シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

その22-2・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-01-15 13:26:17 | 日記

柏尾橋以降、桑名川と西大滝ダムのことなど

1、桑名川での氾濫

さて、「飯山市今井地区にて越水 13日5時41分」(「・その22」を参照)に続いてこの水は下流に流れ

『8.被災及び復旧状況
 ○浸水被害(10/15 午後 5 時現在 職員目視)
 市全体 浸水家屋 床上(473 戸)・床下(245 戸) 計 718 戸
 ・・・
 (9)桑名川 床上( 6 戸)・床下( 7 戸) 計 13 戸 』

と桑名川で13軒を水没させます。(注1)
もっともこの水没は「内水の氾濫によるもの」とされています。(注2)

現場を確認しておきましょう。
桑名川駅がこれ。
この場所はJR飯山線の線路高さまでかさ上げされて高くなっている為、浸水は免れたものと思われる。(標高303.6m)

その位置から左側(南側、飯山側)をみるとこんなふう。

そして右側(北側、新潟側)みるとこのようになっている。
道が途中で盛り上がって高くなっていますが、その高さで堤防につながっている。

その高くなった部分に立って後ろを振り返るとこう見える。
左側に排水の為の樋管があり堤防をはさんで右下に排水ポンプとその電源があるのが分かる。(注3)

南側から近づくとこんな感じ。

排水ポンプの電源と排水用のパイプ、これは堤防を貫いて千曲川の方に排水パイプの出口がある。
排水ポンプ自体は樋管の入り口の底に常設されている模様。
そうして、ここにある樋管と排水ポンプの組み合わせはシンプルだが、樋管、あるいは樋門構造と排水ポンプの組み合わせの基本要素をすべて持っている。

さて千曲川の水位が上昇したので樋管を閉じ排水ポンプを回したのでしょうが、流れ込んでくる雨水が多すぎて排水ポンプの能力を上回った為その場所から雨水があふれて内水氾濫となったものと思われます。
飯山市の説明だとそういう事になります。

しかし、ここの樋管をいつ閉めて排水ポンプを本当に回したのか、飯山市の報告にはこの樋管については言及がありませんので、詳細は不明です。
まさかとは思いますが、樋管を閉め忘れての千曲川からの逆流であった、とするならば、それは大きな問題です。

そうではありますが、それでは話が前に進みませんので、一応ここは「雨水の排水能力不足による氾濫」という事にしておきます。

2、樋管を閉めたとすると、この場所で千曲川水位はどれぐらいであったのか?

この樋管のある場所の標高は301.0m。
これ以上に千曲川の水位が上昇すると樋管を開けっ放しにしていた場合は千曲川からの逆流が発生する。

さて、この場所から1.1kmほど上流が上桑名川でそこに市川橋があり、水位計が設置されている。(注4)
そしてそこの水位計は氾濫開始水位が301.0mと設定されている。

さらにこの水位計から下流3.4kmに西大滝ダムがある。
このダムによって上桑名川あたりまでは通常はダム湖になっていると思われ、台風19号の時もそうであったと思われる。

そうして、上桑名川で千曲川が氾濫した、という情報はないため、その場所の水位は301.0mを超えてはいなかった、それはつまり西大滝ダム湖の水位は301.0mを超えてはいなかったものと思われる。・・・

形式上はそういう話になるのだが、不思議な事に上桑名川の堤防の高さは市川橋あたりで305.8m程である。
そうであれば本来は「氾濫開始水位は305.8m」とするべきであるのに、なぜか301.0mとなっている。

さらに上流の柏尾橋から市川橋までの距離は9.1kmであって、この区間の平均河床勾配をみると1000分の1.1である。
台風19号の時の柏尾橋の水位計のピークの値は15.03mなのだが、これを標高値で表すと315.53mとなる。

これに市川橋まで流れ下る事による河床勾配による減少分10.01mを引くと305.5mとなる。
つまり、「実際には千曲川の水は市川橋辺りの堤防を越える事はなかったが、水位計設定の氾濫開始水位301.0mは越えていた」という事らしい。

