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絵じゃないかおじさん

言いたい放題、自由きまま、気楽など・・・
ピカ輪世代です。
(傘;傘;)←かさかさ、しわしわ、よれよれまーくです。

仮想はてな・ストーリィ 嘆きのゴキオーラ 5/9

2015-01-10 07:40:26 | 仮想はてな物語 
copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ



{君は何物なんだ?}
{ドッさん、ありがとう}


ドッさん? 
何だ、そりゃ? 
オレの新しい呼び名か?


{わし、ゴキオーラ。もう3・5億年も生きているゴキブリ}
{ええっ、3・5億年!! ゴキブリ?}
やっぱり、ヤツはゴキブリだった。だけど、3・5億年なんて信じられるはずがない。


{そんなに長いこと生きてきた、証拠はあるのかい?}
{そんなもんあるかい、わしの言葉だけじゃダメなのかい?}
それにしては、あんなちゃちなゴキブリ取りに引っ掛かって、よくも何億年も生き延びられたものだ。そんなもん、信じろと言う方が無理だよ。



{わし、ドッさんとこ気にいっているの}
{Oさん、恐いだろ? それに、そのドッさんって言うの、なに?}
{Oさん可愛い! それと、あんた皆からドッさんと呼ばれているだろ?}



{Oさん、ゴキブリ見たら鬼女以上に変身するでぇ。それにオレ、皆からオッさんと呼ばれているんだ}
{だったら、ドッさんでいいんだろ?}
{オッさんだってば!}
{ドッさん}


もう、わからず屋! 何でもいい。勝手に呼べ! やっぱり、コイツ長生きしてる。頭が堅堅だ。
{ゴキオーラ、お前はいつも何処にいるんだい?}
{ドッさんの家}



わかり切った答を言うヤツだ。疲れる。こんなの相手にしていたら、ホント時間なんてアッという間にすぎてしまうだろう。
{Oさんに見つからないようにしろよ}
{いいの、姿消すから}
{ええっ、ということは!!!}


{この間、一緒に風呂に入っていたことなんか知らないよ}
アホッ! プライバシーも何もあったもんじゃない。このスケベー・ゴキ公め。よく見ると垂れ目のようだ。オレそっくり。でも、オレそんな他人のプライバシー侵したりはしないぞ。


{なぁ、ゴキオーラ、オレの家の中、勝手にかきまぜるなよ}
{心配するな。10年以上もなるのに、あんたの前に姿見せたの、初めてだろ?}



{そりゃ、そうだけど・・でも何でお前さんあんなものに引っ掛かったの?}
{それ言われると恥ずかしい。歳かいな? ちょっと考えごとして歩いていたものだから・・}
こいつ、何か心配事があるなと直感で感じた。
{お前でも考えることあるの?}
{ドッさん、そりゃないでぇ}
{何か悩んでいるのかい?}


そのオレの一言が聞いたのか、突然ぺらぺらとしゃべり始めた。何でも一人娘のリーブが1,300年近く大峯山に行ったきり帰ってこないという。彼女の恋人のエンオッズが山に修行に篭もっているので、その帰りを女人禁制の結界門の所でずっと待ち続けているという。


オレに一度様子を見に連れて行ってくれないかという。ゴキオーラは最近、身体の調子が悪くて頭も大分ボケてきたらしい。大峯山と言えば吉野の洞川にある。ここからバイクで2時間ぐらいだ。それぐらいなら、お安いご用だ。オレはあっさりと引き受けた


その次の土曜日の午後、ゴキオーラを革ジャンのポケットに入れ洞川へと走った。石舞台から芋峠、吉野、黒滝村を走る。青草が山道になだれ込むように生い茂っていて道幅が狭く感じられる。川には鮎釣りの人々が群れていた。梅雨入り宣言はなされているが天気は良かった。整然と並ぶ杉木立を渡って風が心地よい強さでぶつかってくる。快走りに近い。


黒滝村には漁協があった。こんな山の中に何で漁協などと思ったのだが、川には鮎がいるのでなるほどと頷けた。人が有り難がるものには何処にでも権利関係が発生するようだ。人が住み川が流れ、そこに鮎を放ち泳がせているだけで、もう金の関係の世界に入る何とも不気味な世界だが、数千円で誰でも大きい顔が出来るのなら許容すべきことなのだろうか?


 洞川に入った。山上川を挟んで2つの道路が走り、その両側に10軒あまりの旅館や人家が並んでいた。オレは右側の道路の人なつっこそうな旅館街の中を走りぬけて、大橋茶屋へと急いだ。この国唯一の女人禁制の山なのに何故か老婦人の姿が目立った。白装束のお遍路姿に似た服装をしていた。



途中、透き通った湧水があったので飲んだ。名水百選の名前を頂戴しているという。咽喉が乾いていたので旨かった。ゴキオーラとサヤカにもちょっぴり飲ませてやった。大橋の茶屋から少しゆけば結界門はある。山上岳に通じる道には、すべてこの門が設けられているようだ。リーブは山上岳へ通じるメインストリートで待ち続けているらしかった。



1,300年も待つ方も待つ方だが、悟りにそんなに時間が掛かるものなら方法を変えてみればと、お節介の言葉の一つもかけたくなってくるが、まぁ、それで誰にも迷惑をかけずリーブも納得しているのなら、それはそれで一つの生き方として認めてあげることにしよう。


                                      つづく



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