西炯子「娚の一生」①~③

             

 「ブルータス」のマンガ特集号で知った作品です。これは嵌りました。雑誌では最新作の「姉の結婚」が紹介されていたのですが、併せて推薦されていた前作の「娚(おとこ)の一生」全3冊です。

 東京でのハードな会社生活と不倫に疲れ果てて、祖母の住む鹿児島の実家に帰省した三十代半ばのつぐみ。祖母の死後は一人静かに生活するつもりが祖母の昔の教え子という中年の大学教授・海江田が離れに住みついていて・・・。故郷の田舎の家で感じるリラックスした雰囲気を疑似体験しながら読み進めました。懐かしい故郷との繋がりという点ではリリー・フランキーの東京タワーを思い出しました。海江田の砕けた関西弁のリズムがよくて、つぐみと一緒になって少しずつ心を開いていきます。

 最近の草食系に慣れた男の設定では珍しい(?)押しの強さ、それを受けたい女の願望についての解説は、ブルータスでの湯山玲子という作家の文章が見事でそれを読んでくださいということに尽きます。私は女心は分かりませんが、「海江田の攻めにアラフォー女子読者総キュン死。」という解説が笑えます。それでもこのマンガを読めば納得できます。

 もう当分結構なはずの愛をそれでも受け入れてしまう女の性に共感と憧れを抱くのでしょうか。このどっぷりと浸かる幸福感は、マンガでは「ハチミツとクローバー」以来かもしれません。


 次作の「姉の結婚」(今のところ2巻まで)は更に年齢が進んでアラフォー主人公とイケメン元同級生の物語。設定は似通っているのですが、湯山玲子氏解説のとおりどう展開させるのか作者も迷っているのではという感じです。さて、どうなるのか。こちらも楽しみです。


             


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