岡山市立市民病院 総合診療グループ(ER+GIM)

岡山市立市民病院の総合診療グループである『総合内科』と『救急総合診療科』の日常の雰囲気を伝えていきます。

『第1回総合内科セミナー in Okayama』(2014/09/06) と 岡山の総合内科事情①

2015-02-20 00:45:28 | 院外イベント
こんばんは。Dr.Waveです。

2014/9/06に岡山大学総合内科主催による『第1回総合内科セミナー in Okayama』が開催されました。

岡山における総合内科・総合診療科関連施設における教育・臨床・研究の相補的な連携システムの構築と新専門医制度に対応した新たな研修プログラム作りを目指して開催されました。

challenge的な企画でしたので、参加施設は岡山大学病院総合内科学講座、岡山市立市民病院、岡山済生会総合病院、岡山赤十字病院、岡山医療センター、福山市立病院と岡山市内と福山市内の有志となりました。
参加者は医学生・研修医含め25名ほどでした。

各施設の総合内科のコンセプトやシステムを紹介し、研修プログラム(今回は初期研修プログラムが主体でした)を提示しました。岡山大学総合内科学講座は、臨床研究や医学部教育も含めた取り組みや今後のヴィジョンについて提示しました。
セミナーの後半は福山市民病院総合内科の太田茂先生によるケースカンファレンスを行い、全プログラムが修了となりました。


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日本医療において総合診療医育成の必要が強く認識され久しくなります。国をあげて環境整備に取り組まれ、2015年度から新専門医制度が始まることとなりました。
現場では各大学、各市中病院が「総合」診療科を立ち上げ、研修システムやプログラムを構築しはじめています。

実際に「総合内科」「総合診療科」として軌道にのっている施設は全国的に限られています。各地域でネットワークや合同カンファレンスを開催し、コンセプトやシステム、ノウハウを共有し、キャリアパスの構築にいそしんでいるのが現状です。


岡山も同様で、各施設が独自に診療科を立ち上げ、総合診療医の育成に挑戦をしています(歴史的、人的、体力的に群を一歩でているのは岡山家庭医療センター(奈義)と倉敷中央病院(倉敷)です)。経営母体や人事環境もそれぞれに異なるため、個々に経験を蓄えている状況です。

総合内科は性格上、医療圏(人口や交通状況)、病院保有ベッド数、院内診療科数、救急応需率、夜間検査体制、研修医数、総合内科所有ベッド数・外来診察室数、病院全体のコンセプト(総合診療への理解度も含む)で診療体制が異なってきます。

また総合内科を含めた総合診療科は総合内科スタッフのみでは成立しません。専門診療科スタッフの理解度や協力により築かれる要素も多く、病院全体のコンセプトが反映されると考えられています。つまり各施設の総合内科は、「●●病院の『総合内科』」というように病院の顔となる診療科となります。

よって今回のような機会が岡山で開催された意義は非常に高いと考えています。実際、「岡山市立市民病院だからこその総合内科」、「福山市民病院だからこその総合内科」、「岡山済生会総合病院だからこその総合内科」を参加した医師スタッフ自身も考えることができました。

岡山市立市民病院が目指すものは当院の総合内科の繁栄ではありません。岡山の医療、いや日本の医療に寄与する人材の育成です。そしてその為に質の高い診療とサービスを行い、それらを教育できる病院となることです。

おそらく次回のセミナーは来年度になると思われます。今後このセミナーが岡山の医療の発展に寄与できるよう頑張っていきたいと思います。













































臨床推論と診断戦略

2015-02-17 12:08:45 | その他
おはようございます。Dr.Waveです。

今回は岡山大学での話題です。

岡山大学には総合内科学教室があります。Dr.Waveも毎週金曜日に連携大学院プロ

グラムの一環でお邪魔させていただいています。

総合内科学教室は、病院総合診療や臨床研究のみならず学生教育や女性医師支援プ

ログラムなども積極的に手掛けています。
その学生教育のなかに、全国の総合診療系分野で活躍する岡山大学の卒業生による

『臨床推論』の授業があります。

臨床推論は医療の基本でありながら、医師生活生涯にわたって研鑽を積み続けても

境地にはなかなか辿りつきません。
それは臨床診断には「確率」的な要素があり、そのための「decision making」と

「evaluation & adjustment」が必要となってくるからです。
近年「臨床推論」に加え『診断戦略』というteminologyも登場しています。

学生の間に臨床推論の「information collection and analysis」を身につけ、初期研修で「decision making」と「practice」、「evaluation & adjustment」のトレーニングを積むのが理想的です。

後期研修以降は、様々な制約や条件の中(時間的、心理学的、経済的、感情的など)で「decision making」☞「practice」☞「evaluation & ajustment」を繰り返すことで、臨床診療スキルを伸ばしていくのがよいと考えています。

後期研修プログラムではどうしても「practice」中心の専門スキルトレーニングとなるため、こうした「臨床推論」や「診断戦略」の機会を失わないような環境を用意しておくことが、今後の臨床教育では重要となってくると予想されます。

