シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

その24・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-01-18 15:05:59 | 日記

さて次は広井川・滝沢川流域を見てみましょう。

まずは場所の確認からです。
広井川流域は結構広い。
全景はこれ。
その1
http://archive.md/WENDa
「戸狩野沢温泉駅」という表示のしたに見えているのが広井川。
右側に流れている千曲川に樋門を通じて流れ込んでいる。

その源流、始まりは皿川に近い場所になる。
そこから始まり、1/3程北上すると滝沢川との合流地点となる。
真ん中を走る飯山線の左側にあるのが「長峰山」と呼ばれる丘陵地帯。
そこをはさんで右左に田んぼが広がる、といった場所である。

そうしてこの地図では見えないが、右側田んぼエリアにも用水路がありそれがまた千曲川にそそぐあたりで広井川と合流している。
その状況は「その2」を見てもらえばわかる。
その2
http://archive.md/KBPPV
そうしてこの用水路の部分は「流域雨量指数の計算対象」にはなっていない。

広井川が千曲川に注ぎ込む所には樋門がある。
http://archive.md/HYe4a
そうしてその横には排水ポンプ場が設置されており、その前で用水路部分と広井川が合流している。
・広井川救急排水機場
http://archive.md/ryCuk

千曲川の水位が上昇した場合はこの樋門を閉じて排水機場の排水ポンプにより広井川+用水路の水を千曲川に強制排出する仕組みである。

滝沢川は「その3」で法寺と書かれたあたりに合流点がある、左側から注ぎ込んでくる渓流である。
その3
http://archive.md/6vI4u
地図ではこの川の源流まで書かれていないが、源流は山の中にある。
滝沢川
http://archive.md/9IEX0

そうして広井川の始まりはここである。
その4
http://archive.md/ncjfA
広井川の始まり
http://archive.md/UEqtd

こうして広井川というのはその支流に滝沢川という渓流を持つのではあるが、全般的にゆるやかな傾斜を持つ河川である事が分かる。
その意味では皿川とは対照的な河川である。
さてこの川を北から南側を見通すと典型的な広井川景色となる。
http://archive.md/x5x9K
そうして写真左に見えるのが「長峰」と呼ばれる丘陵地帯。
以上が広井川流域の説明となる。

次に災害状況の確認をしておく。
https://www.city.iiyama.nagano.jp/assets/files/kikakuzaisei/koho/r01.11/2-11.pdf
例によっての飯山市報のpdf2ページ目下段によれば、「広井川流域に災害報告なし」である。(注1)

つぎに樋門の操作状況、排水ポンプ場の状況、それから排水ポンプ車の動きを見ておく。
飯山市プレス発表第二報3ページから
『7.樋門、ポンプ等
10月12日
22:05 広井川ゲート 閉鎖 ポンプ 稼働
・・・
○排水ポンプ車の配置
広井川 1台 配置 』

この件については別口の情報源から以下の報告がある。
20時05分 広井川配置につく(フクザワコーポレーション)
22:05 広井川ゲート 閉鎖 ポンプ 稼働
22時10分 広井川樋門閉めたがポンプ稼働せず。豚舎付近、水たまり始めた。

排水機場のポンプトラブルの為、飯山市が県に対して排水ポンプ車1台の出動を要請した事が県の報告に記載されている。

広井川対応(広井川樋門と広井川救急排水機場)
県の報告
https://www.pref.nagano.lg.jp/bosai/documents/7re.pdf
(全31ページ中22ページ目)
『広井川 ひろいがわ 飯山市
県 排水ポンプ車稼働要請 ・県ポンプ車1台出動 13日1:55~3:20 →排水機にて排水13日11:00 完了』

飯山市の依頼を受けた県は排水ポンプ車1台を広井川に出動させ、13日1時55分から3時20分まで排水作業をおこなった。(注4)
その間に排水機場のポンプの修復作業が終わり、ポンプ場のポンプによる排水作業が再開し、その作業が13日11時で終了した。

ところで広井川は広井川樋門と広井川救急排水機場が一体運用されている。
樋門およびポンプ場の保守点検は国がおこなっている。(注2)
排水機場の操作は(株)フクザワコーポレーションと思われる。(注3)
樋門の操作は戸狩区長。(注3)

こうして広井川流域では多少のトラブルはあったものの、排水作業そのものは13日の11時に無事に終了したのである。

以上の状況を「広井川の流域雨量指数の状況」から再確認してみよう。
地図を拡大、移動し「広井川・滝沢川」まで持ってきます。
あとは時間をおって確認するだけです。

但し表示されるのは3時間後の河川の予測値ですので、以降、考えやすいように画面左上の時刻に+3時間した値で記述していきます。
12日
16時40分 広井川・滝沢川上流に黄色が出現。千曲川も黄色になる。
17時40分 広井川の最終端部をのぞいてすべて黄色になる。
19時10分 広井川上流域に赤色出現。
20時20分 広井川上流域に紫色出現。同時に最終端部が黄色から赤に変わる。
20時30分 千曲川がオレンジ色に変わる。
20時40分 広井川、最終端部の赤をのぞいて全域紫。滝沢川も全域赤。
21時00分 千曲川が赤色に変わる。広井川最終端部紫に。
22時05分  広井川ゲート 閉鎖 ポンプ 稼働
23時00分 広井川に濃い紫出現。
23時30分 千曲川が黒色にかわる。
13日
0時20分  広井川9割がた濃い紫となる。 
1時20分  その状況がここまで続く。ここの1時間が広井川水位のピーク時間帯。

