デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/7月1日(火)~7月5日(土)

2008-07-06 00:09:09 | 入賞発表
■7月1日(火)~7月5日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★透く器夫のみやげのさくらんぼ/大給圭江子
透く器というのは、ガラス器のことであろうが、こういう表現もある。つややかなさくらんぼは透ける器に入れたい。さくらんぼと透ける器の出会いが涼しげでかわいらしい。(高橋正子)

【特選/5句】
★紫陽花の花見る視野に瀬戸の海/大西 博(正子添削)
紫陽花の向こうに広がる、瀬戸の海が大きく迫ってきました。紫陽花にもまた、海の色があるように感じました。紫陽花と海とが、作者によって繋がれたと思いました。(網本紘子)

★六甲の空に湧き立つ雲の峰/小河原宏子
六甲山の上にもくもくと湧いた雲の峰が、六甲の地を雄大な夏の景色にしています。その情景を前に、本格的な夏が訪れを実感する作者の姿があります。(臼井愛代)

★あじさいを雫と共に食卓に/小口泰與
戸外で剪られたばかりの瑞々しいあじさいが、食卓に飾られたのでしょう。部屋の中に季節感が加わって、生活を彩るアクセントとなりました。(臼井愛代)

★何もかも眩しく晴れて七月来る/甲斐ひさこ
よく晴れた一日とともに、七月が始まりました。何もかもが眩しく見えるその一日は、また一歩夏を深める新たな月に寄せる、作者の明るい気持ちと重なるようです。(臼井愛代)

★早やばやと休暇申請雲の峰/桑本栄太郎
空には、夏本番を思わせる雲が湧いています。職場に、早々と休みの申請を済ませ、待ち遠しい夏季休暇に思いを馳せる作者の楽しげな気持ちが伝わってきます。(臼井愛代)

【入選Ⅰ/12句】
★少年ら帰る南瓜の花の中/多田有花
少年・・ですから、中学生の部活帰りの光景でしょうか?蒼々と葉っぱを茂らせ、黄色くて大きな南瓜の花は、元気溌剌とした姿そものもですね。どちらも元気溢れる真夏の、ワンシーンとして見事に調和しました。(桑本栄太郎)

★真つ新な句帖を開く半夏生/渋谷洋介
夏にむかい句作に意気込む姿を想像しました。(奥田 稔)

★夏草に座し少年の顔となる/尾 弦
草の上に座るといつもとは違う心持ちになる、その気持ちに共感します。勢いよく伸びる夏草ともなれば、いっそう心が開放されるようです。(池田多津子)

★夏椿落ちたる時も星めぐる/竹内小代美
★一面の光る植田やペタル踏む/國武 光雄
★空に声放ちて園児梅雨晴間/宮本和美
★青梅のあまたなる時期(とき)母を訪ね/丸山美知子(信之添削)
★純白を泰山木は頂に/古田敬二
★梅雨晴れの海の碧さは深みけり/篠木 睦
★もぎたての胡瓜塩振りまるかじり/大山 正子
★七夕竹節の太きが水に浸けられ/柳原美知子
★野菜をば持て呉れし麦藁帽子/堀佐夜子

【入選Ⅱ/12句】
★濃き香り部屋には二人月下美人/祝恵子
眠たくなる頃咲き始める月下美人を部屋に入れて二人で堪能されている様子が幸せそうに見えてきて好きな句です。(甲斐ひさこ)

★楊梅(やまもも)の大粒なるを掌(たなごころ)/小西 宏
★鳴りやまぬ水琴窟や濃(こ)紫陽花/吉川豊子
★父の日や親指太し指相撲/奥田 稔
★取りどりの短冊揺れて七夕竹/小川和子
★梅雨晴れて大地にくっきり水溜り/飯島治朗
★ともがきの集いて楽し梅雨晴れ間/河野啓一
★葉に隠る大き胡瓜を見つけたり/黒谷光子
★掬われて胡瓜にもろみ光る夕/臼井愛代
★カマキリの子の足細き強き線/網本紘子
★朝凪の傾れし花は陽に向う/志賀泰次
★梅雨明けに窓のひときわ輝けり/池田多津子