今回ご紹介する写真はちょっと前の時期になります。
2014/12/05に岡山大学医学部4年生に提供した臨床推論の授業です。
福山市民病院の太田先生、大津ファミリークリニックの中山先生、森の里病院の本山先生、亀田ファミリークリニック館山の菅長先生がコラボして授業が行われました。
医学生にとって、自分達に近い先輩方による授業であったため、リラックスして親近感を持って臨床推論を学んでいたように感じました。

来年はDr.Waveも参戦してみようと考えています。
自前の研修医と異なり、興味や熱意にばらつきのある学生の授業であるので、今まで違う新たな発見があると思われ楽しみです。
























新病院進捗状況(2015/02/16)

2015-02-17 00:23:18 | その他
こんばんは。Dr.Waveです。

来年度に向けて診療体制や臨床教育プログラムの調整に日夜取り組んでいます。
後期研修医・初期研修医の臨床教育のみならず、当病院に実習に来られる医学生の皆様にも「岡山市民病院ならでは」のプログラムを提供できるよう考えています。

もちろん患者様への診療サービスの向上は何より一番に考えています。

沖縄県立中部病院の伝説の指導医である喜舎場朝雄先生は、
ある本でこう述べています。

『初期研修プログラムは患者さんのためにある』

地域に良い医療環境を築こうと思えば、良い医師を育成していかねばなりません。
全ての医師の第一歩は初期研修から始り、実経験をもとに医師として成長をしていきます。

そして全ての研修には患者様が存在します。
患者様の受けるサービスの質は保証されなければなりません。

そのために臨床研修病院は指導システムを構築する必要があります。
レクチャーやケースカンファレンスを初期研修・後期研修プログラムとしてスタッフが提供し管理しなくてはなりません。

また研修医は患者様を診療するための義務としてプログラムに積極的に参加していかねばなりません。
場合によっては自分たちが受けたプログラムにフィードバックをかけて後進の研修医により良い研修環境を築いていかねばなりません。

岡山市立市民病院は、岡山の(いや日本の)医療の未来を築ける臨床教育病院として成長していきたいと考えています。


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さて、本日新病院に訪れました。
これまでは設計図のみで診療イメージを行っていましたが、今回初めて実際の建物の中に入ることができました。
各部屋や廊下の広さを体感し、患者様やスタッフの導線も確認しました。

診療サービスは真心からまず始まりますが、ハードの形態によっても内容は変わってきます。

岡山市立市民病院が地域の方にとって有益な施設になるよう今後とも頑張っていきたいと思います。
今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。









岡山市民病院ケースカンファレンス(2015/01/23)

2015-02-09 13:13:40 | 院内カンファレンス
こんにちは。Dr.Waveです。連投です。

1/23の『岡山市民病院ケースカンファレンス』は「低体温+低血糖+急性膵炎」の症例でした。

急性膵炎と診断され治療開始となったわけですが、低体温が敗血症の合併を示唆するのか膵炎由来でもよいのかが焦点となりました。
膵炎の治療では感染予防としてIPM/CSを用いているので、治療初期は同じ治療となります(もちろん真菌やウイルス感染症でなければですが)。
しかし膵炎改善後、敗血症としての2週間の抗菌薬投与すべきかどうかに「敗血症」診断がポイントとなります。
膵炎でも低体温をきたす報告はあるようですが、敗血症と厳密に鑑別はできるものではないようです。

当症例では血液培養は陰性でしたが、アルコール性肝硬変症と低栄養状態があり、臨床経過も1週間ほどの増悪期間があったことから、敗血症のリスクは高いと判断し2週間の投与を行いました。

低体温+膵炎であれば結局抗菌薬を2週間投与せざるを得ないのかもしれませんが、臨床経過と各種培養でしっかり感染症の可能性を評価していくことは如何なる場合にでも大切であることを再確認しました。

N村先生、プレゼンテーションのほどありがとうございました。


















岡山市民病院ケースカンファレンス(2014/12/26)

2015-02-05 22:24:22 | 院内カンファレンス
こんばんは。Dr.Waveです。本日も連投です。

同じく過去のケースカンファレンス報告です。


2014/12/26の「岡山市民病院ケースカンファレンス」ではRefeeding syndromeの様相を呈した症例をdiscussionしました。


精神疾患・認知症疾患を持った患者さんで気道感染症に罹患しながらも病院の受診までに時間を要し低栄養状態で入院となったケースでした。
感染症のコントロールとしてはそれほど難渋はしませんでしたが、入院後の栄養管理において電解質異常を併発したため全身状態が安定するまで点滴・経腸栄養管理の点で四苦八苦しました。

Refeeding syndromeを過度に恐れすぎると、低栄養状態からの回復が遅れ、廃用性症候群の進行を招きます。
栄養障害を伴う症例に関しては、それまでの臨床経過を吟味しながら、個々の病態に適した栄養療法を進めていく必要があります。
普段から如何なる病態であろうと栄養療法を計画的進め最終的に栄養療法の実施内容が適確だったかどうかを評価しておく習慣が重要となります。

