春子はあっけにとられた。思いもかけず再会した梅次郎は、今自分が
乗っていたあの同じ電車にいたのだ。私を見つけて慌てて降りようと
したのだろう。背中で2度、ドアの開け閉めの音を聞き、なにげなく
振り返った時、梅次郎と目が合った。動き始めた電車から、何かを訴える
ように私を見つめていた梅次郎・・・
春子は改札を抜け、時刻表を見上げた。もし、梅次郎が次の駅で降り、
この駅まで戻ってきてくれるなら、あと26分後。
まさか、という気持ちと、来てくれそうな気持ちと。
来てくれるほうに賭けて待っていたい。
けれど、仕事の途中で、今からクライアントとの打ち合わせで、約束の
時間まであと15分ほどしかない。
どうしたらいい? 自分で自分に問いかけるが、答えは明白だ。
仕方がない・・・諦める。
折角会えたのに、でも気付かなかった・・・
文庫本など開かずに周りを眺めてたら、気付いたかも知れない、梅ちゃんに・・・
腹立たしいような、悲しいような気持ちのまま、打ち合わせに向かうのは
やりきれない気分だったが、春子は出口へ向かって歩き出した。
ふと、立ち止まる。伝言板が目に入った。
伝言板・・・・・賭けてみよう!
少し照れくさい気もしたが、中学生の時以来の伝言板記入。
「梅ちゃんへ 17日(土)13時 ここの改札の前で待っています。春子」
つづく
乗っていたあの同じ電車にいたのだ。私を見つけて慌てて降りようと
したのだろう。背中で2度、ドアの開け閉めの音を聞き、なにげなく
振り返った時、梅次郎と目が合った。動き始めた電車から、何かを訴える
ように私を見つめていた梅次郎・・・
春子は改札を抜け、時刻表を見上げた。もし、梅次郎が次の駅で降り、
この駅まで戻ってきてくれるなら、あと26分後。
まさか、という気持ちと、来てくれそうな気持ちと。
来てくれるほうに賭けて待っていたい。
けれど、仕事の途中で、今からクライアントとの打ち合わせで、約束の
時間まであと15分ほどしかない。
どうしたらいい? 自分で自分に問いかけるが、答えは明白だ。
仕方がない・・・諦める。
折角会えたのに、でも気付かなかった・・・
文庫本など開かずに周りを眺めてたら、気付いたかも知れない、梅ちゃんに・・・
腹立たしいような、悲しいような気持ちのまま、打ち合わせに向かうのは
やりきれない気分だったが、春子は出口へ向かって歩き出した。
ふと、立ち止まる。伝言板が目に入った。
伝言板・・・・・賭けてみよう!
少し照れくさい気もしたが、中学生の時以来の伝言板記入。
「梅ちゃんへ 17日(土)13時 ここの改札の前で待っています。春子」
つづく