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尖閣ビデオ 国の信頼かかる全面公開

2010年11月04日 | 社説
尖閣ビデオ 国の信頼かかる全面公開

 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の様子を海上保安庁が撮影したビデオ映像の公開が、国会内での極めて限定的なものにとどまった。衆参両院の予算委員会理事らを対象に、約2時間とされる映像全編のうちわずか計6分50秒しかない。

 秘密会形式での限定公開は中国政府に遠慮したためだろう。だが、中国外務省は限定公開の映像についてすら「日本側の行為の違法性を覆い隠すことはできない」と非難した。

 ビデオの映像は日本の行動が正当であることを示すだけでなく、国際社会における信頼と名誉もかかっている。しかも政府は、事件を「中国漁船による悪質な公務執行妨害」と主張してきた。全面的かつ一般にも公開することが、日本の国益につながる。

 ビデオを視聴した複数の国会議員は「もっと早く公開していれば国際世論も日本に好意的になったろう」などと述べている。今からでも遅くはない。日本の主張の正当性を裏付けるために、菅直人首相は決断すべきだ。

 映像は国会の議決を受け、法務・検察当局が「公益性」を考慮して提出した。那覇地検は衆院議長に、視聴者の範囲を含めて「慎重な扱い」を要望した。

 このため、船長逮捕の瞬間など公務執行上「秘匿性の高い部分」は公開されていない。だが正式な手続きを経て提出された以上、取り扱いについては国会が主体的に判断すべきだろう。

 今月中旬、横浜市でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催される。菅首相が議長を務め、21カ国・地域の首脳が集う。尖閣諸島沖事件に関する日本の主張を国際世論に問う積極的な外交が求められる。

 限定公開の直前に実施された産経新聞社とFNNの合同世論調査によると、78・4%が「全面公開」を求めていた。しかし現在のところ、報道機関も国会議員の証言という伝聞でしか衝突事件の実像に迫れない。民主主義国家として異常な状況である。

 全編を一般公開した場合、中国がAPECへの首脳の出席を拒否することを菅政権は恐れているふしがある。しかし、ビデオ映像の公開をこれきりにしてしまえば、日本は自由な民主主義国家の評判を失墜させる。「弱腰外交」との国際的烙印(らくいん)も決定的になってしまうだろう。

2010.11.4 産経新聞 主張


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