ハナ子、ビョ-キだ。
前々からおかしいおかしいと思ってはいたが、これほどとは・・・
結婚式のことは、もういい。
実家の両親にも伝えて、ふんぎりがついた。
だが、ハナ子はどうする。
私の夫が、アレから生まれたなんて、何かの間違いだと思う。
夫に「あの怒鳴り声は物凄かったね、どんな顔してたんだろうね」と言ってしまった私。
「凄い顔だよ。 俺知ってる。 随分久々で、忘れていたけれど、俺が子供の頃はわりと頻繁にあの状態になっていた。」
私;「頻繁にって、なんで?」
「なんだったか忘れた。 気に入らないことがあると暴れる。 時々ベランダに出て、自分がいかに虐げられているかとか、辛い苦しい、飛び降りてやるとか叫んでた。」
絶句。
そんな、恐ろしい・・・
「ずっと一緒に住んでいなかったから、忘れてた・・・」
その夜のハナ子の怒声は、私の人生のエラー音として、長らく私の脳内で響き渡っていた。
ハナ子が怒鳴り散らした後の数日、夫は数回、パパや小叔叔に電話し、キャンセルに関わる詳細を話し合った。 そのために夫は、実家の固定電話に頻繁にかけていたが、ハナ子が出ることは一度も無く、また、ハナ子に聞かれたくない話があるときは、パパは出先からかけてきた。
パパが話したことは、多くは結婚式とはあまり関わりの無い、ハナ子のことだった。 どうやらあの電話の後、ハナ子の機嫌は最悪の低空飛行を続けており、パパは当り散らされる日々だという。 私は、何故パパがハナ子に強い態度に出ないのか、もっと言えば離婚しないのか、理解できなかった。 嫁としてその疑問を投げかけることは出来ないけど。
念のためにお断りしておきたいのだけれど、パパ本人は、ごくまっとうな、真面目な人物なのだ。 少なくとも私にはそう見える。 仕事にやりがいを見出し、目立った悪癖もなく、酒は飲んでも飲まれない。 こざっぱりして、誰に対しても非常に礼儀正しい。 そのうえPCの扱いに長け、物知りで料理上手で外国語も堪能な、説教臭くもいやらしくもない六十歳。 同世代の中ではかなり良い感じなのではないだろうか。
この結婚式の件で、私がパパとやりとりするうちに、パパからきた1通のE-mailにはこう書かれていた。「この度は、ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません」嫁にこんなことを言う舅は、そんなに多くはないだろう。
そんなパパは、あんなハナ子を妻に持ち、ベランダから何事か叫ばれる人生を送っている。 その恥ずかしさったらどんなもんだろう。
パパの話は、時に、結構な昔へ遡った。
「ママは、結婚式の会場が義鳥(パパ実家)なのが気に入らなかったみたいです。 昔から、義鳥のことを嫌っていますから・・・」
何故ですか?ときくと、「はっきりとはわかりません。 彼女の中ではいろいろ理由があるみたいですが・・・」それから、これまでの人生で、パパ実家関係者の祝儀などを出す際、ハナ子におよそ6割抜かれていたこと、結婚当初、家計を任せていたらギリギリの生活費以外の全てをハナ子実家に持ち込まれたこと、現在でも外婆(ハナ子母)に送金するよう強要されていることを語った。
チュ-ゴクだからか?
