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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめのころです。
* 原発銀座でサヤカの能力アップ(026)
サヤカがもう少し強い放射能を浴びたいと言った。
強い放射能を浴びれば能力がさらにアップすると言う。
サヤカの不思議な能力のエネルギーの源泉は、
どうもこの私の出す超極微量の放射能にあるらしい。
何でもエラい科学の先生によれば、私も放射能人間だそうだ。
植物の生理に不可欠な放射性元素カリウム40が、
食物を通して身体の中に入り、
それがアルゴン40やカルシュウム40に変わる時に、
あのクソ恐ろしいβ線やγ線を放出しているとのこと。
でも別に心配は要らないらしい。
その他、空気や食物から入ってくる放射性物質、
ラジウム・ウラ ン・炭素14・ポロニウム214などが、
普通人の中で放つ放射線の総量は年間約15ミリレムで、
これは国際放射線防護委員会(ICRP)の年間許容被爆線量の
3%前後とのこと。
それにしても、知れば知るほど人間のメカニズムは
面白いものだ。
サヤカは、α線やβ線は、透過力が弱いので、もっぱら私の
γ線を利用しているようだ.。
この近くで放射能を浴びられる所と
言えば若狭湾に群がる原子力発電所しかない。
近代科学の粋と言っても所詮人の作ったもの。
いつかは漏れるのではないか。
そう睨んだ私は半年だけサヤカと離れることにした。
事故を起しやすそうな原発を選んだ。
最新設備の所が一番疑わしい。
科学の力に過信してしまっているから人間が隅に
追いやられる。
そんな所の方が事故が起りやすいと確信したからだ。
私は、発電所の近くでサヤカの隠し場所を捜した。
サヤカの欲しがっている被爆量はわずかでもいいらしい。
サヤカが風雨に晒されて錆びるのも困る。
人に取られても困る。
解体業者や大型ゴミとして持ち去られるのも困る。
私には仕事があるし、ずっと一緒にいてやることは出来ない。
何かうまく隠す方法はないものかと思案した。
中々いい知恵が浮かんでこない。
そうだ! いい事を思いついた。
原発の近くで不審がられずに、
ずっと置いていて、盗まれたり錆びたりしない、
安全な方法は、これしかない。
金はすこしかかるが、サヤカの能力アップが楽しみだから、
先行投資だと思って、実行することにした。
それは、原発で働く人に頼み、
サヤカを通勤に使ってもらうことだった。
地元の人で原発で働いていてバイクに乗れる人。
私は、10回近く通って、そういう人を捜しだした。
借りて貰う理由づけに、これまた頭を悩ました。
日本海側と太平洋側とでバイクの錆がどう違うか研究している。
だから、モニターとして、このバイクを日常的に使ってほしい。
期間は半年。
謝礼は20万円。
このため、名刺まで作った。
モニターになってくれる人は、
少し訝りながらも謝礼に吊られたのか何とか
引き受けてくれた。
サヤカを預けた帰りはバスと電車を乗りついで帰ってきた。
サヤカのない生活は、もの足りなかった。
Oさんには接触事故を起して修理に出していると誤魔化した。
季節も良かった。
冬の始まりだったので、
春まで取りにゆかなくても良いという大儀名分もある。
それから、3カ月も経たずに、
私が予想した通り放射能モレが起ったのだ。
私は約束の期日を心待ちに待った。
そして、その期日が過ぎた次の土曜日、サヤカを連れに
行った。
彼女の能力がどのくらいアップしているのか全然わからない。
でも確実にアップしていることだろう。
今後どんなすばらしい力を見せてくれるのか、
楽しくて楽しくて仕方がない。
放射能 絶対漏れぬと 言うよりも
漏れたらどうするかが 皆の大関心
ち ふ
この項おわり