1時50分  最終端部の濃い紫が紫となる。
2時10分  広井川から濃い紫色がなくなる。
5時50分  広井川から紫色がなくなり赤色となる。
8時20分  広井川・滝沢川流域から赤色がなくなりすべて黄色。
10時50分 広井川上流域に水色出現。
11時00分 ポンプ場のある場所はまだ黄色だが、ここで排水ポンプ停止。
11時40分 広井川最終端部水色に変わる。
終了

22時05分にゲートは閉めましたがポンプ場のトラブルにより実質上の排水が始まったのは県の排水ポンプ車が到着した13日の1時55分からです。
それまでは豚舎のあたりに内水氾濫の被害があった模様ですが大きな被害には至らなかったという事でしょう。
そうして排水ポンプ場のポンプ停止が13日の11時。
少し遅れて広井川がほぼ正常域に戻ったのが11時40分でした。

注1
長峰の東側、常盤(ときわ)大塚区に「内水の氾濫による浸水」とあるが、この件についてはこのシリーズ「・その22」の追伸を参照願います。

注2
排水機場は定期的に点検整備しています
http://www.hrr.mlit.go.jp/chikuma/news/kawa-dayori/101015haisuiki/index.html

注3
飯山市地域防災計画
第7編 資料編(PDF形式:35,325KB)
http://www.city.iiyama.nagano.jp/assets/files/kikikanri/tiikibousaikeikaku/07.pdf
(全270ページ中92ページ)
『3-9 水防上重要な水門、ダム
広井川樋門
管理者 国土交通省
操作担当者 戸狩区長』

ちなみに(株)フクザワコーポレーションは常盤排水樋管の操作担当者でもあります。
『常盤排水樋管
管理者 飯山市
操作担当者 (株)フクザワコーポレーション』

注4
広井川で13日3時20分まで排水作業を担当した県のポンプ車は、その後皿川の氾濫対応の応援に向かったものと思われる。

追伸
広井川はこうして13日の1時55分から11時までの9時間の排水作業でOKでした。
かたや皿川は13日の5時30分から14日の7時まで25時間30分の間、合計6台の国、県、飯山市の排水ポンプ車、地元の消防団の小型排水ポンプ7台、それから城山雨水排水ポンプ場の2時間半の稼働をもってようやく終了となりました。
さて、どうしてこんなにかかった時間に差が出たのでしょうか?
検証が必要な事項であります。


上記経過時間については以下の資料にて確認可能です。
県の報告
https://www.pref.nagano.lg.jp/bosai/documents/7re.pdf
全31ページ中22ページ目に記載有。

訂正の追記(2020/8/29):

その後の河川事務所の報告資料の確認によって広井川ポンプ場周辺の浸水状況、およびポンプの稼働時間に大幅な修正が必要である事が分かった。

令和元年東日本台風(台風第19号)による千曲川・犀川出水状況

この資料の25Pに広井川、日光川を起点とする広範囲にわたる浸水状況の写真が掲載されている。さらには29Pの説明書きによれば広井川ポンプ場とおだてのポンプ場の稼働状況は以下の通りである。

広井川緊急排水機場  12日 22:00 ~13日 23:00  稼働時間25:00 排出量723,840 m^3
御立野川排水機場  12日 20:40 ~14日 17:24  稼働時間44:44 排出量331,800 m^3

そうであれば広井川の洪水危険度分布の色が水色に変わった後、随分と長い時間に渡ってかなりの量の氾濫水を千曲川に排出していた事になる。

訂正の追記の訂正(2023年5月大水によって判明したこと

広井川およびおだての排水機場はそれぞれが千曲川の水位上昇に合わせた独自の運用基準を持っている事が判明した。

そうしてその基準は皿川樋門での水位上昇および今井川遊水地での水位上昇と比較した場合に「相当に安全サイドでの運転をしている」と言うのが実状の様である。

それはつまり「皿川樋門および今井川遊水地の状況では水位に十分に余裕がある」=「排水ポンプ車による排水の必要はない千曲川の水位である」にもかかわらず「広井川およびおだての川では排水ポンプを動かしていた事が確認できた」のです。

この事実を考え合わせますと台風十九号襲来の折に飯山市街地排水に25時間半もの時間が必要だったのはやはり異常であった、という事になります。

コトバを変えますれば「飯山市街地にあふれ出した泥水は皿川上流からのものである」とする説明、これは市役所と河川事務所の説明ですが、「その説明には相当に無理がある」という事になります。(注5)

加えて「キキクルの洪水危険度予測の情報はそれなりに信頼性があった」という結論になり、したがってやはり「皿川堤防が決壊した」という状況は「その当時に皿川では異常な事が起きていた」という事になります。

そうして「それは何か」といいますれば「皿川樋門を満水にしながらそこには一台のポンプ車もいなかった」=「だれも皿川を監視していなかったという事実」であります。

注5:「それでは飯山市街地にあふれ出した泥水の出所は」と言いますればもちろん「皿川樋門から逆流してきた千曲川の泥水+皿川上流からの水」という事になります。



飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