話題のマンガ2作品について
NANA
矢沢あいのマンガ「NANA」のすばらしいところは、全く違う生き方をする女性同士が深い友情で結ばれるというテーマだ。
大崎ナナは自立した女性。
母に捨てられたため、祖母に育てられ、援助交際の噂をたてられて高校を中退したという暗い生い立ちを持つ彼女は、地元北海道でのバンド活動とメンバーの蓮との恋(そのため腕に蓮の花の刺青を入れるほど)に生きがいを見出し、メジャーデビューを目指していた。
しかし、蓮だけがギターの腕を買われて違うバンドのメンバーとして東京でメジャーデビューすることになり、二人は泣く泣く別れる。
恋人の成功に伴い、共に上京するという手段も十分ありだと思うし、現実の芸能界を見てもそうするケースが殆どだと思うのだが、ナナは、「ただ蓮についていくことなどできない。自分も音楽で成功して蓮と対等のミュージシャンになる以外に蓮と添うことは考えられない。」といって、訣別するのである。その潔さには感動する。
そして蓮のバンド・トラネスは大スターになる。
それに対して、小松奈々は、自分というもののない女性である。
東京の美大で学ぶ恋人を頼って、就職や住むところの目途も全くない状態で北関東の実家から、東京に出てくる。
その車中で、バンド・ブラストの拠点を東京に移そうとするナナと知り合うのである。
偶然は重なり、二人は部屋探しの途中で再会、ともに同じ物件を気に入ったことから、ルームメイトになることになる。
奈々は美大の彼に振られ、バイトをやっても長続きしない(コピー取りすら満足にできない)、その場その場で流される生き方で、読者もいらいらさせられるし、親友の順子にも「あの子の相手は疲れるよね」といわれるくらいだ。
その挙句、かねてからファンであったトラネスのメンバー巧とただのグルーピーのように関係をもち、その直後に、ブラストのメンバー・ノブに告白され交際するこ
とにし、なんとどちらの子かわからないような妊娠をする。
むろん、美点もあって、「蓮には二度と会わない」と意地を張り通していたナナが蓮と再会するお膳立てをしてあげたりもする。
しかし、普通ならこれだけ生き方を異にする女性同士が親友になることなどないと思うのだが、男との愛情よりも強い絆を二人は結び合うのである。どちらかというとナナの方が奈々に依存しているようにすらみえる。
生き方が全然違う女性がわかりあうというテーマは昔からいいと思っていた。
いわゆるトレンディ・ドラマといわれるものの中で、私が一番名作だと思うのは、1992年、水橋文美江脚本の「さよならをもう一度」である。(私はアメリカ留学中だったが、日本食品店でビデオを借りてみていたのだ。)
ニュースキャスター・秋吉久美子がかつての恋人の医師・石田純一と再会するというドラマだが、その婚約者で上司の娘・石田ゆり子が秋吉に「私みたいに、男性に頼る生き方をあなたは軽蔑するでしょう?」というと、秋吉が「いいえ。男が全てって生き方、私はとっても潔いと思うわ。」という場面が忘れられない。
矢沢あいがデビューした1985年当時、私はりぼんを毎号買っていたので(小学生の一時期毎月買っていたのだが、その後は全くご無沙汰だったが、法学部に進学した頃無性に読みたくなって再開したのである。)、見ていたが、こんな名作を描ける作家と思わなかった。
(矢沢はファンである矢沢永吉からとっているそうだ)
「マリン・ブルーの風に抱かれて」も大甘の凡庸な恋愛ドラマでちっともいいと思わなかったのだが。
ちなみに、同時期にデビューしたさくらももこの「ちびまる子ちゃん」もはじめから読んでいた。連載2年目に入るとき、「まる子の年齢は変わりません。サザエさん方式を採用しました」と書いてあったのには笑った。
映画も「ナナ」「ナナ2」両方見たが、なかなか原作に忠実だった。
しかし、ブラストの成功に伴ってマスコミがナナの実母をつきとめたりするというような暗雲が原作には漂っていて未完結なのに、2の方を「完結編」などといってしまってよいのか。
ナナ役の中島美嘉はまるであて書きしたみたいにぴったりだ(余談だが彼女ってメーテルに似てると思いません?)。
奈々の恋人(平岡祐太)をとってしまうバイト仲間の役はサエコだったが、遅番のバイトの後、終電に乗ろうとして駅の階段を駆け上がるとき、サエコが厚底ブーツでつまずいて転んでしまい、終電を逃してしまう。平岡が「こんな靴履いてこなくても」というと、「わざとよ」といい、その夜二人は結ばれてしまうのだ。(原作通り)
サエコがダルビッシュと婚約した際、交際していた小出恵介から乗り換えたとか、計算高いとか悪口をかかれていたが、その片鱗を覗かせる名演技であった。
「花より男子」
はじめは、つくしは花沢類に魅かれ、類の魅力がかなり丁寧に描かれているのだが、後に天敵だった道明寺司と結ばれる。
原作を読んで、はじめ、「作者は途中で構想を変更したのかな」と思うのだが、よく考えると、道明寺と結ばれるのは最初からの既定路線だな、と思い至る。
というのも、「花より団子」とは、「花」沢類より道明寺(桜餅の別名ですね)の方がいいというテーマを暗示しているからだ。
また、主人公が和菓子屋さんでアルバイトしていること、道明寺の司という名も、和菓子屋がよく「和菓子司」を店名にしていることも関係あるのでは?
