いいもの見ぃ~つけた!

「いいもの」は探せばいっぱいあります。独断と偏見による個人的「いいもの」情報発信所です。

<経産大臣指定伝統的工芸品> 新潟 塩沢紬

2021-03-16 07:01:45 | 経済産業大臣指定伝統的工芸品

 「塩沢紬」

 日本三大紬の一つ『塩沢紬』とは?伝統工芸品として指定された高級紬

 塩沢紬(しおざわつむぎ)とは、雪深いことで知られる新潟県・魚沼市、塩沢地方発症の織物です。結城紬、大島紬と肩を並べる逸品で、表面に細かなシボ状の風合いが生まれるのが特徴です。

 このシボ状の風合いが着物の重なった部分で滑り止めのような作用を発揮し、しっかりと着崩れなく、体に馴染みの良い着心地を実現します。

 塩沢紬を織りなす工程は非常に多岐にわたり、それゆえに丁寧さと根気のよさが求められる気の遠くなるような織物となっています。

 

 塩沢地方の特徴から作られている 

 この工程の多さを実現するうえで新潟の「雪深く、冬が長い」ことは大いに関係しており、塩沢地方の「長くて半年間雪に埋もれる」という特徴から、家の中でじっくりと織物を作る…という習慣が根付いているわけです。

 外国でも、冬の時期にパッチワークなどの手間のかかる手芸を仕上げる習慣があるのと似ているかもしれません。

 摺り込み・括り(くくり)と呼ばれる作業により表面に施された十文字や亀甲絣などの細かな模様が美しく、派手さよりも落ち着いた上品なイメージを連想させる織物となっています。

 塩沢紬とは?

 本塩沢の特徴は、表面に現れた細かな十字絣の織りであり、この模様が上品で落ち着きのある表情を作り出します。表面には小さな縮しぼがあるため、着たときにさらりとした肌触りで夏の着物ライフを爽やかに彩ります。

 大正時代、麻織物の需要が少なくなった際に「越後縮の手作りの風合いを絹織物で出す」という目標のもとに努力を重ね、結城紬や京都西陣の技術の導入の末に誕生した「塩沢お召し」を前身としています。

 雪深い地方である新潟県・魚沼市 塩沢地方発祥のこの織物は、長い冬の間にいくつもの手間ひまをかけて仕上げられるものであり、現在でも全て手作業で生産がおこなわれているのです。

 しかし年々生産者や技術を受け継ぐ人の数が減少し、伝統工芸品の指定を受けているものの、今や「幻の紬」と呼ばれるほど貴重な存在になりつつあります。

塩沢紬の大きな特徴とは?
 塩沢紬を着物ファンの視点で語るのであれば、大きな魅力は「有名な織物でありながら有名になり過ぎた感のない、上品かつ高級なイメージを纏う」ことでしょう。

 塩沢紬は結城紬や大島紬と肩を並べる素晴らしい着物であることは間違いがないのですが、それら2つに比べるとやや”通好み”な織物です。
着物の表面に鮮やかに浮かび上がるような派手さはなく、落ち着いた風合いなので、人によっては地味という印象を受けるかもしれません。

 しかし、この落ち着きのある風合いを生み出すには途方のない手間ひまがかけられており、「わかる人にはわかる」贅沢で上品な着物なのです。

 塩沢紬のシーズンは夏とされていますが、現代では四季を通じて愛用する人も多く、着物通をうならせる味わい深さで多くの人を虜にしているのです。

 

 大島紬・結城紬との違いは?
 大島紬は見た目にも非常に豪華で高級感があり、その奥にいくつもの色が見えるかのような深い漆黒の泥染めが有名です。この泥染めは古くから日本女性の美を際立たせてきました。

 昔は奄美大島の島民が着用することはご法度で、薩摩藩へ上納するために生産されていたと言われています。それほど贅沢で高級な織物であり、そのイメージは現代へと受け継がれています。

 大島紬に比べると塩沢紬は見た目の派手さこそありませんが、掛かる手間ひまと思いは同じく素晴らしい織物でしょう。

 絹織物の一級品である結城紬は、どちらかと言うと”豪華絢爛”とは無縁の落ち着きのある佇まいを醸し出す織物です。この点は塩沢紬と似ている部分かもしれません。
 塩沢紬との違いは織物の表面の滑らかさにあるでしょう。塩沢紬が細かな縮しぼを有しているのに対し、結城紬はなめらかでよく馴染み、着るほどに美しいツヤを纏っていきます。

 このため、ツヤを出すために「一度寝間着にしてから外出着にすると良い」と言われることもあり、和の品格を湛えた落ち着きと絹のツヤの贅沢さを合わせ持つのが魅力です。

 

