【時事(爺)放論】岳道茶房

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住民自治 成功も失敗も大切に

2010年06月04日 | 社説
住民自治 成功も失敗も大切に

 「地域のことは住民で」と名古屋市が八モデル学区で始めた地域委員会が、地域予算の使い道を決めた。初めてだから、成功もあれば失敗もあるかもしれない。その両方が次への貴重な踏み台だ。

 「親子が気軽に立ち寄れる子育てサロンを開く」「防災用品を」「公園に運動健康遊具を」-。各地域委員会が、一千万円前後の範囲で決めた使い道の一例だ。

 地域委員会は小学校の学区ごとに選挙で決まった十人ほどの委員が、三月から週一回程度、夜間や休日に集まり、話し合ってきた。六月市議会に提案される。

 役所でなく、住民らが税の使途を考えた初の予算である。その形成過程は“発見”の連続だった。

 「公民館のトイレ改修を」という案が出た学区がある。でも公民館は地域住民の財産で、税金が使えないと分かり断念した。防犯パトロールに使う乗用車を買おうとした学区は、私的財産になる恐れがあると市担当者に指摘され、車を借りることにした。

 市民感覚のにじむ議論も少なくなかった。

 ある学区で災害時の救助工具を保管する器具庫を設置することにし、その大きさと予算額を決めた。「同じ予算で、もっと大きな器具庫ができればその方が得」とのアイデアが飛び出した。でも、市担当者は「書類と大きさの違う器具庫は…」と口を挟んだ。

 少しでも税金を有効に。こんな当然の感覚は、市職員の意識改革につながらないだろうか。

 町内会の役員だけで決まっていたことが、誰でも傍聴できる地域委員会という公開の場ができ、変化を誘った例もある。「祭りなら協力できる」「地域の見回りなら」という声も上がった。「関心のある人が結構いて正直、驚いた」と話す町内会役員もいた。

 地域委員会は、市民税減税や議会改革と並び、河村たかし市長が掲げる「庶民革命」の柱だ。二百六十余の全学区のうち、来年度から希望する学区へ拡大を目指すという。それには八学区での課題の検証をせねばならない。

 例えば、計七十二人の地域委員のうち、六十歳以上が七割近くにもなる。十代、二十代の委員も選ばれているが、サラリーマンや主婦などもっと幅広く参加できるよう、選挙や委員会の開催方法など工夫できないか。十分な情報開示で、住民の参加意識も高めたい。

 試行錯誤を重ねていくこと。それが住民自治の力になるはずだ。

2010年6月4日 中日新聞 社説


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