二、三回は打線が三点ずつとってくれたので楽だった。調子はさきの広島戦のときの方がはるかによかった。慎重に低めに投げたので九回もったんだろう。五回辻にホームランされたのはシンカーだった。五、六回が一番しんどいころだった」ユニホームをぬぐとまだ二十二歳の若者。はにかみながら話すが、マウンドでは堂々たるピッチング。エースの貫禄がついてきた。辻佳の一発で惜しくも完封勝ちを逸したが「まだ始まったばかりです。これからが勝負」山中ははじめて大きな声ではっきりといった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 佐々木吉郎 | トップ | 山中巽 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

日記」カテゴリの最新記事