 紬の格について
 昔から絹の織物は高級品で、庶民が着ることはかなわなかった着物でした。しかし、紬は絹ではあるものの上等品には使用できないとされたあまりもののくず繭を使用したために、紬であれば庶民が着ても良いと認識されるようになりました。

 つまり、紬は一般的には庶民が着るカジュアルな服装のカテゴリに入ります。もっとわかりやすく言うのであれば、ジーンズを着るようなイメージです。
 現代でも正式なパーティー・お茶会などではしぶい顔をされることもありますが、色無地・訪問着・紋のない紬はおしゃれ着として認められつつあります。

 格調高い場にはやや厳しい面もありますが、気負わないカジュアルなパーティーなどには着ていくことができます。帯を少し上品なものにするなど、コーディネートでうまくバランスをとりましょう。

 

 塩沢紬以外の塩沢織の種類
 塩沢地方発祥の織物にはいくつかの種類があります。

 この章では、塩沢織にどのような種類があるのか、そしてそれぞれにどのような特徴があるのかを見ていきます。

 越後上布
 塩沢紬が誕生する前、麻織物の需要が高かった時代に誕生した織物です。歴史はとても古く、今でも奈良東大寺正倉院に宝物として保存されていることから、今より1200年ほど前には既に存在していたことがうかがえます。

 原料は苧麻(ちょま)と呼ばれるイラクサ科の植物であり、茎の皮の繊維を細く細く割いて繋ぎ合わせて糸状にしたものを用いるのが特徴です。この糸が細くなればなるほど織るのが難しいとされ、繊細な技術が必要だったことがわかります。
江戸時代には20万から30万反もの生産量があったという記録が残っているものの、現代では生産数が減少しつつあり、「幻の織物」と言われています。生地はとてもさらりとしていて、夏の着物として最高級の着心地を誇ります。

 昭和30年に国の重要無形文化財指定を受け、平成21年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されています。

 

 本塩沢
 本塩沢はもともと「塩沢お召し」という名前で親しまれ、表面に縮しぼのあらわれた特徴的な風合いがポイントの織物です。

 この縮しぼは生地を織るときによこ糸を強く撚り、織り上がった後に湯もみをすることでこの撚りがゆるくなって生まれるものです。

 さらりとした風合いや表面のしぼのおかげで肌に張り付かず、優雅で上品な佇まいを演出する夏の着物です。
 本塩沢の歴史は古く、1764年の記録の中に運上品としての記述があることから、江戸時代の塩沢地方ではすでに生産が始まっていたことがうかがえます。

 昭和51年には国の伝統的工芸品の指定を受け、後世に残していきたい繊細な技術をもって生産される織物となっています。

 夏塩沢
 夏塩沢という名前からもイメージできる通り、まさに夏の時期にぴったりの織物で、触ったときの独特のシャリ感と透け感が特徴的な織物です。

 夏塩沢は他の塩沢地方発祥の織物と比べると歴史が浅く、最初に生産されたのは明治時代であることがわかっています。

 現代から言えば100年ほど前ということで、古く伝統的な歴史を持ちがちな着物のなかではニューフェイスに近いイメージがあるかもしれませんね。
 たて糸・よこ糸ともに駒捻りと呼ばれる強い捻りをかけた糸を用いており、透け感とシャリ感がもたらす涼やかで爽やかな夏の風を思わせる風合いです。

 生地に透け感があるため、着こなす際には少しばかり注意が必要でしょう。

 下着などが丸見えにならないよう、居敷当てと呼ばれる布を仕立ての際につけたり、最初から透けることを想定したおしゃれな長襦袢、裾除けなどを活用する着こなしが人気があります。

*https://kimonodo.jp/kaitori/shiosawa-tsumugi/ より

 塩沢紬と言う名の精妙な織物
 塩沢の文人鈴木牧之いわく「雪と人と気力相半ばして名産の名あり」という塩沢紬。変わりゆく世の中で今でも色鮮やかに、たしかな技術が込められている逸品だ。

 
 織物の都、魚沼三郡の一つ塩沢
 平安朝の延長5年(927年)に完成した官制儀式の細則を記した「延喜式」。その調庸(ちょうよう)、つまり租税と交易品の中にすでに「越後の絹織物」「越後の麻織物」という言葉が明記され、越後の織物は品質がよいと評価されていた。また、蚕糸としても評価が高かった。はるか昔、平安の時代から、塩沢は織物の産地として有名であったことがうかがえる。同時に、その織物の技術は、厳しい寒さと、高く積もり行く雪の中で生まれ育ってきた、彼らの生活の糧であったともいえる。代々培われた塩沢紬について、塩沢織物伝統工芸士である中島清志さんに塩沢紬についてお話を聞いた。

