沼隈文化財研究所

「温故知新」
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「御領遺跡(ごりょういせき)発掘調査」現地説明会

2008年12月20日 | 発掘調査情報
「神辺御領遺跡(かんなべごりょう遺跡)」現地説明会が開催されました。

日時:平成20年<2008>12月13日(土)13:00から
場所:福山市神辺町下御領
調査主体:財団法人広島県教育事業団、福山市教育委員会

1.「御領遺跡(ごりょういせき)」について

 「御領遺跡」は、国道313号線道路改良工事に伴い福山市神辺町下御領に
於いて、平成20年<2008>10月20日から調査を実施しています。
 この「御領遺跡」は、高屋川によって形成された沖積地にあり、東西約1.6Km、
南北1.4Km、の広範囲な面積を有する県内最大規模の遺跡です。

 また、「御領遺跡」は、井原鉄道建設や住宅の建設に伴い、発掘調査が行われて
おり、縄文時代から中世・近世に至る数多くの遺構・遺跡・遺物が確認されています。

 今回の発掘調査は、「御領遺跡」の中でも西端部に位置し、遺跡の西側を流れる
堂々川(どうどうがわ)の氾濫原に近接した地域にあたります。

2.調査の概要

 今回の調査により、縄文時代後期末頃の竪穴住居跡(SB1)1棟と土坑3基、
弥生時代後期の土坑(SK1)1基、古墳時代前~中期(4~5世紀頃)の住居跡
6棟(SB2~5、SB10~11)、掘立柱建物跡4棟(SB6~9)、その他多数の
柱穴、自然流路を確認しました。

 1)縄文時代の住居跡(SB1)は、不整形な円形(径約5m)で柱は6本と考えられ
 条痕土器や石器などが出土しています。

 2)弥生時代後期の土坑(SK1)は、北半分が浅い掘り込みで、南半分は円形に
 深く掘り込まれており、南半分は井戸の可能性が考えられています。
 溝や井戸の可能性と考えるのは、大型土器が出土し、井戸の場合には廃棄による
 土器の投げ込みと考えられます。

 3)古墳時代前期~中期の住宅跡(SB2~5、SB10、11)は、隅丸方形で、
 各遺構からは高杯や小型丸底壺、滑石製有孔円盤、鉄製の鍬先などが出土
 している。

3.まとめ

 今回の調査では、縄文時代から古墳時代にかけての遺構を確認し、これらのうち
縄文時代の住居跡は、広島県内ではこの「御領遺跡」で1例のみの極めて稀な例
です。
 また、古墳時代前期~中期の住居跡から多数の高杯や小型丸底壺、滑石製の
有孔円盤、鍬先などの鉄製品が出土しており、集落内において祭祀が行われていた
ことが明らかとなりました。(建物跡から40数点出土している)

4.その他

 現在調査中の場所から500m東側で、井原鉄道建設に伴う事前調査において、
溝を調査したおりに大量の土器が出土している。(今から数年前)



               (遺跡全景:東から)


          (現地説明会と調査風景:北西から)


             (SB1:縄文時代の建物跡)


                  (SB1:壁面部)


             (SB3,4付近:調査、出土状況)



    (以前の調査で出土した器台)



  (以前の調査で出土した杯)


  (今回の調査で出土した小型丸底壺)


    (今回の調査で出土した鍬先)


         (今回の調査で出土した石鏃、有孔円盤)

                                    (概略は以上です)

                                       (文責:椿庵)

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