請来軒


 随分前からいつか行きたいと思っていた大阪の焼肉屋「請来軒(ちんらいけん)」に行ってきました。

 場所は、大雑把に言うと新大阪駅と大阪駅の間にある「十三(じゅうそう)」という駅の西口の小路にあります。同行した関西出身の会社の後輩に十三に行くというと「久しぶりにコテコテの大阪弁が聞けますね」とニンマリされました。大阪では鶴橋、通天閣のジャンジャン横丁などと並ぶディープな街で有名なところのようです。
 そういう訳で心配したのは、こういうディープな庶民派の店に関西弁を話さない人間が立ち入ると浮いてしまうんじゃないかということでしたが、それは全く杞憂に終わりました。店長(大将?おやじさん?)が、気さくに話しかけてくれるので違和感無く楽しく食事ができます(以下、私は再現できないので標準語で記載しますが実際は大阪弁です)。

 昼の11時過ぎ、1階のカウンター席に座ります。この店ではメニューで貼ってある一般的な部位ではなくて、店の人に相談して、その日お勧めの裏メニューを注文するのがよいのだそうです。


「何がありますか?」
「何でもありますよ」
「お勧めは?」
「お勧めと言ってもねえ、じゃあ、ハネシタとかサンカクとか食べますか」
「それでお願いします」

「ニンニクは? こんないい肉なんだから入れないとねえ」(タレに入れてくれます)
「肉は頻繁にひっくり返してください。網跡を付けたり、焦がしたりしちゃ絶対にダメ。表面に水分が残っているうちに食べてください。乾いてしまったらどんな肉でもうまくないですよ」


 結局、「ハネシタ」、「サンカク」、「クラシタ」などなど、聞きなれない部位を中心にお勧めの肉をたらふくいただきました。肉はどれも脂がのっていて旨いです。分厚いのにやわらかい。こんな塊肉ばかりを食べさせる焼肉屋は初めてです。
 ただ、注文を付けるとすればそれぞれの肉にそんなに味の違いがないです。どれも旨いのですが、どれも同じ脂の後味があります。極上の焼肉店では、同じ赤肉でもカルビ、ロース、ハラミの味、旨みの違いがはっきりしていますが、ここはそうではないような印象を持ちました。48年前から鹿児島の牛肉を仕入れているとのことでした。

 小さいボールで3杯(というのか)食べたところで、「まだ食べられるんだったら、ハラミのいいとこ、これからさばいてやってもいいけどな、10分くらいかかるなあ」と言われて心惹かれましたが今回は満腹でそれ以上味わえなかったのでそこでオーダーストップしました。

 で、お勘定は2人で16,700円です。どのサイトにもびっくりするくらい安いと書いてあったので、イメージとして8,000円くらいかなあと勝手に思っていたので少し驚きでした。でもまあ、あれだけの肉質に厚さ、生キモ(レバ刺)、センマイ刺、テールスープに生3杯、日本酒2杯ではこんなものかもしれません。

 いろいろ書きましたが、東京・鹿浜の「スタミナ苑」(最後に行ったのは6~7年近く前ですが)同様に、こういう煙で煤けた昔ながらの焼肉屋はいいなあと思いました。単なる食べ歩きを超えた歴史的な名所を訪れたような楽しさ、満足感のある店です。電話で受けていたので予約も出来るんだと思います。また行きたい(同行者を驚かせたい)焼肉屋です。


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