こんばんは。Dr.Waveです。
今日は2015年度最初の「岡山市民病院ケースカンファレンス」がありました。
セレスタミン常用者の慢性副腎不全の一例でした。
ちょうど年度がわりで精神科研修で他施設勤務中で準備が大変だったO先生、プレゼンありがとうございました。
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今日はカンファレンスについての考え方について述べます。
カンファレンスは「準備」と「進行」が重要です。
「準備」と「進行」を怠るとカンファレンスの参加者は減り、カンファレンスのパワーは減ってしまいます。
「準備」の際に気をつけること:
①参加者が見やすいフォントと大きさにすること。
②スライドの背景に凝り過ぎないこと。
③簡易な文章にすること。例:×「気がついたら発熱しており救急車にて当院へ搬送されました」→○「発熱あり、救急搬送されました」
④現病歴は時系列で分かりやすくする。付随症状は質問で受ける。
⑤既往歴で発症時期が大切なものは必ず記載。基本的に全て記載するほうがよい。
⑥薬剤歴では「一般名」記載がよいが、「商品名」で記載する場合は「®」バを必ずつける(一般名がジェネリック薬品名になっている場合がある)。
⑦薬剤歴で薬の種類が多すぎる場合は、キードラッグだけにしぼる。
⑧イタルサインは必ず記載。
⑨身体所見はbasic findingは必ず記載。「特記事項なし」は避ける。
⑩神経学的所見は身体所見とは別に記載。
⑪「主訴」「現病歴」「既往歴」「身体所見」まではスライドの上に「年齢・性別(主訴はどちらでも)」を載せておく。
⑫検査所見に入る前に一度「problem list」をまとめておく。
⑬最初に提示する検査所見はsimple testのみとする。採血・採尿検査(当日に結果が出るもののみ)、レントゲン、心電図の順番とする。
⑭画像検査は無駄な箇所はトリミングを行うこと。時に拡大して見やすくすること。CTで特定の所見を示しておきたいときは矢印や円で示すこと。
⑮臨床推論がメインの場合は一旦ここで「problem list」をまとめ、追加検査についてdiscussionする。
⑯入院時に外来でCTやMRIなどをした場合は提示し、治療経過に入る前に「入院時診断」を疑い病名でもよいので提示しておく。
⑰治療経過は参加者が議論しやすいように治療内容を記載する。補液であれば内容は必ず記載。抗菌薬であれば用量を記載。
⑱併発疾患が多くて治療経過が複雑になって議論のポイントがぼやける場合は差し支えない病態は別のスライドに分離しておく。
⑲考察に入る前に必ず「最終診断」を記載する。
⑳考察は教科書を見れば分かる内容は短めにする。
㉑考察は診療達者なスタッフが参加していても楽しめるように「文献的考察」や「(最新の知見的な)病態生理」を入れておくこと。
㉒引用文献は出来る限り載せておく。
㉓「take home massage」で締めくくる。
つまり、プレゼンターは、「参加者に情報を効率良く把握でき、議論をしやすい環境(スライド)を用意」します。
よって自分のスライドで参加者がどのような議論を行うかは想定して準備せねばなりません。
議論に必要な情報は何か。足りない情報はないか。足りない情報があれば、カルテで確かめたり、場合によっては患者さんに再確認をせねばなりません。
入院時のことでどうしても確認できない事項があれば、最終診断に基づきどのような情報となりえるかを想定しスライドに提示せねばなりません。「入院時は私が診察していないので分かりません」は議論を止めることになるので避けましょう(もちろん論文や学会発表では虚偽の報告はいけません)。
治療経過が文章で把握しにくい場合は「必ず」経過表を準備しましょう。その際臨床経過を示す「治療指標」は2-3個にしぼることです。
また議論をするのに邪魔なものや無駄なものは省く必要があります。
簡潔な表現を用いるのは当然として、無駄なアニメーションは控えたほうがよいでしょう。
また臨床経過では併発疾患があっても敢えて省略することも行います(そのカンファレンスで何を議論するかを事前に明確にしておく必要があります)。
「進行」について気をつけること:
①前もって起こりうる議論を想定しておくこと。
②議論のポイントを設定しておくこと。そして経過時間を想定しておくこと。
③議論が脱線していくようであれば、その議論に一旦「小括」をし、元に戻すこと。
④脱線した議論が想定外に「有意義」になる場合もあるので、その場合に省略する他のパーツを想定しておくこと。
⑤「年齢、性別、プロブレム」はホワイトボードに記載していくこと(スライドは流れるので、議論の基点を作りにくい)。
⑥鑑別診断もホワイトボードに記載していくこと(同上)。
⑦カンファレンスの開始時間はきっちり守ること(時間を守った人が損をしないようにすること)。
⑧カンファレンスの終了時間はきちんと守ること(いつも延長すると、予定が組みにくくなり参加する気が失せる)。
⑨プレゼンターに感謝をして拍手で終わること。
どんなに「準備」して素晴らしいスライドを用意していても、当日の進行が今一つであればカンファレンスの収穫は減ってしまいます。
「進行」を上手に行うことで、プレゼンターに大きなフィードバックがかかり、第二の学びが得られます。
最後の参加者の心得について述べたいと思います。
参加者はカンファレンスの主旨を理解する必要があります(臨床推論が主体か、診療内容の議論が主体か、最近の知見の意見交換が主体か。ちなみに岡山市民病院ケースカンファレンスは複合型です)。
質問やコメントは、プレゼンターへの敬意として行わなくてはなりません(プレゼンターへのフィードバック)。
プレゼンターの労に感謝をして、遅刻などはしてはなりません。
カンファレンスはプレゼンターと参加者でつくる最高の「学び」の場です。
岡山市立市民病院はこのケースカンファレンスを大切に育てていきたいと考えています。