■ご案内■

2008-07-01 01:45:33 | 伝言板
水煙8月号発送!
デイリー句会投句箱
インターネット俳句センター/毎日更新

●今日の俳句/7/14(月)
とりどりの浴衣の少女踏切に/多田有花
夏祭りがあるのでしょう。踏切で列車が通り過ぎるのを待っている少女たちの浴衣姿が華やかです。とりどりの思い思いの浴衣を着て楽しそうに談笑している様子も想像します。(池田多津子)

■<今日の俳句>の過去一覧は、下記アドレスをクリックし、ご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/npo_suien03/

■伝言は、下記の<コメント>にお書きください。

入賞発表/6月22日(日)~6月30日(月)

2008-06-29 16:48:31 | 入賞発表
■6月22日(日)~6月30日(月)
□高橋正子選

【最優秀】
★合歓の花気づけば風の現わるる/上島祥子
合歓の花が咲いている。静かに咲いていると眺めていると、いつしか揺れている。風が現れたのだ。風が「生まれる」でも、「吹く」でもなく、「現れる」が妙。(高橋正子)

【特選/5句】
★祭笛遠のくほどに甦る/竹内小代美
祭の賑わいに笛の音が混じっている。祭のかたまりが遠のくと、笛の節回しや音色が、耳にはっきりと蘇ってくる。祭の余韻にあるさびしさ。(高橋正子)

★向日葵の数本は比叡山を向く/祝 恵子
向日葵は、太陽を向く花と思われるが、中には、それを外れて数本は、青々とした比叡山のほうを向くのもある。己に従うのだろう。また、向日葵の黄、比叡山の青とのコントラストが明快。(高橋正子)

★えんどうのさみどり籠に朝な摘む/丸山美知子
朝な朝な、えんどうを籠に摘むたのしみ。えんどうのさみどりも目を楽しませてくれる。丁寧な生活が偲ばれる。(高橋正子)

★若竹に節あることのすがすがし/多田有花(正子添削)
竹に節がなかったら、どうだろう。若竹の粉を吹いたような節が、けじめをつけて、きっぱりとした様子が、目にもすがすがしさを呼び起こす。(高橋正子)

★出羽なれば薊はまして色の濃く/藤田荘二
奥深い出羽山中。そこに出会う薊さえも、世俗の空気に染まらず、色濃く咲いている。その感慨は一入。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★山百合の茎のあわれに残りけり/小口泰與
美しい時を過ぎぽろぽろと花の崩れたあとの百合の茎の姿が緑の棒のように立ち残っている。また次の年にもここに美しくさいてくれることでしょう。時の移りを感じる好きな句です。(甲斐ひさこ)

★李熟る雨のなかにも紅を差し/桑本栄太郎(正子添削)
雨の降る中にも丹精した李が熟れ始め赤みをさしてきた豊かな里の光景を思います。果肉の赤い、少し酸味のある李は大好きです。(大山正子)

★樫の木の白く花咲く森を行く/河野啓一
白きでなく白くと表現したところに、臨場感を見ます。私も歩いてみたい光景です。(竹内小代美)

★シャツ白く背(せな)に膨らむ五月晴/小西 宏
梅雨晴れの気持ち良さが白いシャツの膨らみでうまく表現されています。(奥田 稔)

★沢蟹も我もまた今梅雨の中/古田敬二
梅雨の真っ只中にいる作者と小さな生き物沢蟹。梅雨のこの時季をとても軽快に詠まれていると思います。(藤田裕子)