でも、やっぱり花沢類の方が人間的に魅力的だと思う。
映画版は内田有紀主演で、道明寺が谷原章介、類が藤木直人(谷原と藤木はこれでデビュー)。
ドラマは井上真央、道明寺が松本潤、類が小栗旬(小栗はこれで大ブレーク。「GTO」にも気の弱い高校生役で出ていたが、同作品で窪塚洋介や池内博之がメジャーになったのに比べて、殆ど注目されなかった。なお、やはりブレーク前の藤木直人も鬼塚の友達の警察官役で出演していた)。
しかし、道明寺財閥だけでなく、一条ゆかりの「有閑倶楽部」の剣菱財閥なんかもそうなんだが、マンガでは「○○財閥」っていうのが桁外れの金持ちの記号としてよく出てくるけど、戦後解体されて以来、「財閥」というものは少なくとも表向きはないのだということを編集者は指摘しないのだろうか。
NANA
矢沢あいのマンガ「NANA」のすばらしいところは、全く違う生き方をする女性同士が深い友情で結ばれるというテーマだ。
大崎ナナは自立した女性。
母に捨てられたため、祖母に育てられ、援助交際の噂をたてられて高校を中退したという暗い生い立ちを持つ彼女は、地元北海道でのバンド活動とメンバーの蓮との恋(そのため腕に蓮の花の刺青を入れるほど)に生きがいを見出し、メジャーデビューを目指していた。
しかし、蓮だけがギターの腕を買われて違うバンドのメンバーとして東京でメジャーデビューすることになり、二人は泣く泣く別れる。
恋人の成功に伴い、共に上京するという手段も十分ありだと思うし、現実の芸能界を見てもそうするケースが殆どだと思うのだが、ナナは、「ただ蓮についていくことなどできない。自分も音楽で成功して蓮と対等のミュージシャンになる以外に蓮と添うことは考えられない。」といって、訣別するのである。その潔さには感動する。
そして蓮のバンド・トラネスは大スターになる。
それに対して、小松奈々は、自分というもののない女性である。
東京の美大で学ぶ恋人を頼って、就職や住むところの目途も全くない状態で北関東の実家から、東京に出てくる。
その車中で、バンド・ブラストの拠点を東京に移そうとするナナと知り合うのである。
偶然は重なり、二人は部屋探しの途中で再会、ともに同じ物件を気に入ったことから、ルームメイトになることになる。
奈々は美大の彼に振られ、バイトをやっても長続きしない(コピー取りすら満足にできない)、その場その場で流される生き方で、読者もいらいらさせられるし、親友の順子にも「あの子の相手は疲れるよね」といわれるくらいだ。
その挙句、かねてからファンであったトラネスのメンバー巧とただのグルーピーのように関係をもち、その直後に、ブラストのメンバー・ノブに告白され交際するこ
とにし、なんとどちらの子かわからないような妊娠をする。
むろん、美点もあって、「蓮には二度と会わない」と意地を張り通していたナナが蓮と再会するお膳立てをしてあげたりもする。
しかし、普通ならこれだけ生き方を異にする女性同士が親友になることなどないと思うのだが、男との愛情よりも強い絆を二人は結び合うのである。どちらかというとナナの方が奈々に依存しているようにすらみえる。
生き方が全然違う女性がわかりあうというテーマは昔からいいと思っていた。
いわゆるトレンディ・ドラマといわれるものの中で、私が一番名作だと思うのは、1992年、水橋文美江脚本の「さよならをもう一度」である。(私はアメリカ留学中だったが、日本食品店でビデオを借りてみていたのだ。)
ニュースキャスター・秋吉久美子がかつての恋人の医師・石田純一と再会するというドラマだが、その婚約者で上司の娘・石田ゆり子が秋吉に「私みたいに、男性に頼る生き方をあなたは軽蔑するでしょう?」というと、秋吉が「いいえ。男が全てって生き方、私はとっても潔いと思うわ。」という場面が忘れられない。
