【時事(爺)放論】岳道茶房

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駐露大使一時帰国 危機感欠いた甘い報告だ

2010年11月07日 | 社説
駐露大使一時帰国 危機感欠いた甘い報告だ

 一時帰国した河野雅治駐ロシア大使がメドベージェフ露大統領の国後島訪問について報告した。これに対し、菅直人首相は「情報収集をしっかりしてほしい」と注文をつけた。お粗末な内容と言わざるを得ない。

 河野大使は、訪問について「大統領が国内向けに指導力を誇示する狙いがあった」と説明した。だが、それはまさにロシアの言い分だ。それで納得しては相手の思うつぼである。ロシアの「国内問題」にさせない外交姿勢こそが重要だが、「国内問題だから仕方がない」とまるで言い訳をしているようにも聞こえる。

 日本外交の「目と耳」である現地大使館は、ロシアが菅政権の弱体化につけ込み、強硬姿勢を強めているからこそ、情報収集を怠らず、必要なら菅首相を説得してでも対抗措置をとるべきだった。

 日本固有の領土に対し、ロシアの最高指導者がいとも簡単に、その歴史で初めて足を踏み入れるのに際して手をこまねいていた河野大使の責任は重い。

 さらに、大統領の歯舞群島と色丹島への訪問計画について、仙谷由人官房長官は「いちいちコメントを加えるほどのことはない」と述べ、重大な問題を極めて過小に評価した。認識の甘さと危機感の欠如は政権を覆っている。

 メドベージェフ氏が9月29日、いったん訪問を中止した北方領土に「近いうちに必ず行く」と言明した際も危機感は薄かった。ある外務省幹部は「常識的に考えれば(訪問は)ないだろうと判断していた。結果として間違えていた」と告白した。

 戦後65年の今夏、日本が降伏文書に調印した9月2日を事実上の対日戦勝記念日にロシアが制定した際も、日本の外交当局はロシアで進行する歴史歪曲(わいきょく)の動きに強く抗議することすらしなかった。情報収集力と分析力を向上させ、領土返還に向けた戦略の再構築をしなければ、日本の対露外交は今後も敗北を重ねることになろう。

 13日、横浜市でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が始まる。傍若無人に北方領土に足を踏み入れるロシアの首脳とは会談してほしくないというのが多くの国民の感情だろう。首脳会談をするなら、国際信義に反するロシアの背信行為を厳しくただすべきだ。それもできないのなら、首脳会談はしない方がいい。

2010.11.7  産経新聞 主張


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