★水清き谷にはみ出る合歓の花/宮本和美
わたしも今日、合歓の花を見かけました。川の近くにある合歓です。清らかな谷に枝を広げている枝に咲く合歓の花のピンク色がやさしいです。(池田多津子)

★大西日ふかぶかと射すぶなの森/大山正子
ぶなの森の奥まで西日が差し込み輝くぶなの森がきれいです。(丸山美知子)

★臥して見る日の高きこと夏至の窓/矢野文彦
同じものを見ても、視点の位置を変えるだけで少し違う新しい世界が見えることがあります。臥して見るからこその夏至の日の高さ、その実感が新鮮な感動とともに伝わってきます。(多田有花)

★潮の香の濃き日は合歓の花揺れる/池田多津子
潮風に揺れる合歓の花の動きがゆらゆらと目に浮かびます。色取りの美しい、好きな句です。(甲斐ひさこ)

★立葵の影をたしかに立ちにけり/大西 博
色の鮮やかな立葵を、強い日差しにできるくっきりした影でとらえられました。「影をたしかに」の断定が「立ちにけり」を生かしていると思います。とても印象鮮明な句です。(藤田荘二)

★噴水の天辺のさき空青き/川名ますみ
噴水の勢いが「天辺のさき」に、そしてそこに夏の青い空。白い噴水と空の青の対比に、水の清々しさといきもののような力強さを感じました。(藤田荘二)

★降り立てば梔子匂う湖の駅/小河原宏子
さわやかで手入れの行き届いた、地域に大事にされている駅舎を思い浮かべます。梔子に印象付けられた旅は鮮明でしょう。(藤田荘二)

★ほどく荷の越後の香り粽なり/大給圭江子
わくわくしながら荷を解く感じが伝わります。思い出がいろいろある方からの、思い出がつまった粽なのでしょう。それを「香り」「粽なり」というだけで想像させる強さがあると思いました。(藤田荘二)

★虎の尾に蝶のとまりて揺れにけり/奥田 稔
山野に白い花穂を弓なりに垂れる虎の尾草。蝶がとまり、そのしなやかな揺れようが、ことさら優しく印象付けられました。(藤田洋子)

★闇深き草に点りし蛍かな/甲斐ひさこ
闇の深さに、蛍の点滅がより明るく見えてくるようです。草に点る蛍の明りに、夏の夜の静かな美観を感じます。 (藤田洋子)

【入選Ⅱ/15句】
★子を叱る声聞く夕べ薊咲く/飯島治朗
日が長くなり隣人の声を耳にする時間も長くなったようで、それとなく子を叱る声も耳にします。微笑ましい情景で、暮れなずむ夕景に夏薊の濃紅が美しく、温かみを感じる句です。(柳原美知子)

★癒えし傷しゃぼんに包みシャワー浴ぶ/臼井愛代
退院おめでとうございます。入院中はシャワーや入浴はできなかったことと思います。ようやく手術の傷が癒え、初めて浴びるシャワーの心地よさが伝わってきます。お大事になさってください。(多田有花)

★椎大樹余さず花穂覆いけり/渋谷洋介
大景を真正面から捉え下五の切れがより効果を上げています。(篠木 睦)

★回廊を曲がるたびごと沙羅の花/黒谷光子
お寺のお庭に植えられている沙羅の花でしょうか。夏椿の花を日本では沙羅の花とみなしているようです。釈迦入滅時の沙羅双樹とは異なるそうですが、可憐な白い花が咲き、お寺の梅雨時を美しく彩ります。(多田有花)

★夏桔梗風に揺れるよたおやかに/堀佐夜子
桔梗は秋の七草ですが、六月ごろから咲き始めます。青紫色の星型の花は涼しげで夏の景色にもふさわしいですね。梅雨の合間の風にふかれてやさしく揺れている桔梗の姿をさりげなく詠まれています。(多田有花)

