【時事(爺)放論】岳道茶房

話題いろいろだがね~
気楽に立寄ってちょ~

4邦人死刑 それでも疑問は尽きぬ

2010年04月10日 | 社説
4邦人死刑 それでも疑問は尽きぬ

 中国で麻薬密輸罪の死刑が確定した日本人三人への刑が九日、執行された。四日間で四人の日本人が死刑になった。審理は十分に尽くされたのか。情状は考慮されたのか。疑問は尽きない。

 九日に死刑が執行された岐阜県出身の鵜飼博徳(48)、福島県出身の森勝男(67)両死刑囚は、名古屋市出身の武田輝夫死刑囚(67)から密輸を指示されたとされる。しかし三人とも量刑は同じだった。

 六日に執行された大阪府出身の赤野光信死刑囚(65)は公判で証言が正しく通訳されていないと抗議したという。

 こうした疑問に裁判所が、どう答えたか判断するに十分な資料が公表されていない。

 麻薬密輸は憎むべき犯罪だ。大量の覚せい剤が密輸されていたら多くの犠牲者が出た。密輸を未然に防いだ捜査は称賛に値し、アヘン戦争以来、麻薬の惨禍をなめてきた中国が厳罰で臨む姿勢も理解する。しかし、公平な裁判を受ける権利はおろそかにできない。

 四人にたいする死刑執行と同時期に、最高裁は三十八年前に刑が確定した「名張毒ぶどう酒事件」の奥西勝死刑囚(84)に対し再審開始の可能性を開く決定をした。

 死刑は更生の見込みがない被告の再犯を防ぐと同時に凶悪犯罪への「一罰百戒」の効果を期待し適用される。ただ、裁判に間違いがある可能性も排除できない。

 犯罪に対する量刑は、その国の専決事項ではある。しかし、四人への死刑適用に慎重な審理がなされたかどうか、政府は中国側に十分な情報の開示を求めたのか。

 中国では中央から地方まで司法機関は各レベルの党政法委員会の指導を受け、三権分立を「絶対に受け入れない」(呉邦国全人代常務委員長)と否定している。

 刑法で量刑に死刑がない犯罪も全人代常務委員会の決議で死刑を適用できる。死刑など厳罰が社会の安定と共産党の支配を維持する手段として多用される傾向が強く「死刑大国」と呼ばれている。

 今回の死刑執行は外国人に重罰が適用される先例になる。二月に文芸評論家の劉暁波氏はインターネットで一党独裁を批判したことが国家政権転覆扇動罪に問われ懲役十一年が確定した。

 これまで政府批判や国家機密漏示に関与を疑われた日本人は国外追放にされてきたが中国人と同じ重罰にあうリスクが高まった。

 その場合も、政府は今回のように「いかんともしがたい」(鳩山由紀夫首相)というのだろうか。

2010年4月10日 中日新聞 社説


最新の画像もっと見る