(刹 那)「カタロン構成員、ライル・ディランディ」(#01、以下同)
(ライル)「保安局か?!」
(刹 那)「おまえを迎えにきた。俺の名は刹那・F・セイエイ。ソレスタル・ビーイングのガンダムマイスターだ」
(ライル)「ソレスタル・ビーイング・・・」
(刹 那)「そしておまえもガンダムマイスターとなる。ライル・ディランディ。いや、ロックオン・ストラトス」
なにが謎かといって、なぎらがセカンドシーズンでもっともワケわからん、と首をひねっているのが、
「刹那・F・セイエイがライル・ディランディをガンダムマイスターとして望んだ理由」
でございます(※01)。
※01:『wanderer.』は読みました。2311年、反政府勢力の動静や、ライルがカタロン構成員かどうかは不明。刹那もCBに帰還していない。どこへ「連れて行」こうとしたのだろう(『月刊Newtype 11』角川書店)。
(ライル)「俺に、兄の遺志を継げというのか」(#02、以下同)
(刹 那)「そうは云わない。だが、おまえもニール・ディランディと同じようにこの世界を変えたいと思っているなら、そのために戦う覚悟があるなら」
直後に入った保安局のガサで刹那がもたらした情報の信頼性を認めたライルは、カタロン幹部の指示を仰ぎ・・・コードネーム「ロックオン・ストラトス」を受け容れてしまう。しかも、MSパイロットとしてはド素人なのを承知で。
死にますよ、そんな。
ライルさんも刹那さんも、ちょっと変。いや、かなり変。
(刹 那)「紹介しよう。彼はライル・ディランディ」
(ライル)「違うな。俺の名はロックオン・ストラトス。ソレスタル・ビーイングのガンダムマイスターだ」
彼の、カタロン構成員としてのコードネームは「ジーン1」。
- (英)gene(独)Gen:遺伝子
- (英)gen(n):information (英俗)「正確な情報」「真相」
- (英)gen(v):to find out or give somebody information about something
遺伝子。
発音は異なりますが、「gen」も引っかけているかもしれません。「1」は1というより人称代名詞の「one」かな、特定の誰でもない「彼」。
ともかくも軌道エレベーターで宇宙に上がり、ちょっとヒヤッとしながらプトレマイオス2に乗艦したGene one(ある遺伝子)の内通ミッションが始まりました。飽きるほど同じリアクションをされながら。
「アレルヤ奪還作戦」で、状況を揶揄してティエリア・アーデを苛立たせた彼。
フェルト・グレイスに平手打ちされて、「比較されたら堪らんだろ」とつぶやいた彼。
ルブアルハリ砂漠で、陣営を問わず「心ある人々」に嫌悪された、Killモードのオートマトンに中東支部の同志を虐殺されて逆上した彼。
(ティエリア)「なにを笑う」(#09、以下同)
(ロックオン)「世界の変革より私怨か。・・・兄さんらしいと思ってな」
(ティエリア)「不服か」
(ロックオン)「いや、尊敬してんだよ。家族が死んだのは10年以上前のことだ。俺にはそこまで思いつめることはできねえ」
俺なら疲れちゃうよ・・・的なせりふで家族の死を過去に押しやり、武力介入の意義には積極的な彼。
(ロックオン)「すべて過ぎたことだ。昔を悔やんでもしかたねえ。そうさ、俺達は過去じゃなく、未来のために戦うんだ」
本気ですか?
と、突っ込んだのはなぎらの根性がひねくれているせいでしょう。
しかし、なんでしょうね。人格に微妙にムラがあるような、もやもやとしたこの感触は。
(クラウス)「太陽光システムの送電権を盾に、(地球連邦)参加国を云いなりにさせ、非参加国を見捨てようとする今の連邦のやり方は非道だ」(#02)
スメラギ・李・ノリエガが共闘をやんわりと拒んだように、カタロンは地球連邦政府の政策に抵抗する非合法な組織です。
刹那に呼び出された時、ライルはカタロンに思想を預け、心はすでに「ライル・ディランディ」の名を捨てていたように思えます。ガンダムマイスターとなった後でも「ニール・ディランディ」の名を守った兄とは対照的に。
家族の死が2人にそうさせたのなら、やはり傷跡はどちらも深いのでしょうね。
そうやって「ジーン1」の上に「ロックオン・ストラトス」の制服を着た彼は、今のところカタロン構成員として役目を果たしており、劣勢なカタロンの軍事力をCBの武力で補い、なんとかやっています。
深入りせず、たまに「趣味が悪い」介入をしながら、袂を分かつその日まで。
(刹那)「俺の願いは闘いでしか叶えられない」(#03、以下同)
ライル・ディランディの願いは、未来はどこにある?
反政府勢力収監施設から同志を解放した初陣が、あまりにもツボにハマり過ぎました。
このままだと、それなりに世界が収まって、カタロンが合法的な政治結社の代表を連邦政府に送り込んでやることがなくなったら、あー、最後に1つ忘れてたよ、とかつぶやいてこの人、刹那をあっさり射殺しちゃったりして・・・。
この「構え」がどうぶっ壊れるのか、意地悪でなく見てみたい。「ロックオン・ストラトス」の制服を脱いで、「ジーン1」の名を失って、そこに残るものがあるのかどうか。
その前兆がアニュー・リターナーとの出会いです。
どう見てもイノベイターな彼女は初めからなにも知らないのか、記憶を改竄されているのか、アカデミー助演女優賞なのか、リヴァイヴ・リバイバルの脳量子波に反応して索敵に一役買いました。
「アニュー・リターナー」と「ジーン1」は“同じ”です。
彼女の正体を知り、ライルが捨てた名を拾わざるを得なくなった時。
思想もなにもない、世界と向き合ったライル自身の願いが立ち上がる、ケルディムガンダム(GN-006)が真の目標を狙い撃つぜ!未来のために!という熱い上昇を希望します。
そんな彼の「本気モード」をサポートするのが、「兄の遺産」だと思うのです。
(スメラギ)「それにしても、ライル・ディランディのこの能力値の高さ・・・いったいどういうこと?」
前に、ガンダムマイスター達は被験者だ、と書いたことがあります。
彼らは武力介入のために数知れないミッションを実行しました。ガンダムに搭乗するたびにあの光、GN粒子の影響を、GNドライヴの直下で受けてきた。
00-RAISERが創り出した00(ダブルオー)空間、GN粒子を触媒とする意識の交感を見せつけられて、おいおい、これはひょっとしたら・・・
ロックオン・ストラトスの戦闘体験や経験値は、知らず知らずのうちに兄から弟へ転写されているのではあるまいか?
量子。EPR。一卵性双生児。DNA。messenger(伝令)RNA。trasnfer(転移)RNA。ribosome(リボソーム)RNA。
(ロックオン)「なあ、ハロ。兄さんは闘う時になにか云っていたか?」
(ハロ)「ネライウツゼ!ネライウツゼ!」
(ロックオン)「オーライ。ケルディムガンダム、ロックオン・ストラトス、狙い撃つぜ!」
なんで気にするんだ、こんな時に・・・と思いましたが、本人にも説明できない無意識の閃き、ライルの中に眠っている「ニール」が目を覚ましかけたのかも。ツインドライヴシステムだ。
「君と僕は、いつでもつながっているのだから」なディランディ兄弟を、刹那は知っている? いや、知らない?
そうだ、手紙。フェルトの手紙はどこへいった?