東京の田舎から

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電気屋に手を出された産業は衰退する

2018-10-04 19:06:54 | 時事問題
従来からあった「機械装置」を電気によって駆動すると精度が上がり、そして、便利になるものが多い。例えば時計である。従来は機械仕掛けであった。そして、歯車の軸受けには宝石の一種であるルビーが使われていて、21石だとか17石とかの表示がされていた。この石の数が多い程、高級品と認識されていた。しかし、精緻な機械である時計に、電気屋が手を出した。電気仕掛けでは水晶振動子の正確な振動を利用して、デジタル信号でモーターを駆動する。このため、時計は極めて正確に時を刻む。かくして、ファッションとしての高級時計を除いて、機械式の時計は見られなくなってしまった。
 そして、甚だしきはコンピュータである。今、私たちの机上にあるパソコンは、一昔前のスーパーコンピュータに相当するものである。当時は、IBMという米国企業が世界のコンピュータ業界を席巻していた。日本国内のコンピュータ製造会社の売上高が、IBM社の研究開発費と等しい等と言われていた時代もあったのである。このIBM社は、元々は自動機械製品を製造していた。自動小銃やカービン銃、パンチカード関連事業、機械式の計算機などを製造していた。その後、トランジスタの発明があり、これを利用した電子計算機を開発し、その製造を始めた。そして、世界一のコンピュータ製造会社となったのである。その当時のコンピュータと言えば、広大な部屋を必要とするような大型の装置であり、その当時でさえ、2桁の億円もする高価なものであった。この2桁の億円・・・今の物価に換算すれば、3桁にもなるであろう。その、莫大な売り上げによって、研究開発投資を行ったのである。その結果、自らの首を絞めるが如く、何と、机上に乗せて使えるものにしてしまったのである。現在のパソコンは、精々が2桁の万円である。価格が1万から10万分の一になってしまった。こうして、コンピュータの覇者であったIBMは、自らの研究開発の成果として「覇者のいない産業」にしてしまった。
 
 さて、次は自動車である。自動車のエンジンとその周辺技術は途方もなく難しいものである。日本人は当然の如くに思っている人が多い。しかし、自動車を完全に作ることができる国は数える程である。中でも日本製は高性能で、比較的安価であり、しかも故障しない。世界の利用者の支持を得て当然である。そして、自動車だけで、日本の輸出総額の15.1パーセント、関連する部品や材料などまで入れると25パーセント以上である。輸出品の1/4強が自動車とその関連製品である。しかし、多くの自動車を輸入している米国はこれを歓迎していない。そして、輸出規制だ・・関税だ・・と圧力をかけている。ところが、もっと狡猾に日本の自動車の優位性を失わせるべく、電気自動車を推進し、「電気自動車は環境に優しい」などという不確かな情報と共に、規制強化などを行って、従来からの自動車産業を潰すべく、躍起となっている国がある。ヨーロッパ諸国と中国である。
 電気自動車にすると使用する部品点数は1/3となるとのことである。そして、最も技術的に難しいエンジン・・・内燃機関が不要となる。電気モーターと蓄電池、車体だけで作れてしまう。いわば、誰でもが参入できる製造業となってしまう。ここでも、電気が機械の産業を奪うのである。そして、恐らくは安価になって、儲からない産業になるであろう。
 大型のコンピュータがパソコンとなり、儲からない商売となり、安価さだけが「売り」の中国やアジア諸国に取って代わられたのと同じである。
 自動車も同じ轍を踏むのであろうか? 但し、内燃機関は、その強力な始動トルクがあり、利用者の嗜好による意思はどちらに付くかは不明である。

 しかし、もし、電気自動車が主流になったとき、その充電に要する電力のことは余り論じられていない。この電力は莫大な量になる。発電所と送電線の増強が必用であり、今ある電力ネットワークを再度一つ作る程の設備の増強が必要になる。このことは論じられていない。電気はコンセントに接続すれば供給されるとでも思っているのであろう。否、何も考えていないのかも知れない。
 そして、日本では、原子力発電所の新設が難しい世論である。火力発電で発電するとすれば、二酸化炭素の排出は増大する。一方では、「二酸化炭素の排出を抑制せよ」と主張し、その一方では「二酸化炭素の排出が格段に少ない」「原子力発電は反対」である。そして便利さだけは維持したいのである。矛盾も甚だしい主張である。
電気自動車は、確かに走行中には二酸化炭素は排出しない。しかし、その分、火力発電所で排出されるのである。決して環境に優しくはない。これも、電気自動車推進を企む輩の情報操作である。
 このように、電気屋が参入した産業は、社会に様々な波紋を生起して、産業を衰退させ、新たな矛盾を生起してしまう。これからどうなるのであろうか?

自動車産業は、電動化が進めば、当然に、難しいエンジンは不要になる。このことは、自動車は極めて簡単に製造できることになる。すると、今の自動車産業は衰退してしまう。日本の輸出の1/4 を占める自動車産業が推定することになる。当然に外貨は稼げない。外貨がなければ石油の輸入はできなくなる。そもそも、石油の生産量は、ピークをつけていて、近い将来、価格は暴騰するとみられている。
日本は、原子力発電の全廃を目指していて、発電は火力である。外貨がなくなれば石油は輸入できない。電力不足なる。電気自動車は走れなくなる。このような時代が迫っていることに国民の多くは気づいていない。
政治家も不勉強で、こりことを言わない。
現状のまま推移していけば、近い将来、自動車は走れない時代となるのかも知れないことは覚悟しておくべきである。