東日本大震災から1カ月半、ようやく再開した漁を海底のがれきが阻んでいる。20キロ以上沖合での底引き網漁でも、家財などが引き揚げられ、網を傷つける。沈んでいるがれきの規模は分からず、撤去のめどは立っていない。
岩手県釜石市沖でスケトウダラ漁を終えた75トンの沖合底引き網漁船(トロール船)が26日午後、同県の宮古漁港の岸壁に接岸した。魚を市場に下ろした後、10人ほどの漁師が網にかかったがれきを船から下ろし、港の一角に積み上げた。布団や一斗缶、車のシートもある。
この日、出漁した13隻のうち数隻の網にがれきがかかった。船長の男性(63)は破れた網の修復をしながら、「私が生きている間は海はきれいにならないんじゃないかな」と諦め顔だ。
宮古漁協によると、岸から約24キロ離れた沖でも、網にがれきがかかることがある。漁師は魚群探知機でがれきをよけながら操業しているが、それでも引っかける。がれきの影響で、水揚げ減は避けられないという。
同漁協の得田博・市場総務部長は「がれきを取り除くことは漁協では不可能だ。今後は、海中のがれきに浮きで印をつける作業も検討しなければならない」と話す。
岸辺近くで行われる養殖や定置網漁では、事態はより深刻だ。ワカメや昆布の養殖が盛んな宮古市の田老町漁協は、がれきの処理に頭を悩ませる。約600あった養殖施設は大津波で完全に破壊された。海中のがれきを処分しなければ、養殖の再開は難しい。小林昭栄組合長は「養殖再開のメドは立たない」と嘆く。
海底にはどのくらいがれきが埋まっているのか。岩手県水産技術センターは11日から、県の漁業調査船で、魚群探知機を使って海中の浮遊物や堆積(たいせき)しているがれきの現状調査を始めた。
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