オールスター
円熟と風格
35年ぶりの日本公演で健在ぶりを示したポール・ロジャース(左)とサイモン・カーク 撮影・辺見和彦
英国の大物バンド、バッド・カンパニーが35年ぶりに日本公演。初日となった18日のゼップ福岡ではパワフルな演奏を披露した。ボーカルのポール・ロジャースとドラムスのサイモン・カークに聞いた。(西田浩、公演評も)
元フリーのロジャースとカーク、元モット・ザ・フープルのミック・ラルフス(ギター)、元キング・クリムゾンのボズ・バレル(ベース)が1973年に結成。名バンド出身の人気者が集まり、スーパーバンドと期待され、初アルバムは全世界で1000万枚以上売り上げた。
ロジャースは「以前から注目していたラルフスと2人で曲作りを始めたのが発端。その後、布陣が決まり、バンドが動き出した時には、ブルースやソウルの要素を入れたロックンロールという方向性が定まり、それを貫いた」と振り返る。
短命に終わりがちなオールスターバンドだが、彼らは、ヒット作を連発した。「マネジメント会社とのトラブルやメンバー間の不和など、皆、以前に所属したバンドでは苦労したから、それを避ける努力をしたと思う」とカークは言う。
82年にロジャースが脱退した後、メンバー交代しながらバンドは存続。99年に結成時の布陣が結集したが、ほどなくラルフスが脱退してバンドは解散状態に。2006年にはバレルが死去した。しかし、08年に残る3人が集まって英国で1夜限りの再結成ライブを開いた。「その手応えが良かったし、評判も上々だった。自然な流れで、続けることになった」とカーク。
今年、ライブアルバム「ハード・ロック・ライブ」(WHD)を出し、英国、北米、日本と公演を重ねる。ただ、ラルフスが急病で来日できなくなり、一連のツアーにゲスト参加した元ハートのハワード・リースが穴を埋める。ロジャースは「ラルフスの分も僕らが頑張り、日本のファンを満足させるよ」と語った。
東京は、23日に三軒茶屋・人見記念講堂、25、26日に有楽町・東京国際フォーラムで。(電)03・3402・5999。
[評]音作り
隙なし
日本初日の福岡公演。ラルフスが欠けたことは、ファンにとって寂しいが、英米ツアーに参加しているリースは、バンドの曲を熟知するだけに、堂々とそして自然に役割を果たした。ソロ部分も、ラルフスの原型を尊重しつつ、より攻撃的な味わいを加え、存在感を発揮した。
歌唱力に定評のあるロジャースも60代になったが、衰えとは無縁。濃縮感のある伸びやかな歌声を駆使し、叙情味と野性味を自在に行き来する。カークのドラムを軸にするリズムも切れ味鋭く、アンサンブルに隙(すき)はない。
感心したのは、再生音源を使わず、4人の出す音だけで構成したこと。曲によってはキーボードが省かれていたが、編曲を工夫し、音の厚みを保っていた。そんなところにも、昔ながらのバンドの風格を感じた。
来場者の大半は40~50代だっただろう。「キャント・ゲット・イナフ」「シューティング・スター」などヒット曲が披露されると、ともに歌う声が会場に響く。客席もその年齢層を感じさせぬ熱っぽさなのだ。
約1時間半。ラルフスを加えまた戻ってきてほしいと願ってしまう秀逸な出来栄えだった。
(2010年10月21日
読売新聞)
関連ニュース
・
布袋寅泰、30周年記念ライブ第一弾は武道館!
・「【サブカルちゃんねる】特撮で一時代築いた円谷組の書籍出版」:イザ!
・「横綱も旅人もうごめく欲望!?」:イザ!