★母の乳吸う子の横に扇風機/高橋秀之
母乳を吸うのは、子どもにとってなかなか力のいる仕事です。吸わせる母にとってもそうでしょう。汗をいっぱいかきながら乳にむしゃぶりついている子どもの健やかな姿が見えます。子どもの体温が高く、母も汗びっしょり、扇風機が優しげです。(多田有花)

★曲線の畦に沿いたる植田かな/國武光雄
山間の棚田でしょうか。平野部では耕地整理が進んで広々とした矩形の田がおなじみですが、山間部では等高線に沿った畦を守らざるをえません。その線にそって植えられている苗、自然の示すままに今も営まれている農の様子が見えてきます。(多田有花)

★鮎を焼く川の匂いのたちこめる/小川和子
川魚の香魚といわれる鮎。川の匂いに満たされて、美味な鮎をいただく季節の喜びを感じます。(藤田洋子)

★蓮葉の風ひるがえし蕾抱く/柳原美知子
風の中にあって、青々とした蓮の葉が清々しいかぎりです。開花前の愛らしい蕾も見えてくるようです。 (藤田洋子)

★庭いじり終えし縁端新茶の香/吉川豊子
庭の手入れを終えて縁側の端に労をやすめる。どなたが入れてくれた茶であろうか、新茶の香りが喉の奥まで広がり、涼やかな初夏の空気がしみわたる。(小西 宏)

★百幹の涼しき古道母の里/篠木 睦
延々と巨木の続く古道には年をかさねた重みがあり、深閑とした涼しさがあります。母上を慕いつつ、その坂を辿られたのでありましょう。(小西  宏)

★新じゃがの土の匂いをまず洗う/網本紘子
収穫されたばかりのじゃが芋を洗う。まずはそれを育み実らせた土に感謝しつつ、清らかな肌を洗い出さなければならない。そこにはまた新たに、青臭い新じゃが芋の匂いを嗅ぐことになる予兆をも感じさせる。(小西 宏)

★組まれたる茅の輪の竹の青き口/尾 弦
組み上げられて並んでいる竹が若々しい。青き口に夏の竹の勢いが感じられました。(高橋秀之)

★仔馬跳ね夏の旅人(たびと)を喜ばす/志賀泰次
北海道の牧場での一こまなのでしょう。元気な仔馬の動作が新鮮で、旅も楽しくなります。(高橋秀之)

★裏表赤ひと色の紫蘇洗う/藤田裕子
赤ひと色の表現に紫蘇の瑞々しさが溢れています。その紫蘇の香りに包まれている作者が感じられます。(高橋秀之)

●注意事項/水煙のルール●

2008-06-28 15:45:13 | ご案内
無法の本法(真のルールはルールを作らないこと)
溪仙は、「仙の芸術」について次のように記している。
「仙和尚は型の反対に自在がある。森羅万象が日々に新に又日に新に生れ出て来る。ここが和尚の道力である。画である。書である。詩である。歌である。俳句である。活発に地に躍動してゐる。従って、これと云う塊が無いから、自も他もない。」また、自らの芸術観について、「美術家は単なる技巧家であってはならない。深い深い宇宙観とか世界観とかができてこそ芸術観となる。」といっている。仙とか、溪仙とかの芸術は、その宗教的経験から出て来た宇宙観や世界観を離れては、存在し得ないのであろう。「無法の本法」といった「自在」の境地でもある。こういった境地の作家から生まれた俳句が生き生きとして新鮮なのである。(高橋信之俳論抄 2000/4/16)