私は一瞬、そう思ったけれど。 落ち着いて考えてみるに、周囲のごく親しい中国人に限定すれば、そんな話は聞いたこともない。 親族間の金の貸し借りも、夫と私の常識は「極力貸さない借りない、緊急事態であれば可能な範囲で協力することもあるが、基本はその親族との普段の付き合いによる。」という線で一致している。
また、ハナ子実家は金に困っているわけではない。 実家付近は小汚いけれども、所謂極貧エリアではない。
どうにも、常識のズレというよりは、ハナ子が狂っているからだという気がしてならない。
に、過去あった辛かったこと、悔しかったことを語り始めたパパ。
「三十年間、言いたかった・・・」
言え。 そして離婚しろ!!! ・・・とは言えないけどさ。
夫は夫で、
「冷静に思い出したら、ハナ子がオカシイってことはわかるんだけど、その当時は深く考えなかったよねぇ・・・」
気づいてくれ、頼むから。
いや、過去色々あった関係上、実母ハナ子を冷静に分析することを脳が拒否したんだろうけれどさ。
私はこの時期、いろいろ考え過ぎて毎日毎日毎日頭痛がした。
法律的にも結婚しちゃってるし、何よりは既に私の「家族」になってて、手を離すには少し遅かった。
夫の脳が肉親の情に流されて汚染されることのないよう、祈りつつ。
ハナ子が私の家族にその異常性の影響を及ぼさないよう、戦うのか。
だる・・・
キャンセルに関して具体的なことは、義鳥の叔父さんと話した。
金銭的なこと、親戚の手前、挨拶しなければならないところはないか。 幸い、小規模な結婚式(未遂)だったので、取りやめの手間もそうかからなかった。
それはいいのだが、叔父さんと確認していくうち、ハナ子が自ら担当すると言い出した、教会の予約がそもそも入っていなかったことが発覚。 こんなことになる前、まだ私たちが杭州の実家に滞在している時に、夫が「予約はしてくれた?」と尋ね、ハナ子は「ちゃんと日付も時間も間違いなく予約した」と言っていたから、その時点でハナ子は結婚式を潰すつもりだったことになる。 義弟から電話が来る前は、ハナ子から式に関する不満を聞いたこともないというのに。
ぐちゃぐちゃ言っててもしょうがない。
が、頭の中はぐちゃぐちゃのままだ。
苛立ちがちな日々を送る私たち。
そこに、1通の手紙が来た。
ハナ子からだった。
「花婿の、母。⑱」に続く
㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥㊥
気が向いたらコメントお願いします。
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結婚式のことは、もういい。
実家の両親にも伝えて、ふんぎりがついた。
だが、ハナ子はどうする。
私の夫が、アレから生まれたなんて、何かの間違いだと思う。
夫に「あの怒鳴り声は物凄かったね、どんな顔してたんだろうね」と言ってしまった私。
「凄い顔だよ。 俺知ってる。 随分久々で、忘れていたけれど、俺が子供の頃はわりと頻繁にあの状態になっていた。」
私;「頻繁にって、なんで?」
「なんだったか忘れた。 気に入らないことがあると暴れる。 時々ベランダに出て、自分がいかに虐げられているかとか、辛い苦しい、飛び降りてやるとか叫んでた。」
絶句。
そんな、恐ろしい・・・
「ずっと一緒に住んでいなかったから、忘れてた・・・」
その夜のハナ子の怒声は、私の人生のエラー音として、長らく私の脳内で響き渡っていた。
ハナ子が怒鳴り散らした後の数日、夫は数回、パパや小叔叔に電話し、キャンセルに関わる詳細を話し合った。 そのために夫は、実家の固定電話に頻繁にかけていたが、ハナ子が出ることは一度も無く、また、ハナ子に聞かれたくない話があるときは、パパは出先からかけてきた。
パパが話したことは、多くは結婚式とはあまり関わりの無い、ハナ子のことだった。 どうやらあの電話の後、ハナ子の機嫌は最悪の低空飛行を続けており、パパは当り散らされる日々だという。 私は、何故パパがハナ子に強い態度に出ないのか、もっと言えば離婚しないのか、理解できなかった。 嫁としてその疑問を投げかけることは出来ないけど。
