夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

ジェンダーと法 学会報告

2005年05月16日 | profession
このブログでも何度も触れた、角田由紀子弁護士から連絡があった。

角田先生は、『性の法律学』という著書のある、ジェンダー法の第一人者で、セクハラ・パワハラ・アカハラの事件などを担当しながら(弁護団に角田先生が入っていると相手方は震え上がるという)、明治大学の法科大学院教授としてジェンダー法や裁判実務を教えていらっしゃる。

私は10年以上前から著書を読んで憧れていたが、昨年度担当した(本学で初の試み)一般教養の「ジェンダーと法」でゲスト・スピーカーとしてお呼びして以来、親しくさせていただいている。

先日のジェンダー法学会の報告文書をまとめていて、その中で私の提出したコメントを使用することの許可を求めていらしたのだ。

学会で先生が発表されたのは、売春の法的問題について。
売春を違法とすると、公序良俗違反で無効ということになり、売春施設の経営者がそうした施設で働いている女性に未払い給与を払うことを拒める、という困った結果になる。
自分の意思でなく売春をさせられている女性もいることを考えるとこの問題は深刻である。

これについて、私が「売春は組織対客の問題であり、たとえば、会社が違法な取引をしていたからといって、当然に労働者の賃金債権が無効になることがないように、別の問題として考えることができるのではないか」といったコメントをしていたが、学会の中では時間がなくて取り上げられなかった、もったいないので報告書には載せたい、ということだった。

とても光栄だし、先生のご丁寧な問い合わせにも感激した。
これが、普通の法律家の姿であるのだが、日ごろ異常な世界に住んでいる私は、そんな先生と接するだけでほっとする。

先日読んだ小谷野敦『恋愛の超克』に角田先生のことが出ていた、と教えてさし上げた。

この頃、小谷野をよく読んでいるのだが、確かに面白いのだが、一点だけ気になるのは、彼は人には能力差がある、恋愛する能力にも格差がある、だから恋愛弱者が救済されるようなシステムがないとだめだ、と主張する。それなのに、女性の容姿のことにやたらとこだわり、編集者から同業者の妻にいたるまで美人かそうでないかという情報に触れている。ここまで女性の容姿にこだわる人も珍しい。恋愛能力は必ずしも生まれつきのものだけではないが、容姿は生まれつきのものに左右される度合いが大きいのに、能力差で不利を与えるな、という彼の言説と大きく矛盾するのではないか。
この点は彼も承知しているようで、別の著書の後書には「美人好きは自分の最大の欠点である」と書いてあったが、開き直ってすむことではない。彼の「弱者救済論」とどう整合させるのか、ちゃんと説明してほしいなと思う。
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