 塩沢紬の独特の風合い
 塩沢紬の独特の風合いは「原料第一」の姿勢から生まれている。緯糸に使用する、真綿手紡糸。これは、かつて苧麻(ちょま)と言われる麻を手の爪で細かく裂き、糸にする苧積み(おうみ)と呼ばれる越後上布の技術が生かされている。この、塩沢紬の緯糸である真綿手紡糸は、真綿が手で均一の長さになるように引き伸ばされて、細く艶のある糸が紡ぎ出される。非常に根気のいる作業だ。経糸(たていと)には生糸、玉糸を使用する。経緯の使用する糸が異なるため、独特の風合いが生まれて、着て頂いたお客様からは「すそ捌きがよいと言われる」と中島さんは語る。


 繊細に織り込まれ、その姿をあらわす絣文様
 「十文字、亀甲(きっこう)絣を組み合わせ、蚊絣(かがすり)と呼ばれる細かな絣で柄を構成する」という絣。その絣技術は、昔ながらの手くくり、手摺込みの技法をもちいて、経絣糸、緯絣糸を一本一本ていねいに織り重ねて行くことで柄を構成する。柄としては、華柄や唐草、幾何学文様など様々なものを取り入れ表現しているそうだ。髪の毛のような細さの絹糸が繊細に織り込まれることで、その姿をあらわす絣文様は、まさに、贅を尽くした境地にあるといっても過言ではない。その文様の素晴らしさは、実際に目で見ることで何より理解できるのかもしれない。


 長い歴史の中ですでに完成されている
道具に関しても高機(たかはた)と呼ばれる織機(しょっき)を使用する。「自然に改良されて、糸に対して全く無理をさせないで織ることができる。」現在この塩沢紬に携わっている人たちも、幾度か更なる改良を試みたことがあるそうだが、最終的には現在使用している織機が一番、糸に無理がかからないで織ることができると言う。塩沢紬の作業は、糸が機(はた)にかかるまでに、幾多の人の手で作業されて完成に至る。「自分だけでやるものじゃないからね。次の人が少しでも作業がやり易いように考えて物作りをやっている。」ようやく到達した織も、慎重な集中力が必要な作業である。そのため、織り子さんの気持ちが平らでないと、織物も平らに綺麗にいかないそうだ。とはいえ、熟練した織子さんなら「機(はた)にあがると落ち着くようになる。」こうして、人から人へと受け継がれてきた伝統技術・技法、そして作業工程においても次の人のためによりよくつなげようとする心構えにより、塩沢紬は形作られていく。

 良い意味で、変えない部分
 もちろん、伝統の技術がそのままずっと続いているだけではない。「改良を加え、よりいっそうよいものを作ろうと日々たゆまぬ努力を続けている」と言う。また、最近消費者の嗜好が多様化しており、柄構成も変化していると言う。しかし、中島さんは「塩沢紬の地風と絣には今後ともこだわりをもって、物作りに励みたい。」と語っていた。塩沢紬の一番根幹となる部分は依然として守りつづけていこうという気概がそこに垣間見える。積み重ねてきた塩沢紬の長い歴史ゆえか、半世紀ほどもこの仕事に携わっている中島さんでさえ「一人前と言う感じはしない」そうだ。しかし、だからこそ「まだまだ挑戦していきたい」と意欲的に語った姿が印象的だった。


 職人プロフィール

 中島清志

 15歳からはじめてから半世紀、ずっとこの仕事一筋。

 こぼれ話

 機(はた)は神様

 織物関係の人たちの中では、機(はた)は神様という考え方を持っているそうです。そのため「小さいころに機(はた)の上に登るなと怒られたこともある」とおっしゃる伝統工芸士の中島さん。機神(はたがみ)に少しでも自分の腕が上達するように、布を少しとって神社に奉納して、自分の腕を祈願しているとのこと。また、この布を奉納することを奉納機(ほうのうばた)と言うそうです。この慣わしは、ずっと昔からあるらしく、様子は越後の文人鈴木牧之の著書の中でも書かれているとか。最近はやる人も少なくなってしまっているそうですが、中島さん自身は十数年前に「祈願しよう」という気持ちになり、塩沢にある松尾神社という機神(はたがみ)が奉ってある神社に奉納したそうです。

*https://kougeihin.jp/craft/0111/ より


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Jリーグって世界の中ではどの... | トップ | <漢字検定> 1級 読み 19.... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済産業大臣指定伝統的工芸品」カテゴリの最新記事