origenesの日記

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小林章夫『コーヒー・ハウス 18世紀ロンドン、都市の生活史』(講談社学術文庫)

2008-09-05 18:37:36 | Weblog
17・18世紀に隆盛を誇ったイギリスのコーヒーハウス。コーヒーハウスはイギリスの近代ジャーナリズムの育ちの地であり、政治家たちがトーリー・ホイッグなどの政党をつくって活動する場所であり、犯罪者たちが巣食う魔窟でもあり、保険会社ロイズを始めとした会社の生誕の地でもあり、大学生たちの文化が花開く場所でもあった。
スウィフトもデフォーもアディソンもスティールもコーヒーハウスで活動し、筆を振るった。18世紀英文学の代表的な人物であるジョゼフ・アディソンやスティールの新聞『スペクテイター』も、保守派の新聞として現在も有名な『ガーディアン』もコーヒーハウスで初めて流行したものである。
スペクテーターは、イギリスのジャーナリズム史に燦然と輝く新聞であり、これまでのジャーナリズムには希薄だった政治的中立性を標榜したものであった。傍観者という意味をスペクテーターは、近代イギリスジャーナリズムに多大な影響を与えたのである。
ドライデンやポープといった「高級」な文学者ではなく、アディソンやスティールといった「低級」な文学者を中心に18世紀イギリス文学を描く著者の視点は頗る魅力的である(著者の専門はポープらしいが)。

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