夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

あなたは荒ぶる神だ、そうに違いない。

2013年02月17日 | 読書
ほぼ1年ぶりの更新である。閲覧してくださる人が毎日いるというのがありがたくまた申し訳ない。

吉田敦彦の『日本神話の深層心理』を読んでまた関連妄想してしまったことがあるので書いておく。

大国主神が一緒に国づくりをしていたスクナヒコナ(先日鳴り物入りでスタートして視聴率で大コケしたドラマ『Going My Home』に出てくる妖精クーナはこの神様らしい。是枝監督の『歩いても歩いても』はものすごく良かったのだが。出来の良い長男が命懸けで助けた海で溺れていた少年[これがまた医師だった息子とは比ぶべくもないだめっぽさで救われない]を罰のように毎年命日に来させる母親のやるせなさ、嫁姑のチクチクした喧嘩とか、愚痴とか、ちゃっかりしたきょうだいへの思いとか、けして綺麗事でない人間や家族の営みがリアリティをもって描かれていて最高だった)に去られた後、出雲の国で大物主に出会い、

「あなたはいったい誰なのですか?」と問うと、

「私はあなたの幸魂(さちみたま)・奇魂(くしみたま)だ」と答えた。
国づくりは大物主が助けていたというのである。
(日本書紀)

また、古事記によると、大物主は、大国主神に自分を御諸山に祭れといい、それが現在の三輪山、大神神社である。


これは三島の『豊饒の海』に影響を与えていないだろうか?

三島自身が解説しているように、第一巻『春の雪』は和魂、第二巻『奔馬』は荒魂を描いたものだという。

また、『春の雪』で主人公松枝清顕は、滝で親友本多繁邦から「あなたは荒ぶる神だ、そうに違いない」といわれる不思議な夢を見る。

夢日記に書かれたそれらの夢はすべて実現するが、実際に第二巻『奔馬』で、清顕の生まれ変わりである飯沼勲が大神神社で行われた剣道の御前試合のあと、奥の院に行く途中の滝で水浴びしているところに、大阪控訴院判事の本多が院長の代理で臨席したあと行き合う、というかたちで再現されたのである。


私はこのエピソードが大好きで、2008年、夫と大神神社の奥の院に登り、途中その滝も見た。思ったより小さな滝で、ここで本当に大勢の剣道部員が禊をしたのかと疑うほどだった。結構ハードな登山になったが、三島も登ったと思うと感無量だった。

写真は一切撮ってはいけない(この前後に世界ふしぎ発見でもやったがやはり映像はだめだった)ので、入口の写真をお見せします。

第二巻『奔馬』では、同じ機会に本多は奈良の率川神社の百合祭りにも出て「こんな美しい祭りを見たことはない」という。これも調べて見に行った(会員になると中で見せてくれるので会費を払って会員になった)。

本多は奈良ホテルに泊まったという件があるので、奈良ホテルに行って「三島が泊まったそうですが」と聞いたら、支配人が「こちらは不勉強ですみません。せめてものお詫びに皇族の泊まる特別室をお見せします」といって案内してくれた。


京都、奈良などの名所はほとんど行っているのに、こうやって解説をちゃんと書こうと思うとつい億劫でそのままになってしまうが、少しずつ紹介していきたいと思いますのでよろしくお願いします。


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