与えられた現実の容認
子規の写生は、芭蕉の考えとそれほど違っているとは思われない。<草花の一枝を枕元に置いて、それを正直に写生して居ると造化の秘密が段々分って来るやうな気がする。>(病淋六尺/子規)と、<松の事は松に習ヘ、竹の事は竹に習ヘ>(三冊子/芭蕉)とは、本質的には、同じであり、また、時宗の祖として知られている捨聖一遍上人が、次のように語っているのと同しであろう。<華の事は華にとヘ、紫雲の事は紫雲にとヘ、一遍はしらず>(一遍上人語録)
子規のリアリズムの本質を探っていけば、それは、結局日本人の古くからある思惟方法と、全く同じものであると気づく。つまり、『比較思想論』というユニークで綿密な業績をなしとげだ中村元氏が言っている「与えられた現実の容認」ということなのである。ただ、何を、「与えられた現実」と認識するか、によって、大きな差異が生じる。(高橋信之俳論抄 2000/4/9)

去るものは追わず、来るものは拒まず
あるがままに任す、ということであるが、日本の思想本来のもので、「無法の本法」といったことでもある。水煙に気楽に入会していただけるし、水煙の行き方に合わなければ、水煙をいつでも退会していただける、ということである。

伝統文化、あるいは、伝承文化
俳句は、伝統文化、パソコン操作は、伝承文化、と思っていただきたい。そのルールは、先ずは、主宰や先輩の見よう見まねから始める。マニュアル、ルールから始めるものではない。

組織評価の場
水煙は、勉強の場であるので、評価を気にする必要は無いが、水煙のサイト(インターネット俳句センター)がどのような評価を得ているか、知っておくべきであろう。知的無知であってはならないのである。
ユネスコのサイトに早くから日本では、唯一の詩(現代詩・短歌・俳句など)のサイトとして紹介された。グーグルの検索では、約500万の俳句関連サイトの中で常に10位以内にランクされている。

組織の意思決定とその伝達
水煙のサイト(インターネット俳句センター)の意思決定は、代表の高橋信之が行い、その伝達は、<トップダウン>により、<ボトムアップ>によるものではない。組織がIT(ネット、パソコンなど)に深く関わっている場合は、<トップダウン>にならざるを得ないし、組織のトップのリーダーシップが問われる。

伝言・連絡の方法手段
水煙の代表あるいは主宰への伝言・連絡は、原則として、メールを使わないこと。水煙の各種ブログの<コメント>に書くか、または電話を使ってください。パソコン・ネットは、伝承の世界で、先輩のすることを注意して見て、その真似をして学んでください。水煙以外の遣り方を持ち込まないでください。水煙は、<トップダウン>であって、<ボトムアップ>ではない。

俳句勉強の場
水煙のネット句会は、「俳句勉強の場」である。俳句大会や俳句コンテストなどの「俳句評価の場」とは違う。そこを間違ってはならない。「俳句評価の場」は、「より客観的な評価」を求め、マスコミなどの社会での評価が問題になる。一方、「俳句勉強の場」は、「より主観的な勉強」を求め、勉強の主体である本人が問題となる。水煙という俳句の座で、「評価」に目が向けば、「水煙」のマスコミなどの社会での評判が気になり、「勉強」に目が向けば、「水煙」の仲間一人一人の俳句が気になる。水煙という俳句の座は、「俳句評価の場」ではなく、「俳句勉強の場」であって、座のそれぞれが自分の俳句を育て、お互いがお互いの俳句を育てる。水煙という俳句の座では、俳句の評価を気にしなくてもよい。俳句を楽しみながら俳句を育てるのである。

投句について
デイリー句会の投句は、嘱目句、あるいは、今日の句に限ってください。水煙は、嘱目句を推奨していますので、嘱目の勉強を心掛けてください。嘱目の意味は、広辞苑では、「①目をつけてよく見ること。注目。②俳諧で、兼題・席題でなく即興的に目にふれたものを吟じること。嘱目吟。」となっています。嘱目句、あるいは、今日作った句以外の俳句は、選者宛のメールで送ってください。