念のためにお断りしておきたいのだけれど、パパ本人は、ごくまっとうな、真面目な人物なのだ。 少なくとも私にはそう見える。 仕事にやりがいを見出し、目立った悪癖もなく、酒は飲んでも飲まれない。 こざっぱりして、誰に対しても非常に礼儀正しい。 そのうえPCの扱いに長け、物知りで料理上手で外国語も堪能な、説教臭くもいやらしくもない六十歳。 同世代の中ではかなり良い感じなのではないだろうか。
この結婚式の件で、私がパパとやりとりするうちに、パパからきた1通のE-mailにはこう書かれていた。「この度は、ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません」嫁にこんなことを言う舅は、そんなに多くはないだろう。
そんなパパは、あんなハナ子を妻に持ち、ベランダから何事か叫ばれる人生を送っている。 その恥ずかしさったらどんなもんだろう。
パパの話は、時に、結構な昔へ遡った。
「ママは、結婚式の会場が義鳥(パパ実家)なのが気に入らなかったみたいです。 昔から、義鳥のことを嫌っていますから・・・」
何故ですか?ときくと、「はっきりとはわかりません。 彼女の中ではいろいろ理由があるみたいですが・・・」それから、これまでの人生で、パパ実家関係者の祝儀などを出す際、ハナ子におよそ6割抜かれていたこと、結婚当初、家計を任せていたらギリギリの生活費以外の全てをハナ子実家に持ち込まれたこと、現在でも外婆(ハナ子母)に送金するよう強要されていることを語った。
チュ-ゴクだからか?
私は一瞬、そう思ったけれど。 落ち着いて考えてみるに、周囲のごく親しい中国人に限定すれば、そんな話は聞いたこともない。 親族間の金の貸し借りも、夫と私の常識は「極力貸さない借りない、緊急事態であれば可能な範囲で協力することもあるが、基本はその親族との普段の付き合いによる。」という線で一致している。
また、ハナ子実家は金に困っているわけではない。 実家付近は小汚いけれども、所謂極貧エリアではない。
どうにも、常識のズレというよりは、ハナ子が狂っているからだという気がしてならない。
に、過去あった辛かったこと、悔しかったことを語り始めたパパ。
「三十年間、言いたかった・・・」
言え。 そして離婚しろ!!! ・・・とは言えないけどさ。
夫は夫で、
「冷静に思い出したら、ハナ子がオカシイってことはわかるんだけど、その当時は深く考えなかったよねぇ・・・」
気づいてくれ、頼むから。
いや、過去色々あった関係上、実母ハナ子を冷静に分析することを脳が拒否したんだろうけれどさ。
私はこの時期、いろいろ考え過ぎて毎日毎日毎日頭痛がした。
法律的にも結婚しちゃってるし、何よりは既に私の「家族」になってて、手を離すには少し遅かった。
夫の脳が肉親の情に流されて汚染されることのないよう、祈りつつ。
ハナ子が私の家族にその異常性の影響を及ぼさないよう、戦うのか。
だる・・・
キャンセルに関して具体的なことは、義鳥の叔父さんと話した。
金銭的なこと、親戚の手前、挨拶しなければならないところはないか。 幸い、小規模な結婚式(未遂)だったので、取りやめの手間もそうかからなかった。
それはいいのだが、叔父さんと確認していくうち、ハナ子が自ら担当すると言い出した、教会の予約がそもそも入っていなかったことが発覚。 こんなことになる前、まだ私たちが杭州の実家に滞在している時に、夫が「予約はしてくれた?」と尋ね、ハナ子は「ちゃんと日付も時間も間違いなく予約した」と言っていたから、その時点でハナ子は結婚式を潰すつもりだったことになる。 義弟から電話が来る前は、ハナ子から式に関する不満を聞いたこともないというのに。
ぐちゃぐちゃ言っててもしょうがない。
が、頭の中はぐちゃぐちゃのままだ。
苛立ちがちな日々を送る私たち。
そこに、1通の手紙が来た。
ハナ子からだった。
「花婿の、母。⑱」に続く
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