さて桑名川のこの場所での堤防天端の標高は304.3mである。
そうしてこの場所でも千曲川の水は堤防を越えた、と言う情報はない。

市川橋で305.5mだった水位は1.1km下流のこの場所では304.3mと計算できる。
つまり計算上は「堤防すれすれの水位であった」ということになる。

以上より「この場所の樋管は台風19号の時には閉じられなくてはならず、そうして又排水ポンプも稼働させる必要があった」という事が分かるのである。

3、西大滝ダムの水位管理

西大滝ダムの水位管理は通常は市川橋の水位計で見て「観測開始水位 296.5m」あたりを上限として管理されている様である。

そうして「危険水位 299.3m」は超える事が無いようにしているものと思われる。

それはつまり、危険水位を越えそうな場合は、西大滝ダムのゲートを開いて下流に余分な水を流す、ということであり、それは又下流域での千曲川の氾濫がおきない水量である事を前提として行われているものと思われる。(注5)

さて、このような千曲川の流れの構成になっている為に、立ヶ花で観測された水位のピーク値は柏尾橋の水位計まではよくその影響を見る事が出来るが、市川橋の水位計ではすでに西大滝ダムの影響をうけて、ピーク値の観測は難しいものとなりそうである。

さらには、西大滝ダム以降の下流域では立ヶ花観測所での水位データはそのままではまったく意味を持たないものとなっている様である。(2020/8/13 記)

 

注1令和元年台風19号関連災害経過報告【第2報】

注2飯山市報に今回の水害の場所についての報告があります。
https://www.city.iiyama.nagano.jp/assets/files/kikakuzaisei/koho/r01.11/2-11.pdf

pdf2ページ目の下段に「内水の氾濫による浸水箇所」として
・桑名川区
が上げられています。

注3:しかしながら飯山市のHPなどで調べた限りにおいてこの樋管の名称、管理担当者、操作担当者は不明です。ーー>地域防災計画・資料編93Pに管理者・長野県、操作担当者・桑名川区長の記述有。名称は桑名川1号~5号の内のどれかにあたるものと思われる。

さらにしらべてみると、この浸水したエリアの北端の樋管は上述した通りであるが、南端にももう一つの樋管がある事が確認できた。この樋管もまた排水ポンプ付の樋管であると思われるが、エリア浸水時にこの樋管の操作状況がどうであったのかは不明である。

このように、「2つの樋管の上流からの内水の氾濫」による浸水であったのか、それとも「2つの樋管を通じた千曲川からの逆流による浸水が加味されたのか」は現状では不明である。

注4市川橋の水位計と桑名川駅、および西大滝ダム

注5:西大滝ダムの下流域には下流6.1kmに百合居橋(ゆりいばし)の水位計があります。

西大滝ダム(空撮)

西大滝ダム

ゲート全開の西大滝ダムを見る

西大滝ダムー信濃川発電所

西大滝ダムにおける増水時のダムの操作と流量算定 

上記pdf資料によればダム水位は通常は294.75m~295.75mで管理されている、との事。つまり「最大水位で桑名川樋管位置での水位は298.3mであって、この水位であれば樋管を閉じる必要はない」という事である。

注6:河床勾配による水位標高の推測計算というのはあくまで概算であって、実測する事で水位推測計算には補正をかけていく必要があります。

追記:(2021/9) : 桑名川エリアには県管理の樋管が5つあり、その操作は桑名川区の区長、という事になっている。記述は: https://www.city.iiyama.nagano.jp/assets/files/kikikanri/bosaikaigi/R02/20200902-043959.pdf :P47 飯山市水防計画 にあり。いずれにせよ「区長一人では対応できないはず」なのだが、地元の消防団との連携状況は現状では不明。

追記:(2021/10): 西大滝ダム 画像 : https://archive.fo/GShsC :堰になっていて水を堰き止めている。ダムの下流にはゲートを持ち上げる事で放流を行う。

発電所に送るための水の中の砂を沈降させる設備の動画 : https://ameblo.jp/mto193914/entry-12704328118.html

 

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