本名でお書き込みください。匿名はご遠慮ください。
□「ネット上の議論、主張からは原則として匿名を排すべきです。匿名は身の上相談とか、ゲームとしての論争とかに限定する。/西垣通・東大教授/朝日新聞1月4日より」匿名は、俳号とは違って、自分の存在を知られたくない、という点を認識すべきでしょう。俳人や詩人は、社会的に自分の存在をはっきりしたものにしなければならないのです。(高橋信之 2000/1/9)

私たちの俳句/高橋信之(水煙代表)
□私たちの俳句は、「明るくて深い」ところのある現代語の俳句を求め、日常の作句生活では、「細く長く」をモットーとして、自らの生活体験から生まれる俳句を大切にします。俳句の座としての、私たちの「俳句雑誌水煙」は、1983年10月1日に高橋信之が創刊し、インターネット俳句センターは、「俳句雑誌水煙」のホームページとして、1996年11月27日に開設しました。「水煙」という「俳句の仲間」は、個々の俳句にとっての不可欠な「俳句の座」であって、感性の共同体といったものです。少人数ながらも家族的な暖かさのある仲間達です。大きくなることを望まずに、内面の充実した少数の仲間達です。私たちの歩みは、マスメディアに紹介された以下のページ http://www.suien.net/index2.htm をお読みください。

入賞発表/6月15日(日)~6月21日(土)

2008-06-22 03:43:37 | Weblog
■6月15日(日)~6月21日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★青々と杉てっぺんを指し涼し/黒谷光子
すっきりとして、涼しさが直に伝わってくる。青々とした鉾杉の指すものは、「てっぺん」。ほかのものが無く、それが良い。(高橋正子)

【特選/5句】
★新緑の向こうに寄せる波の音/高橋秀之
新緑と波の音の取り合わせが、きれいだ。明るさと静かな快い音に満たされる。(高橋正子)

★立葵透かせて遠き青峯みる/大西 博
真っすぐに立った立葵とそのひらひらとした花びら。可憐な花の間から、遠い青峯を望む夏ならではのすがすがしさ。遠近のある色彩さわやかな俳句。(高橋正子)

★紫陽花に空の明るみ始発待つ/甲斐ひさこ(正子添削)
始発ですから朝五時前後でしょう。その電車を待つ間の紫陽花の空が明るみ初めています。朝暁けの紫陽花の色の変化に作者は目を凝らしている様子がよく伝わります。(大西 博)

★浜木綿の咲けば海風雲を生み/河野啓一
「海風雲を生み」のフレーズが季語にぴったり,自然の移り変わりが楽しく映り、梅雨時の浜辺が眩しいほど伝わってきます。(前川音次)

★降り足りてあつけらかんと梅雨の月/宮本和美
水害をふくめペーソスと皮肉があつけらかんと月に表現され、感心しました。(奥田 稔)

【入選Ⅰ/16句】
★紫陽花の限りなく雨を置きにけり/竹内小代美
梅雨の雨を「限りなく雨を置き」と詩的に詠んだ。作者の主体的な思いに無理がない。「紫陽花」であれば、「限りなく雨を置き」が効いた。季語の「紫陽花」も一句の中にあって、詩的だ。(高橋信之)

★酢を振れば鮓飯透けて香を放つ/柳原美知子
生活の中に詩がある。いい感覚だ。鮓(すし)は夏の季語。(高橋信之)

★頂は雲湧くところ夏の山/篠木 睦
夏を描いて開放的だ。「頂」、「雲」、「山」、どれもが当に「夏来たれり」の大きな風景だ。(高橋信之)

★大き葉にまだ守られて青葡萄/網本紘子
まだ熟していない固くて青い葡萄。葡萄畑や葡萄棚などで、葡萄の様子を見ると今年の若葉はまだ小さい。つけた青葡萄の実は、大きな葉に守られ、育まれて来ているんだということがよく分かります。共感した一句です。(飯島治朗)

★むらさきの雨の明るさ花菖蒲/大給圭江子
うっとうしい梅雨ですが、花菖蒲に降る雨もしっとりと花の色を濃くしいいなと思います。その情感が句によく滲み出ていて好きな句です。(大西 博)