近年病院内にNST活動が活発になってきていますが、これは今まで栄養療法に関して臨床教育が不十分であったこと、そして未だに課題であることを意味します。

岡山市立市民病院では医師のベーシックなスキルとして栄養管理を取り上げていきたいと考えています。


K原先生、プレゼンテーションありがとうございました。






















岡山市民病院ケースカンファレンス(2014/11/07)

2015-02-05 22:03:44 | 院内カンファレンス
こんばんは。Dr.Waveです。

探していた過去のケースカンファレンスの写真が出てきたので、遅ばせながら。。。。

2014/11/07にあった岡山市民病院ケースカンファレンス報告です。


この日の症例は発熱を主訴で受診され各精査の結果、EORA(高齢者発症関節リウマチ)の診断がついたケースでした。
診断に難渋した経過があり、もう少しで「不明熱」の領域に入るところでした。

今回はこの症例をとおして、いわゆる「不明熱」患者の診療の進め方を皆で勉強しました。

「不明熱」は定義はありますが、診療の質自体でその意義は変動することが多々あります。不十分な診療(とくに問診の上で)で、不本意な形で「不明熱」になっていることもありますし、単なる「フォーカス不明」熱となっていることもあります。

時によっては治療的診断を要する場合もありますし、時間経過を待たなくてはならない場合もあります。
膠原病の診断の進め方も知っておかねばなりません。

全国的に臨床研修病院として成熟している病院は標準的な「不明熱」の診療スタイルが確立しているところが多いのが現状です。

岡山市立市民病院でも標準的な診療方針を作っていきたいと思っています。

W邉先生、プレゼンテーションありがとうございました。









岡山市民病院ケースカンファレンス(2015/01/16)

2015-02-03 12:34:28 | 院内カンファレンス
こんにちは。Dr.Waveです。連投です。

1/16の『岡山市民病院ケースカンファレンス』は多発膿瘍の症例でした。

入院時にははっきりしなかった傍脊柱筋内の膿瘍が数日後の造影CTで顕在化してきたケースでした。

感染症診療ではフォーカスを同定することが重要ですが、入院時にどうしてもはっきりと同定できない場合があります。
どのようにフォーカスを同定していくか、日程を含めた検査計画・治療計画を組んでいかねばなりません。

一番避けたいのはCRPだけを見ながら「漫然」と抗菌薬を投与するスタイルです。臨床感染症がきちんと教えていないときは、よく見受けられたように思います。

最終的に当ケースでは腸腰筋、傍脊柱筋、骨髄、胸水にMSSAが感染していました。
ドレナージを適宜導入することで感染症のコントロールは上手くいきました。
今後は潜在疾患などの同定を行っていくこととなります。潜在疾患については、現在同定できなくても今後顕在化する可能性も踏まえてフォローしていかなくてはなりません。

「時間軸」を念頭に置いた診療計画を立てる意義を深く考えさせられたケースでした。


M田先生、プレゼンテーションのほどありがとうございました。









三豊総合病院臨床研修セミナー「MGH白熱臨床教室」(2015/01/09)

2015-02-03 11:34:10 | その他
ご無沙汰していました。Dr.Waveです
冬は受診・入院患者数が多くなり、病院システムの脆弱点が見えやすくなる時期であるので、いろいろ動くことが多くなります。


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さて、1/9(金)に三豊総合病院臨床研修セミナー「MGH白熱臨床教室」が開催されました。

三豊総合病院は香川県西端の観音師にある482床の効率病院です。香川県三豊保健医療圏の中核病院で圏域全体に高度の医療を提供するセンター的病院です。

その研修センターにはDr.Waveの同期の藤川先生がいらっしゃり非常に熱心に臨床教育を進めています。その藤川先生から今回お誘いいただき、私も参加してきました。

講師は徳田安春先生(地域医療機能推進機構研修センター長・総合診療教育チームリーダー)でした。
第一部はケースカンファレンスとベッドサイドティーチングで、第二部は「救急対応のピットフォール」と題して講義をいただきました。

徳田先生のカンファレンスや教育回診は個人的に複数回参加したことがありますが、いつ参加しても「新鮮」で「楽しく」「興味深く」臨床を学ぶことができます。
今回は個人的に「ティーチング(コーチング?)」という視点で徳田先生のカンファレンスに参加させていただきました。ホワイトボードテクニックのみならず、ワンポイントティーチングやリーディングテクニックなど様々な「技」を学ばせていただきました。

実はこうしたカンファレンスやセミナーは初学者が知識や考え方を身につける場になるばかりでなく、いわゆる指導者的立場にあるスタッフが教育の仕方を学ぶ貴重な場にもなります。
厚労省が提供する指導医講習会も非常に有用ですが、こうしたセミナーやカンファレンスから生の指導力を学び中四国の臨床教育の向上に貢献してきたいと考えています。


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三豊総合病院 卒後臨床研修センター
サイト:http://www.mitoyo-hosp.jp/rinsho/index.html
イベント:http://www.mitoyo-hosp.jp/rinsho/event.html

三豊総合病院は地理的実力的にも地域の砦であり非常に実践的な臨床研修を行うことができます。
瀬戸内海を見渡せる好立地であり、食べ物もおいしく、のどかな土地柄でDr.Waveも注目する臨床研修病院です。