【時事(爺)放論】岳道茶房

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こども園 10年も待てというのか

2010年11月07日 | 社説
こども園 10年も待てというのか

 幼稚園と保育園を一つにしたらどうかという議論は古くからあったが、「教育」と「福祉」の間には大きな壁がそびえてきた。

 専業主婦の子に幼児教育を行うのが幼稚園、共働きや疾病などの理由がある親の子の保育を引き受けるのが保育園だ。預かる時間は幼稚園が4時間、保育園は8時間以上で給食もある。職員の資格や施設基準なども異なる。しかし、女性の就労や社会参加が進むにつれて都市部で保育園の待機児童の増加が顕著になってきた。一方、子どもの数が減るにつれて地方では幼稚園の定員割れが目立つようになった。このアンバランスをどうするかという議論の中で幼稚園と保育園を一緒にした「こども園」の構想が生まれた。

 これまで一元化を阻んできたのは、幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省という縦割り行政や族議員の存在と言われた。幼稚園児の入園金や利用料は事業者が決めることができるのに対し、保育園は親の所得に応じて自治体が決めていること、職員の勤務時間など待遇が異なることも大きい。利用者よりも事業者や職員の都合が優先されてきたと言えるのではないか。

 こども園は親の働き方に関係なく利用でき、利用料も統一する。行政の縦割りの弊害を排するため、子ども施策に関する財源はまとめて市町村が配分を考えられるようにする。年内に最終案をまとめ来年の通常国会に関連法案を出す方針だ。現場の抵抗感が強いことに配慮して、完全に移行するまで10年の猶予期間を設けるという。しかし、今年生まれた子は10年たったら小学校高学年だ。そんなに待てないというのが利用者側の実感だろう。

 できるだけ早く待機児童を解消するためには一定の基準を満たした株式会社や非営利組織(NPO)の参入を積極的に促すべきだ。保育の質の低下を懸念する声もあるが、高齢者福祉の分野でも企業やNPOの参入が利用者にサービス選択の幅を広げた実績がある。利用者が選べるようになれば質の高い保育サービスが伸びることにもつながる。

 多様なニーズにも応えてほしい。夜間や早朝の保育を望む親もいる。家族機能が薄れている現在、子どもの側にもさまざまなニーズがある。個々の特性に配慮した質の高い保育を実現すべきだ。また、待機児童が増え続けている地域もあれば待機児童ゼロの自治体もある。住居よりも通勤場所の近くで保育サービスを利用する方が便利な人もいる。

 地域によって保育格差が生まれないよう配慮しなければならないが、自治体への権限移譲や自治体間の連携を進めるべきである。

2010年11月7日 毎日新聞 社説


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