★熟れて落つ杏に土のバネ軽く/藤田荘二
杏の実が熟れて地上に落ちる様子がまるでボールが跳ねるように詠まれている素敵な句と思い選びました。(小河原宏子)

★活けてより紫陽花大輪青深む/藤田裕子
紫陽花は色の変化が楽しめる花です。大輪の紫陽花を大きな壺に活けられたのでしょう。しばらくして花を見るとさらにその青さが深みを増している、花を育て花を活け花を愛でるその喜びが感じられ、明るい気持ちになります。(多田有花)

★駄菓子屋の台に背伸びの夏帽子/尾崎 弦
いよいよ夏、子供達が特に元気いっぱいになる季節です。現代ほど飽食の時代になっても、やはり自分で選んで自分でお金を払う「買い食い」は、大人は嫌がるかも知れませんが、子供にとっては大変魅力のある社会勉強ですね。もちろん夏帽子をかぶった手には、虫取りの手網もしっかり握っています。(桑本栄太郎)

★万緑の中に水路の音澄めり/小川和子
満目ことごとく緑の中にあって、流れる水路がとても爽やかな風景です。そしてその澄んだ水音が、いかにも明るくみずみずしい季節を感じさせてくれます。(藤田洋子)

★野仏に青々揺れる額の花/小河原宏子
野仏を優しく慰めてくれるような、額の花の清らな青さと揺れようです。野仏へ向けられる、慈愛の眼差しがあればこその光景なのでしょう。(藤田洋子)

★向日葵のたくさん咲ける我が狭庭/堀佐夜子
早やも庭に開いた、たくさんの向日葵の花。梅雨どきにこそ、身近に咲いた向日葵の彩りに励まされ、心明るく、日々を過ごせそうです。(藤田洋子)

★はまなすの蕾膨らむオホーツク/大山正子
オホーツクの海を背に開花前のはまなすの群落 、雄大な自然美です。夏の到来の北海道に、心膨らむような明るさを感じます。(藤田洋子)

★山際へ広ぐ植田の青青と/飯島治朗
植えられたばかりの、みずみずしい稲苗。その植田がずっと遠く、山の際まで広がっているという。田園の風景を大きく捉えた清涼感のある句です。(小西宏)

★葉叢から陽光まぶし梅をもぐ/古田敬二
早春を代表する花である梅は、梅雨の時期に実梅の収穫期を迎えます。日差しがもっとも強いころであり、青々と茂った葉の中に手を差し伸べて丸い梅をもいでいく、収穫の楽しさ喜びがあふれています。(多田有花)

★空に鳥地に蝶が舞い夏至暮るる/矢野文彦
空に鳥が舞い、地には蝶が舞う。地球は、そういった小さな、健気な生きものを自由に舞わせて夏至という日が暮れる。(高橋正子)

★流鏑馬の馬を鎮める清水かな/村井紀久子
流鏑馬で走り抜けた馬は、その後、清水を飲んで、息を鎮める。清水の清らかさと、何事もなかったような馬の静かな姿の相関して捉えられている。(高橋正子)

【入選Ⅱ/17句】
★平らかに雨を受け止め額紫陽花/池田多津子
その地に咲いている額紫陽花の雨を受けとめている風景が「ありのまま」ということを感じさせてくれますね。好きな句です。(丸山美知子)

★海鳥の吹かれ流れて夏の暮れ/志賀泰次
海鳥が風に吹かれ流れにまかせて遊んでいる夏の夕暮れの様子が目に見えてきます。(小河原宏子)

★青鷺のしんと立ちたる用水路/多田有花
水のほとりに片脚で音もなく立っている青鷺。ちょっと田舎に行くとよく見かける風情ですが、「しんと立ちたる」というさりげなく、それでいてぴったりの表現に共感しました。たいへん勉強になりました。(河野啓一)

