エリフ・シャファク『レイラの最後の10分38秒』





 トルコの女性作家エリフ・シャファクのことは週刊誌ニューズウィークの2022年新年号の特集冒頭にエッセイを書いていて知りました。分断の時代に他者を理解するためには感情、物語が大切であるといった内容に感動しました。
 日本で翻訳されていた小説はこれだけだったので早速購入したものですが、ようやく読むタイミングが来ました。

 イスタンブールの街角のゴミ箱に打ち捨てられた娼婦のレイラが人生を回顧する物語。生を受けた環境、厳しい時代・文化背景の荒波の中を生きる女の子の試練の積み重ねと友人との出会いが感情抑え気味に淡々と語られます。

 後半は進行が遅く読むのが辛いところもありますが、レイラの感情を押し殺した忍耐、人生がくれた小さな幸せ、心の拠り所となった友情の温かさなどがしみじみと伝わってきます。

 日本人、アジア人、欧米人などとは違う異文化の香りが楽しい。同じような印象のあるアフガニスタンの『千の輝く太陽』やアルゼンチンの『蜘蛛女のキス』などを読み返したくなりました。



 
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