夢見るマシーンヘッド：エレクトロマ(2006)

Electroma (2006)

フランスの２人組エレクトリック・ダンス・ユニット、ダフト・パンクの トーマ・バンガルテル, ギ=マニュエルによる初監督作品。金と銀のヘルメット姿ロボット２人組「ヒーロー・ロボットNO.1」「ヒーロー・ロボットNO.2」の、ささやかな願い事と選択を、会話無しの映像と音楽のみで見せる７４分。



「カリフォルニアHUMAN」というナンバープレートのフェラーリ412で広大な土地を走る２人でこの映画は始まります。着いたのは小さな町、住民も全員ロボット。人間のように働き、新聞を読み、カフェでお茶を・・・そこで２人は郊外の施設で人間の顔を着けて貰うのです。ところが、照りつける日差しに顔が溶け出してしまい・・・・


人間と同じ生活を送るロボットたち。

２体のロボットはダフト・パンクの２人（中身は違うらしいけど・・・）の分身。彼らのアルバム「Human　After　All」のコンセプトを思い出させるストーリーです。場所は地球なのか、それとも違うのか。人間や動物が絶滅してしまった近未来なのかも知れません。生き物の居ない世界で、人間のように暮らすロボットたち。彼ら２人は人間にあこがれ、子供のような純粋さで人間になることを夢見るロボット。しかし「人間みたいなお面」を着けたところで、人間にはなれない・・・その事実に傷ついた銀のヘルメット君。そして彼を思いやる金のヘルメット君。




映像の美しい写真集のような趣のシーンも多いです。

使われる音楽はブライアン・イーノやハイドン、ショパン。クラシック音楽と白の研究室の組み合わせは私に「２００１年宇宙の旅」を思い出させました。勿論万人向けの映画ではありません。悠長な風景シーン、カメラも手ぶれも気になります。退屈かもしれません。しかし、「２００１年宇宙の旅」の何も会話のないコンピュータHALのシーンのように、沈黙の背景の意味するものが私たちに伝わってくるのです。一切会話なし、顔の表情もなし。でも２人の友情は伝わってくるんですよね・・・・延々と荒野を歩く２人、砂漠で立ち止まる２人。広大な砂漠で撮影された悲しく、美しいラストシーンは不思議な、静謐に満ちた余韻です。