矢沢あいがデビューした1985年当時、私はりぼんを毎号買っていたので(小学生の一時期毎月買っていたのだが、その後は全くご無沙汰だったが、法学部に進学した頃無性に読みたくなって再開したのである。)、見ていたが、こんな名作を描ける作家と思わなかった。
(矢沢はファンである矢沢永吉からとっているそうだ)
「マリン・ブルーの風に抱かれて」も大甘の凡庸な恋愛ドラマでちっともいいと思わなかったのだが。
ちなみに、同時期にデビューしたさくらももこの「ちびまる子ちゃん」もはじめから読んでいた。連載2年目に入るとき、「まる子の年齢は変わりません。サザエさん方式を採用しました」と書いてあったのには笑った。
NANA―ナナ― 1-21巻 セット (りぼんマスコットコミックス―クッキー) | |
矢沢 あい | |
集英社 |
NANA -ナナ- スタンダード・エディション [DVD] | |
中島美嘉,宮崎あおい,成宮寛貴,松山ケンイチ,平岡祐太 | |
東宝 |
NANA 2 Special Edition [DVD] | |
大谷健太郎,矢沢あい | |
東宝 |
映画も「ナナ」「ナナ2」両方見たが、なかなか原作に忠実だった。
しかし、ブラストの成功に伴ってマスコミがナナの実母をつきとめたりするというような暗雲が原作には漂っていて未完結なのに、2の方を「完結編」などといってしまってよいのか。
ナナ役の中島美嘉はまるであて書きしたみたいにぴったりだ(余談だが彼女ってメーテルに似てると思いません?)。
奈々の恋人(平岡祐太)をとってしまうバイト仲間の役はサエコだったが、遅番のバイトの後、終電に乗ろうとして駅の階段を駆け上がるとき、サエコが厚底ブーツでつまずいて転んでしまい、終電を逃してしまう。平岡が「こんな靴履いてこなくても」というと、「わざとよ」といい、その夜二人は結ばれてしまうのだ。(原作通り)
サエコがダルビッシュと婚約した際、交際していた小出恵介から乗り換えたとか、計算高いとか悪口をかかれていたが、その片鱗を覗かせる名演技であった。
「花より男子」
はじめは、つくしは花沢類に魅かれ、類の魅力がかなり丁寧に描かれているのだが、後に天敵だった道明寺司と結ばれる。
原作を読んで、はじめ、「作者は途中で構想を変更したのかな」と思うのだが、よく考えると、道明寺と結ばれるのは最初からの既定路線だな、と思い至る。
というのも、「花より団子」とは、「花」沢類より道明寺(桜餅の別名ですね)の方がいいというテーマを暗示しているからだ。
また、主人公が和菓子屋さんでアルバイトしていること、道明寺の司という名も、和菓子屋がよく「和菓子司」を店名にしていることも関係あるのでは?
でも、やっぱり花沢類の方が人間的に魅力的だと思う。
映画版は内田有紀主演で、道明寺が谷原章介、類が藤木直人(谷原と藤木はこれでデビュー)。
花より男子 [DVD] | |
神尾葉子 | |
キングレコード |
ドラマは井上真央、道明寺が松本潤、類が小栗旬(小栗はこれで大ブレーク。「GTO」にも気の弱い高校生役で出ていたが、同作品で窪塚洋介や池内博之がメジャーになったのに比べて、殆ど注目されなかった。なお、やはりブレーク前の藤木直人も鬼塚の友達の警察官役で出演していた)。
花より男子DVD-BOX | |
神尾葉子 | |
TCエンタテインメント |
しかし、道明寺財閥だけでなく、一条ゆかりの「有閑倶楽部」の剣菱財閥なんかもそうなんだが、マンガでは「○○財閥」っていうのが桁外れの金持ちの記号としてよく出てくるけど、戦後解体されて以来、「財閥」というものは少なくとも表向きはないのだということを編集者は指摘しないのだろうか。