岡山市立市民病院 総合診療グループ(ER+GIM)

岡山市立市民病院の総合診療グループである『総合内科』と『救急総合診療科』の日常の雰囲気を伝えていきます。

岡山市民病院ケースカンファレンス(2015/07/17)

2015-07-25 08:40:55 | 院内イベント
おはようございます。

本日と明日は2016年度初期研修プログラムの病院実施試験日であり、
Dr.Waveも傍らながら参戦予定としています。
選び選ばれる者がそれぞれに責任と任務を自覚することが良い病院につながると認識しています。


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7/17のケースカンファレンスは「眼瞼筋と顔面筋の障害と貧血と眼底出血」を主訴に紹介された一例でした。
複数の主訴をどのように病態診断につなげていくかが大きなテーマとなりました。

病態診断は「Occam's razor」⇒「Hickham's dictum」で進めていくのが基本です。
「Occam's razor」は50歳以下、「Hickham's dictum」は50歳以上にあてはまりやすいと言われています。
この時勢ですので、ご存知の方が多いかもしれませんが、簡単に「Occam's razor」と「Hickham's dictum」について説明しておきます。

「Occam's razor」は「オッカムの剃刀」が和訳で、14世紀の神学者ウィリアム・オッカムは提案した科学的なモノの考え方です。
ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでないという原則指針です(Wikipedia引用)。
「剃刀」は説明に不要な存在を切り落とすことを比喩しています。
思考節約の原理や思考経済の法則と呼ばれることがありますが、医学においては)「一つの原因は観察されるすべての事象の源である」「複雑な病態を想定するのでなく、なるべく一元的な病態を考える」という臨床推論原則となります。

「Hickham's dictum」は「ヒッカムの格言」が和訳で、20世紀の医師、ジョン・ヒッカムが新たに唱えた現代的な格言です。
「どの患者も偶然に複数の疾患に罹患しうる」「どの患者も偶然に複数の疾患に罹患しうるため、症状に対して複数の原因を探すべき」という臨床推論原則となります。

いずれも方法論を示すテーマであり、結果を導くことが主目的であることを忘れてはなりません。
実際の医療現場では、どちらの方法論で病態解明にいたるか、どのタイミングで考え方を切り替えるか、もしくは最初から両方の方法で鑑別をあげておきながらどちらの推論を優先とするかが課題となります。

この際大切なことは『臨床推論はあくまで「推論」である』ということです。
臨床推論は「臨床経過」(実際の「結果」の集まり)から評価をせねばなりません。
臨床推論が正しいかどうかを示唆する「治療指標」「臨床指標」を決めることが重要事項となります。
こうした初期臨床推論後の診療方針(治療方針)の検討・調整も含めて、「診断戦略」「臨床戦略」と呼ばれます。

現在臨床推論トレーニングは学生時期からしっかりされる時勢となっていますが、この「戦略」トレーニングはやはり研修医からが本番となります。
総合内科ではこうした「診断戦略」や「臨床戦略」についても初期・後期の研修を通して身につけていけれるように研修環境を整備していく予定です。

ちなみに当症例では悪性腫瘍が多発転移を起こしていた病態でした。
一元的に説明がつかず、複合的に評価をしていたら、一元的に病態を認識できたという流れでした。

F林先生、プレゼンテーションのほどありがとうございました。












岡山市民病院ケースカンファレンス(2015/07/10)

2015-07-23 18:04:44 | 院内カンファレンス
こんばんは。Dr.Waveです。

日々が過ぎるのは早いです。
充実している証拠だと思っています。
ということで、だいぶん記事がたまってまいりました。


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7/10のケースカンファレンスは「多発膿瘍」の一例でした。

散在する膿瘍部位は同定されたものの侵入部位を示唆する臨床症状や経過なく、総合診断に一時難渋していました。
最終的には胆管内空気を元に胆道十二指腸瘻が診断され、胆管炎からの肝膿瘍・全身多発膿瘍をきたした病態であると診断されました。


感染性心内膜炎などのBSI(Blood Stream Infection)や多発膿瘍の場合、侵入部位の同定を行う必要があります。
感染症のフォーカス診断の基本は現病歴と身体診察です。
臨床症状や経過から推測しにくい場合は、外腔と交通・接触がある部位を「身体診察」を含めて丁寧にスクリーニングを行っていく必要があります。特に見落としやすい頭頸部、皮膚軟部組織(見えづらい場所)、胆道系、小腸、生殖器、肛門などは留意しておかねばなりません。


「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ」『星の王子さま』(サン=テグジュペリ作)

医学的に言えば

「鑑別診断を持って見ないと、病態はよく見えないってことさ」

S野先生、プレゼンテーションありがとうございました。













岡山市民病院ケースカンファレンス(2015/07/03)

