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〈読書会〉おもしろ☆本棚

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11月の課題本 鏑木蓮『東京ダモイ』

2009-12-01 18:57:38 | ・例会レポ

第52回江戸川乱歩賞受賞作!

男は帰還(ダモイ)を果たし、すべてを知った。
自費出版に持ち込まれた原稿が60年前のシベリアと現代の事件を結ぶ。

舞鶴でロシア人女性の遺体が発見された。時を同じくして抑留体験者の高津も姿を消す。2つの事件に関わりはあるのか。当時のことを綴った高津の句集が事件をつなぐ手がかりとなる。60年前極寒の地で何が起こったのか? 風化しても消せない歴史の記憶が、日本人の魂を揺さぶる。
講談社


今年最後の課題本だというのに、「この作品がどうしてダメなのか、ということを後で話します」という、講師のとんでもない一言から始まった大荒れの例会でした。
前月に続き、3名の見学者の方も含めて出席者数は多く、その殆どの方が酷評したので、途中でなんだかもう一体感すら生まれた気がしましたが、その反面、完読した方もほぼ全員でした。
やはり、最後まで読むことと、その作品を気に入るかどうかは別のようです。

<最も多かった意見>
・人物の描写が未熟
・話のつじつまが合わない
・書きたいテーマを詰め込み過ぎている

<その他の意見>
・犯行の動機が弱い
・仕掛けや犯人がバレバレ
・話運びがもたついている
・2時間ドラマのようだ
・現実的でないことが多過ぎる
・着想や構想に振り回されている

根本的な問題の指摘が殆どで、本当に世にも散々でした。
決定的だったのは、シベリア抑留の話をこのような扱いで持ち出すことは実際に経験した人達に対する冒涜だ、という意見ではないでしょうか。
また、本作が乱歩賞の受賞作品だった為、賞の質が10、15年程前から確実に下がっているという話と共に、本来該当者なしというべきところを主催者側の事情でやむなく選んでいるのではないか、といった賞自体の意義を問うような意見も数人の方から出ました。

しかし、総合的な評価として多かったのは、可。
不可ではない、という不思議な結果。

<可とした理由>
・着想は良かった
・殆ど知らなかったシベリア抑留について知る機会となった
・それなりに良く書けている
・新人の作家として一生懸命書いている姿勢が感じられる
・よく調べて書いているようなので、社会派の作品等に方向転換すれば良いのでは

なにやら、あまりに厳しい評価に対するとりなしのような内容です。
でも、実際殆どの方が最後まで読まれたのは、もしかしたらこのようなところに起因しているのかもしれません。

<講師から>
・設定は上手だが、技量が足りない
・人物があまりに類型的
・シベリア抑留を扱ったことに対して
 →資料を読んで、可もなく不可もなく整理しただけ
 →この作品を読んで若い世代の人達が少しでも興味を持ってくれれば(戦争の悲惨さを風化させない一助になれば)、程度の価値しかない
 →敢えて扱うならば独自の姿勢を示すべきだが、それがない
・新人賞だからこそ個性を出すべきだが、それが全くない
・人間ドラマが全く描かれていない
・賞の選者は、読んでいないのではないか

厳しい意見ばかりでしたが、その一方でシベリア抑留について、山崎豊子の話から始まり、実在した俳句会や石原吉郎という詩人のことまで、大変貴重な話をして頂く機会になり、ようやく推薦者としては、少なからず選んだ甲斐があったように思いました。
読んだことのない作品なので特に思い入れがあったわけではありませんが、やはりあまりヒドく言われると落ち込むものです。

ところで、(作品と全く関係ないのですが…)二次会で「合ハイ」という魅惑的な言葉を初めて知りました。
やはり世代が違うと知識も視点も全然異なります!
というわけで、これからも色々な作品を通して、そのような良い驚きを経験できればいいな、と改めて思った次第です。


おもしろ本棚にご興味のある方は、コチラをお読みください!

 

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