司馬遼太郎「城塞」

                


 大坂冬の陣・夏の陣を描いた司馬遼太郎の「城塞」を読み終わりました。圧倒的な人間ドラマに頭がぼうっとしてただ余韻に浸りたい感じです。面白かった、読書の歓びです。


 徳川対豊臣の最後の闘いを舞台に様々な武将、牢人侍たちの生き様が描かれます。優秀なもの、愚かなもの、仁義に生きるもの、狡猾なもの、惨めなものなど、それぞれですが、立場立場で懸命に生きていることに違いはありません。読んでいる途中は、バカだなあと思っていた人物も全て終わってみると利己心だけでなくどうしても守りたいもの、拘りたいことがあったようで哀しく思えます。


 勝者による歴史記録が多く残される中で、真実は何だったのか、調べて取捨選択して、イメージを膨らませた、これは司馬遼太郎による小説なのですが、説得力のある骨太のドラマに仕上がっています。
 関西人による著書なので大阪・豊臣びいきのように感じるところもありますが、徳川家康の意地悪さを強調しつつ、最後は家康のリーダーとしての優秀さを称賛しているようにも読めます。司馬遼太郎、深いです。


 もともとは昨年の夏休みに岐阜城を旅行したことから「国盗り物語」を手に取り、そして「関ヶ原」と読んで、「城塞」で戦国時代の終わりを迎えました。
 戦国時代もの(小説)には関心がなくて、これまで避けてきましたが、この歳にしてようやく一般教養に追いつきました。更に関心のない幕末ものも司馬小説なら楽しめるかもしれません。挑戦してみようと思います。


 なお、最近はいろんなタイプの面白日本(世界)地図があっていくつか持っているのですが、今回は「地図で訪ねる歴史の舞台 日本」という地図の大坂の陣のページをたまに眺めながらの読書となりました。本来、読書は銘々の頭の中のイメージを自由に膨らませるものだとは思いますが、歴史物はこの手のお助けがあるとよりリアルに楽しめます。



          




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