休み前の月曜日にあるお客さまがご来店になりました。目が合った瞬間お互い涙でした。
もしお会いしたらなんてお声をかけてあげたらよいのか、本当に事実なのか、いったい何があったのか・・・そんな想いをしばらく抱いていた方でした。
ご夫婦でいつもご来店いただいてました。当店の食パンを他県のご実家へ送ってあげるとすごく喜ばれるんだと、たびたびご注文もいただいてました。
私たちより5歳位上の方たちだったように思います。
旦那様は早期希望退職され、料理に励んでおられてました。ずっと捨てきれない夢だった飲食店を経営する方向で全てが動いていました。奥様は旦那様の好きなことを思いっきりやらせてあげたいと、すごく理解のある明るい方で、先に商売を始め、これまで3度違う場所で営業してきた経験上のことなどを色々お話ししながら、場所など相談にものっていました。第二の人生に向け、未来に希望を輝かせていたお二人でした。
「プレオープンには必ずご招待しますので、ぜひ食べに来て色々アドバイスくださいね!」といつも笑顔でおっしゃってくださって、私たちも本当に楽しみにしておりました。
物件もほぼ決まったようでしたし、私も年賀状には楽しみにしていることをお伝えしてました。身寄りのないワンちゃんを何匹も引き取って育てられてて、こういう方たちには絶対に良いことがたくさん帰ってくるに違いないと思ってましたし、お二人の今後の幸せな人生をずっとお祈りしてました。
ところが、今月半ばになって、奥様から旦那さんが急逝されたとお葉書いただき、ただただびっくりし、嘘であってほしいと思ってました。真相をお聞きしますと、12月半ば違う物件を1人で見に行った時に、足を滑らせ頭を強打してしまい、不慮の事故でそのまま帰らぬ人となってしまったとのことでした。こんなことってあるのでしょうか・・・
2月にオープンしますという年賀状も出来上がっていたそうです。店名も決まっていて、棺には出来上がったばかりのコック服を入れてあげたとおっしゃっていました。
奥様はあまりにも突然の出来事で、ショックで、しっかりお別れも出来ないまま、まだ何が起きたのかもわからないまま今に至っているようでした。ワンちゃんの世話をしなければならないので、なんとか生きなければ、という想いに感じました。もし私が奥様の立場だったら乗り越えられない気がします。
うちと同じでお子様がいらっしゃらず、お身内の方は他県ですので、どれだけ心細く寂しく悲しみの中にいらっしゃるかと思いますと、胸が痛みます。他人ごとではありません。私たちもいつどうなるかわかりません。震災でお亡くなりになった方々も、だれもそのような結末を予期していなかったはずです。
『人生何が起きるかわからない、本当にわからない、こんなことならもっと早くに夫の料理を食べていただきたかった・・・・』と奥様は涙いっぱいに伝えて下さいました。
すごく考えさせられる出来事でした。
私たちは切望して何年もかけて計画してパン屋になったわけではありません。たまたまそういう流れになったのです。店も建てるなどこれっぽっちも思ってもいませんでしたが、なぜか導かれ、まさかこんなに続くとは思ってもいませんでした。何も無かった二人が18年もの間店を構えさせていただけたのは本当に奇跡的なことなんだ、と改めて気付かせていただきました。ただただ感謝ばかりです。皆さんのおかげです。
当たり前の毎日は奇跡の連続なんだと胸に刻み、また明日から1日1日を大切に生ある限り喜ばれる人生歩んでいきたいです。
沢山の人生に接しながら、皆さまに寄り添っていけますように・・・
妹がインフルエンザにかかりながら4000g以上の大きな赤ちゃんを出産した日でもあり、休み中、その方たちのことが頭から離れず、生と死の狭間の中で人生を見つめた休日でした。