2015-07-09 20:41:05 | 院内イベント
こんにちは。Dr.Waveです。

7/3のケースカンファレンスは重症肺炎の一例でした。

重症肺炎の場合、初期対応が重要です。
治療が遅れるほど予後が悪くなります(当たり前ですが)。

呼吸困難のため、ご本人からの病歴聴取は難しく、ある程度のブラックボックスを抱えたままの治療開始となることが多々あります(来てすぐ挿管ということも多々あります)。
こうした場合、いわゆるempric therapyとなり、MEPM+LVFX+VCMのmenuとなります。
しかし、これだけで不十分な場合もあり、病歴から真菌などの可能性も疑った場合、MCFGやST合剤の投与も考慮せねばなりません。

家族や関係者から少しでも情報を聞き出し、予想しうる病原微生物の候補を列記しておかねばなりません。
もちろんBroadな抗菌薬使用をする際には、後日de-escalationができるように必要な培養検査と抗体・抗原検査、PCR検査を提出しておかねばなりません。

重症肺炎診療で気を付けるポイントは、「重症肺炎=感染性肺炎」という単純な状態でない場合もあるということです。
「感染性肺炎に見える」肺病態として、血管性、リンパ管性、間質性、腫瘍性のジャンルで考えていかねばなりません。血管性として心不全・ARDS・肺塞栓症、リンパ管性として癌性リンパ管症、間質性として免疫性肺炎・薬剤性、腫瘍性として血管内悪性リンパ腫などです。
とくにこれらは治療内容が異なるため、鑑別診断にあげてチェックしていかねばなりません。



脳梗塞や心筋梗塞と同様、重症肺炎のように時間の経過が結果を左右する病態については普段から一連の流れを勉強しておかねばなりません。
岡山市立市民病院ケースカンファレンスではこうした重要緊急疾患を定期的に取り上げ救急外来の診療スキルのボトムアップをはかっていきたいと思います。


準備したY崎先生、プレゼンテーションのほどありがとうございました。


今回は写真を撮り忘れてしまいました。ある日の回診の風景の写真を載せておきます。


OCH救急地域連携カンファレンス(2015/07/02)

2015-07-07 23:42:38 | 院内カンファレンス
こんばんは。Dr.Waveです。

7/2は新病院になって最初の「OCH救急地域連携カンファレンス」がありました。

岡山市の救急救命士と当院の医師・看護師とで、ケースカンファレンスやレクチャーを行っています。
ケースカンファレンスでは、「病院前救急」「救急外来診療」「入院後診療」とカテゴリーに分けてディスカッションをできるようにしています。

救急診療は患者さんと接触した時点から始ります(正確には第一発見者との接触の時点からですが)。
現場で患者さんと接触してからどのように対応しどのように搬送しどのように救急外来で対応するかを特に重点的に話し合います。
いわゆる『病院前救急』と呼ばれる領域です。
医師として、病院で救急搬送を受けるだけでは知ることの出来ない事を多く学ぶことができます。

今後もこのカンファレンスでしっかり勉強していきたいと思っています。




























第2回総合内科セミナー in Okayama (2015/06/27)

2015-07-01 14:59:58 | 院外活動
こんにちは。Dr.Waveです。

6/27にマスカットキューブで『第2回総合内科セミナー in Okayama』が開催されました。
48名の方(内訳:学生14名、研修医14名、医師20名)にご出席いただきました。
参加した施設は、岡山市立市民病院、岡山済生会総合病院、岡山赤十字病院、岡山医療センター、福山市民病院、香川県立中央病院、藤井病院でした。

このセミナーは、岡山を中心とした地域の「総合内科」の診療システムや研修プログラム内容の発展を目的に開催されています。
各施設の「総合内科の研修プログラム」や中四国での「総合内科医としてのキャリアパス」を考えることができるようにコンテンツを準備しています。
またケースカンファレンスをとおして、総合内科における臨床診療学(臨床推論や診断戦略、治療戦略)が分かるように設定しています。
セミナー終了後には、懇親会を開催し、直接ディープな話を聞ける機会を設けています。
セミナーに先がけて30分間の「世話人会」を設け、各病院の総合内科の進捗状況を意見交換しています(かなり参考になっています)。

セミナー自体は前半は各施設の総合内科の『後期』研修プログラムの紹介を行いました。
各施設が、それぞれの特徴を活かした研修プログラムを用意していることを再確認しました。

後半は昨年と同様、福山市民病院の太田茂先生にケースカンファレンスをしていただきました。
医学知識のみならず、診療のやり方についても色々学ぶことができました。

懇親会では、懇親会ならではの情報交換ができたと思います。


昨年からチャレンジ的に開催している『総合内科セミナー in Okayama』ですが、総合内科に関心のある人や関わっている人のニーズに沿えるよう、今後とも発展させてまいりたいと考えています。