【時事(爺)放論】岳道茶房

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米中間選挙 「茶会」が問うた国家像

2010年11月04日 | 社説
米中間選挙 「茶会」が問うた国家像

 「機能する政府」を掲げたオバマ大統領前半の政権運営に、中間選挙で厳しい審判が下った。「茶会」が突きつけた課題は重いが、芽生えかけた協調の時代を再び分断の時代に戻してはなるまい。

 上下両院の逆転すら予想されたなかで、民主党は下院で惨敗を喫しながら、上院では辛うじて過半数を維持した。あるべき新たな国家像を探しあぐねる米有権者の揺れを見るようだ。 

 米独立戦争のきっかけにもなったボストン茶会事件にちなむ草の根運動「ティーパーティー」。その波に乗って当選した共和党候補たちの言葉は、そのまま選挙の勝因を物語っている。

 「アメリカは特別な国だ。それは自由を奉じるからこそだ。政府が雇用を創造するのではない。起業家が、個々人が雇用を創(つく)るのだ」(ポール・ケンタッキー州次期上院議員)

 「米国は史上類を見ない偉大な国家だ。勤勉でルールさえ守ればいかなる夢も実現できる。その米国が、誤った方向に向かっている」(キューバ系のルビオ・フロリダ州次期上院議員)

 自助精神を重んじ、伝統的に小さな政府を良しとする米国。政府の役割が増大するなかで、薄れゆく建国理念を憂う草の根の叫びが聞こえる。しかし、愛国主義に訴える茶会旋風もムード先行だったことは否めず、具体的な政策展開の点では限界も見せた。 

 オバマ大統領が就任演説で掲げた「機能する政府」の種は蒔(ま)かれた、と言っていい。百年に一度といわれた金融危機は、七千八百億ドル規模の景気対策で辛うじて乗り切った。強欲資本主義の是正に向けた金融規律回復へ布石は打った。医療保険改革も実現にこぎつけた。外交面でも、イラク撤退へ道筋をつけ、アフガニスタン戦争に集中する態勢は整えた。

 しかし、加速する一方のグローバル社会にあって、国民がその果実を実感できるまでには至っていない。10%近くで高止まりする失業率がその象徴だ。

 共和党は、「保守革命」につながった一九九四年中間選挙の再来を期すかのように医療保険改革法の撤回、財政均衡化など徹底抗戦をしかける意向だ。しかし、米国を取り巻く国内外の状況は一変している。

 国際協調路線を掲げてきたオバマ政権の方向性は時代の要請にかなう。米国が舵(かじ)を切り、単独主義的な政策へ回帰すれば、アメリカ再生の道は遠のくばかりだ。

2010年11月4日 中日新聞 社説


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