★ふくらみし夏日まぶしくビルに落ち/奥田 稔
梅雨の最中にこそ感じられた夏日のまぶしさなのでしょう。辺りの空もおのずと色付いて、明るく美しい街の夏の落日です。 (藤田洋子)

★鳥海の滴り落つる飛沫かな/丸山美知子
鳥海山は秋田県と山形県の県境にある標高2,236メートルの活火山です。出羽富士とも呼ばれ、東北地方を代表する名山です。今の時期であれば多くの高山植物が咲き始めているでしょう。その山からの流れの清冽さを思います。(多田有花)

★昼顔の垣根に纏う狭庭かな/渋谷洋介
ご自宅で昼顔を栽培していらっしゃるのでしょう。淡いピンクのろうと形の花が昼間の庭を彩ります。それを眺めることも梅雨の時期の楽しみのひとつでしょう。(多田有花)

★ベランダに朝顔の苗つる太く/小西 宏
朝顔は初夏に種を撒きます。ベランダで、あるいは日よけも兼ねて朝顔を育てていらっしゃるのでしょうか。真夏の朝に開く花を思いながら、育っていく朝顔にむけておられる優しいまなざしが感じられます。(多田有花)

★むつごろう跳ねる干潟や梅雨晴間/國武光雄
日本では有明海と八代海に棲むムツゴロウ。胸びれではったりジャンプしたりして移動します。なんとなく、ユーモラスですね。食材としてもやわらかくおいしいとか。一度食べてみたいものです。(多田有花)

★玉葱の白く網透き軒の下/桑本栄太郎
収穫した玉葱を風干する風景がまだ見られるのでしょうか。つるされた網を透して、真っ白な玉葱が軒下に並んでいるのでしょう。(小西宏)

★友と会う湖畔の宿や黴におう/前川音次
古くからのお友達と宿を共にし、旧交を温められたのでしょう。「湖畔の宿」や「黴におう」といった措辞に、しずやかな懐旧の念が広がり伝わってきます。
(小西宏)

★往来に負けじと飛び交う親ツバメ/上島祥子
人も車も激しく行き交う街中、その空を縦横に、「負けじと」交錯する親ツバメの姿に、夏の大きなエネルギーの兆しを感じます。(小西宏)

★浴衣裁つ母の鋏の音軽し/上島祥子
喜びがある。「浴衣裁つ」季節は、子への喜びであり、孫への喜びである。(高橋信之)

★ふくらみし夏日まぶしくビルに落ち/奥田 稔
夏の日がビルに落ちる都会の風景。それが無機質にならず、「ふくらみし夏日」と捉えられて、せつなさも感じられる抒情が加わった。(高橋正子)

★ランドセルしょう車椅子枇杷は黄に/川名ますみ
車椅子に乗った子がランドセルをしょっていることに、心を動かされる。見れば枇杷は黄色に色づき、季節はやさしく子を見守るようだ。(高橋正子)

★朝顔苗子との約束鉢へ取る/祝 恵子
朝顔の苗が育ったら、分けてちょうだいという子のとの約束。植え替えにちょうどいいころになったので、鉢に分け取った。ささやかな行為の楽しさ。たくさんの朝顔が咲いて夏の朝を彩ってくれることだろう。(高橋正子)

★郭公や浅間に向かい深呼吸/小口泰與
郭公の声を聞き、夏がきたことを確かに知る。緑の深まる浅間に向って、深く息を吸う。しんとした夏の朝の空気が流れる気分はいいものだ。(高橋正子)

★どの家も窓開け放つ梅雨晴れ間/吉川豊子
束の間かもしれない梅雨の晴れ間。それを待っていたように、どの家も窓を開け放って、風を通す。きらきらと耀く太陽、通り抜ける風。梅雨の晴れ間の開放的な気分が気持ちよく伝わる。(高橋正子)