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学生無年金障害者訴訟、東京高裁が原告側逆転敗訴判決

2005-03-25 13:07:03 | Weblog
○学生時代に障害を負いながら、任意加入だった国民年金に加入していなかったために障害基礎年金を受け取れなかった「学生無年金障害者」3人が、年金を支給しないとする決定の取り消しと、1人2000万円の損害賠償を国に求めた訴訟の控訴審判決で、宮崎公男裁判長は「学生無年金障害者に障害基礎年金を支給しないのは、国会の裁量の範囲内で違法ではない」と述べ、3人に各500万円を支払うことなどを命じた一審・東京地裁判決を取り消し、請求を棄却するという原告側逆転敗訴の判決を言い渡した。

 高裁判決は、年金制度への国会の幅広い裁量権を認め、「障害基礎年金を支給しないことが、法の下の平等を定めた憲法に違反するとはいえない」と述べた。

<解説>
 昔からずっと国民年金は20-60歳の人は強制加入でした。
 しかし、現在とは違い、昔は任意加入(入っても入らなくてもいい)という人が沢山いたのです。
 その典型例は、
 1.学生
 2.サラリーマンの妻(専業主婦)
 そして、そもそも加入の対象になっていない人
 3.外国人  でした。
 
 1,2については任意加入してなければ、3については日本国籍を取り年金に加入していなければ、障害者になっても年金がもらえなかったのです。

 ただ、1,2,3の人が強制加入になってないことにも当時それなりに理由がありました。

 1の人を強制加入にしようとすると、学生はお金がありません。無理に加入させれば滞納者続出。実際後で学生が強制加入となり滞納率は上がったと聞いています(今は学生納付特例という制度がありますから強制加入だけど納付を猶予されるという扱いです)。学生は若いですから、自分が障害になったりまで考えたりしないのです。

 2の人は、夫に扶養されているんだからなんで私たちのような稼ぎのない人がお金を払う必要があるの。という理由をいう人が多かった。特に昭和の後半までは、「夫婦の関係」を、金については夫が稼ぐものという形で見る人も多かったそうです。そういう人まで全員を「強制的に加入させる」のは抵抗があったのだと思います。

 3の人は、長期滞在者や永住権のある人が対象ですが、加入したかった人まで拒絶したのは問題です。しかし、「我々は一旗上げたら祖国に帰る。なんで日本の年金なんか入らないといけないんだ」という強い抵抗をされる人も多かったのだそうです。当時こういう人を全員強制的に入れるのも難しかったでしょう。

 私が年金を勉強し始めた時点ではすでに1,2,3の人の解決はついていた(今は全員が加入です)のですが、上のような当時の状況を考えると、もちろん何らかの救済は必要ですが、「損害賠償までするほどの、国会に不作為があったか否か」については判断を悩むところです。
 今からみたら、「なんだ、不備だらけでしょうがないな」と思えることも、当時の思考方法では「当たり前」と思うこともいろいろあります。
 救済が遅れたということは否めませんが、それを損害賠償に転化できるのか、できたとするならいくらくらいなのか。

 昨年の臨時国会で、学生無年金障害者などを救済する「特定障害者給付金法」が成立。今年4月以降に手続きをすれば、1級障害者は月5万円、2級障害者は月4万円を受け取ることができるようになったので一応法律的な解決は見ているのですが、なかなか難しい問題です。

 原告は最高裁に上告するようで、その判断を注目したいと思います。