1994年
「一死を取るまで、心臓が飛び出しそうだった」と言った。無理もない。登録を抹消された小宮山の穴埋めに、二軍から上がってきたばかり。勝利経験もなく、右肩痛を克服し2年ぶりに踏んだ一軍のマウンド。一昨年から本拠地になった千葉マリンも初めて。まして、この日は二十二歳の誕生日。力むなという方が酷だった。しかし、バックが相次ぐ好プレーでもり立てる。一回・先頭・辻が左翼線いっぱいに放った飛球を、俊足とはいえないミューレンが飛びつくようにキャッチ。これでリズムに乗った。捕手には今季5度目の先発マスクの猪久保。二軍戦でコンビを組んでいる間柄。「結果を考えるな。打たれても、お前じゃなくて使ったベンチが悪いと思え」と言葉をかけた。決め球のスライダーで一、二回に3奪三振。四回までに3点を失ったが、好調の西武打線を相手に六回途中まで踏ん張ったのだから上出来だろう。東海大甲府高から入団し、2年目の春季キャンプで肩痛に襲われた。4年越しでつかんだ1勝。「昨年の今ごろは走ることしかできなかった。苦労してよかった。きょうは最高の誕生日です」
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