深夜、ツイッターの画面に流れてくる彼の言葉が、なぜかまっすぐにストンと心に落ちてくる。
読みながら、しばらく涙が止まらなかったツイートをご紹介します。
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最近のぼくのTwitterやブログの記事を読んで、
反原発のことばかり書くなという人が少なからずいることは承知しているつもりだ。
暗い気持ちになりたくないと。
しかし、事態はぼくらが考えているレベルを遥かに超えている気配である。
東電も大手マスコミも政府も
「福島原発事故処理は工程表の通り順調に進んでいる」
「来年1月までに低温安定化できる」と楽観的な「全くのウソ情報」を
意図的に流している。
多くの日本人はこれを信じていて、福島原発事故が
いかに深刻な状態であるかということに気がついていない。
ぼくの今の正直な気持ちを書くが、脱原発だとか反原発だとか、
本当はもはやそんな暢気なことを言ってる場合ではない。
建屋が台風などで倒壊し6400本の使用済み燃料棒が地上に転がり落ち、
大気と触れれば中性子と反応して核分裂が起き、決して大げさではなく
日本どころか北半球全体に生物が住めなくなる可能性がある。
福島第一では、合計合計10421本もの使用済み燃料棒が
原発内各所プールに保管されていると言われている。
日本各地の原発が同じような状況で、本当のことを言えば原発を止めたって
止めなくたって状況はほとんど変わらない。ぼくらは幸運なことにも、
首の皮一枚でつながっているにすぎないのだ。
8月14日に、福島第一原発敷地内で「地割れ、水蒸気が噴出している」
という情報が流れた。メルトアウトした燃料がどこまで行っているのか
誰にもわからず、これが水脈に触れれば再爆発の懸念がある。
チェルノブイリではぎりぎりのところでそれを阻止したわけだが、
犠牲となった多くの軍人が命を落とした。
菅首相は14日夜、民主党若手議員らと会食し
「東京、神奈川から3千万人が移住するような事態も想定して決断しないといけない。だから『脱原発』なんだ」と述べたそうだ。
おそらく「地割れ、水蒸気が噴出」という状況を前提にしての発言だろう。
そうなった場合、首都圏の3千万人の他に、東北1000万人。
北関東700万人。北新潟100万人、合計4800万人もが
移住しなければならなくなる──という人もいる。
年内にそういう事態を迎えたとしても、決して不思議ではない。
都内の大気汚染、土壌汚染も急速に進んでおり、
本当は目黒区や世田谷区だって子供が暮らしていていい場所ではない。
計画的避難地域に指定されていない福島市、本宮市、郡山市は
じつは壊滅的な状況で人々は即刻脱出しなければならないレベルだ。
三陸沖から静岡の辺りまで、太平洋側では海水浴は絶対にNGです。
日本海側の魚からも複数の核種が検出され、汚染された瓦礫や腐葉土や
牛肉が意図的に全国に流通している。がれき処理法案が可決した。
東日本の汚染は深刻で、命綱は西の食料しかないというのに、
これは放射能と発癌の因果関係を意図的に隠蔽する立法だとしか思えない。
反原発? 脱原発? もう手遅れかもしれない。
日本列島の汚染状況は既にチェルノブイリを超えている。
東北を復興しなければならない。しかし三陸沖で獲れた魚を誰が買うというのか。
漁業も農業もアウト。それで復興なんて何十年かかるのだろう。

しかし、暗い顔ばかりしていても周囲の人達に申し訳ないので
「原発を止めよう!」とぼくはむしろ空元気を出しているのだ。
福島原発の原子炉4基からは今でも放射性物質が放出されている。
テレビや新聞が報道しなくなった今も、放射性物質の飛散は終わっていないのだ。
東電や経産省や日本政府は「炉心を取り出すまでに10年はかかる」と
言っているが、嘘をつくな。炉心を取り出す技術などないではないか。
ようするに、重要な事実は、東京電力福島第一原発は今の技術では
廃炉にできないのだ。それが世界が正視しなければならない
現実なのではないか。
福一は、撤去の前提となる原子炉の安定すらできずにいる。
にもかかわらず、東電や政府関係者は根拠のない発言を続けているのだ。
ぼくらは今後何世代にもわたり、福島第一が出しつづける放射能に
冒されつづけ。福一には、普通の意味における「廃炉」という概念は
当てはめられない。ドロドロに溶けた燃料が流れ出し、
それをどうやって「取り出す」のか、誰にも分からないのだ。
この絶望的な状況をどう生きていけばいいのか──。
絶望的な列島の中で自らの生命と引き換えに出来る価値はあるのだろうか。

反原発の話は暗いだろうか? まさか。
むしろこういう状況下で「原発を止めよう」なんて言うのは、あまりにも
ノーテンキなのだろうと思う。止めようが止めまいが、
深刻な危機は音もなく進行しているのだから。
ストーンズの「ミス・ユー」という曲に、こんな歌詞がある。
「俺は時々自分に言ってみることがある。『どうしたんだよ、ボーイ』ってさ」
今のぼくも同じ気分だ。必死の思いで元気を出して、時々自分自身に
言ってみるのだ。「原発を止めようぜ!」ってね。
原発を止めよう。日本列島からすべての原発をなくそう。
そこにしか、希望はない。
作家 山川健一